インターネットの父、ローレンス・ロバーツ博士、IPネットワークの未来を語る—C&C賞受賞記念講演
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同賞は財団法人C&C振興財団が、半導体デバイス技術、情報処理技術、電気通信技術、およびこれらの融合する技術分野(Computers and Communications)の開拓または研究に関する功労者を顕彰するもの。過去の受賞者リストには、ケン・トンプソン博士、デニス・リッチー博士、アラン・ケイ博士、エズガー・ダイクストラ博士、ゴードン・ムーア博士など、誰もが一度は名前を耳にしたことがある著名人がずらりと並んでいる。
2005年度の受賞者はグループAとして、i-modeを創出した業績を称え、榎啓一氏、夏野剛氏、松永真理氏の3人が、グループBとして、パケット交換原理の提唱やTCP/IPの発明およびARPANETの構築など初期インターネットを構築等の業績を称え、ロバート・カーン博士、ローレンス・ロバーツ博士、レナード・クラインロック教授の3人が選ばれた。
同日、3番目の講演者としてローレンス・ロバーツ博士が壇上に上がった。ロバーツ博士は1972年、カーン博士と共にTCP/IPを使って40の異なるコンピュータをつなぎ、ARPANETを構築。現在のインターネットの基礎を築いた、いわばインターネットの父と言ってもよい存在だ。
博士の講演では「The Future of IP - Flow Aware Routing」と題し、フローステートルーティングによるIPネットワークが紹介された。
フローステートルーティングとは、2つのシステム間の一連のパケットの流れを、フローという単位で認識し、フロー単位でルーティングを行う技術だ。従来のL3 IPルータに比べ、より大量のパケットをまとめてルーティングすることができ、ルーティングコストを削減することができるという。
ルーティングを行うフローステートルータには、IPアドレスやポート番号、プロトコルの種類といった情報以外に、フローの総バイト数やパケット数、接続時間、通信速度などといった情報も保持される。そのため、大量のメモリが必要になり、これまではルータ自体のコストが高価なものになるとして採用が進まなかった。
しかし現在では、メモリ価格が低下したため、むしろフローステートルータのほうが、一般的なL3 IPパケットルーターに比べて大きなコスト削減につながるという。
また、フローとしてルーティングを行うことで、ビデオや音声のように一塊のデータを扱うトリプルプレイのようなサービスに対して高いQoSを提供できるほか、ロードバランシングの取りやすさや、エンドツーエンドでの高いQoSの提供、DDOS攻撃からの保護など、数々のメリットを紹介した。
博士によれば、フローステートルーティング技術は35年前には非現実的であったという。しかし、現在ではそれを実現するのに十分な状況にある。博士の提唱するIPネットワークの未来は、もうすぐそこまで来ているのだ。
《竹内充彦》
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