【東京国際映画祭】「犬神家の一族」市川監督と石坂浩二、松島菜々子らが挨拶
エンタメ
その他
注目記事

お馴染み名探偵・金田一耕助を演じた石坂浩二は、オープニングでも六本木のレッドカーペットを歩いている。「30年間世話になった金田一になんとか晴れやかなところを歩かせてやりたいと考えまして、金田一の格好のまま歩きました。今日は石坂浩二として歩きまして、感無量でした」とレッドカーペットの感想を述べ、「30年前の作品をまたやるというのは、よくもまあ図々しいと思う方もいらっしゃるかもしれません。ご覧になって、少しは進歩しておるなと思っていただければありがたいと思います」と挨拶した。
ヒロインの野々宮珠世を演じた松島菜々子は、レッドカーペットを歩くのは初めての経験で恥ずかしさはあったものの、でき上がった作品の素晴らしさに励まされ、堂々と歩こうと思ったという。「珠世役をいただいたときは、オリジナル版を意識しないように私なりに演じようと思いました。それが崑監督の市川マジックによって本当にいいところだけを拾われ、素晴らしい珠世にしていただきました」と感謝の言葉を口にした。
犬神佐清(スケキヨ)役の尾上菊之助は「舞台で育ちましたので、カメラの前、お客様のいらっしゃらない前でお芝居をするのに最初は戸惑いましたが、90歳を越えて尚ポテンシャルをもった市川監督のもと、こんなに豪華な皆様とお芝居ができたことを感謝しております」と語った。
尾上の実母で映画の中でも親子を演じた、犬神家の長女・竹子役の富司純子は「六本木では『待合室 Notebook of Life』のスタッフの皆さんと歩き、今日また渋谷で素晴らしい共演者の皆さんと歩かせていただきました」とレッドカーペットを歩いた感想を述べた。
「日本が世界に誇る監督であり、私の長年の憧れだった市川監督の作品に出演できて、しかも映画祭に参加できることを嬉しく思います」とは犬神家次女・竹子を演じた松坂慶子の弁。撮影中に迷っていると、市川監督から「余裕をもって楽しんで。それが極意です」とアドバイスされたという。
犬神家三女の梅子を演じた萬田久子は、偉大な監督と豪華な共演者を得て誇らしいと言い、「私にとっても初めてのレッドカーペットでした。これが最初で最後にならないように女優として頑張って行きたいと思います」と挨拶した。
深田恭子が演じたのは、金田一が宿泊する那須ホテルの女中・はる。「『犬神家の一族』に参加できたこと、レッドカーペットを歩けたことを本当に嬉しく思います。今日を励みにこれからも頑張って行きたいです」と笑顔を見せた。
ここで、満場の拍手に迎えられ市川崑監督が登壇し、「本日はどうもありがとうございました。この作品は横溝さんの傑作です。それを今どう描くかをやったわけです。幸い素晴らしいキャスティングを得て、できるだけ頑張りました。どうぞご覧になって厳しい批評をくださいますようお願いいたします」と挨拶した。
久々に演じた金田一耕助役について石坂は、テレビでも何度も放映された30年前の「犬神家の一族」について、「反省しろ、反省しろ」と再放送を繰り返しているのかと思ったと場内を笑わせ、「30年ぶりに同じ役をやるのはそうめったにあることではないので、それができたのもスタッフの皆さん、共演者の皆さんのおかげだと心から感謝しております」と語った。
市川監督作品初出演の松島は、「まっさらな気持ちで挑みたいと思っていたのですが、挑まなくてもまっさらにされてしまうような現場の緊張感がありました。テストをテストにさせないんです。モニターの前でじっと見ている監督に自分が挑んで行くということに自分で驚きました。とても新鮮でしたし、いい緊張感だったなと思うことができました」と市川組の印象を述べた。
6月に外での撮影が多かったという尾上は、ゴムの仮面をつけての演技について「非常に蒸れてしまいました(笑)。エステに行かなくても顔痩せ効果があり、通販で売り出したら売れるんじゃないかなと思いました」と笑わせた。
その尾上との親子共演について「息子は歌舞伎の道ですし、私は映画なので、親子で共演なんて夢にも思っていませんでした。それを市川崑監督の作品でかなえられて。最初で最後だと思いますが、ほんとうに感謝しています」と富司純子が語った。
その富司とともに華やかな三姉妹を演じた松坂と萬田は、「役の上ではとっても欲の深い三姉妹なんですけど、実際はみんなさっぱりしていて人の良い私たちです。富司さんに引っ張っていただいて、本当に和やかで楽しい現場でした」と松坂が言えば、「遺産相続の争いで大変だったんですけど(笑)、お姉さんがいるとこんなに人生は楽なのかなと思いました。姉妹っていいですよね、遺産相続争いがなければ(笑)」と萬田が笑わせた。それを受けて、「私が出てくるところは唯一ドロドロしたところがないので、唯一安心できるシーンかもしれないですね」と、はる役の深田恭子。「皆さんのドロドロさにびっくりしました」とも。
4か月を費やしワールドプレミアの日を迎えた市川監督は、「まだ仕事をしているような気持ちでここにおります。あそこをああしたいこうしたいというところがいっぱいありまして。一応ちゃんと完成しておりますが(場内笑)、ああしたいこうしたいの未練もあります。これからが反省の時期になると思いますが、愛着をもってこの写真(=映画)を皆さんとつくりました。ご覧になって、いい意味でのご批判をお願いいたします」
最後は「ここにいない人たちとも力を合わせてつくりました。皆さんに楽しんでいただきたいと思います」と石坂が締めくくった。
美意識に富んだ市川監督の最新作を真っ先に堪能できたこの日の観客は、幸せを噛みしめているに違いない。
(photo by 稲葉九)
《齊田安起子》
特集
この記事の写真
/