1年半で企業へのVista導入率を50%に -マイクロソフトが互換性問題を解決するツール
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全体概要の説明を行なったマイクロソフトのWindows本部ビジネスWindows製品部シニアマネージャ 中川哲氏は、MDOP提供の理由と目標について、「Windows XPがリリースされて6年が経過したが、企業におけるWindows XP導入率が50%を越えるのに3年強の時間を要した。Windows XPはWindows 2000に比べてアーキテクチャ上そう大きな変更があったわけではないが、それでも導入にこれほど時間が掛かった理由として多くの企業が挙げているのが、『新しいOSを全社に配布する際の“展開コスト”、新OSに対応させるための“アプリケーション改修コスト”、移行期間に必然的に生じる新旧混在環境での“サポートコスト”』の高さだった。Windows Vistaでは、こうした障壁を低くするための施策をいろいろ工夫しており、MDOPの提供もその一環だ。施策の結果、Windows Vistaの企業導入率50%超を1年半で達成したいと考えている」としている。
パッケージに含まれるツールは、「Microsoft SoftGrid」「Microsoft Accet Inventory Services」「Microsoft Advanced Group Policy Management」「Microsoft Diagnostic and Recovery Toolset」の4種。なお、MDOPの提供は1月1日からだが、その段階で提供されるのはSoftGrid英語版のみ。残る3つのツールの提供開始は、2007年5月を予定している。MDOPの提供対象となるのは、ボリュームライセンス契約として“Open Value”“Select”“Enterprise Agreement(EA)”“EA Subscription”“Campus and School”のいずれかを契約し、さらに“Software Assurance(SA)”契約を締結した企業や法人など。提供価格は1ライセンスあたり年間1,200円程度(参考価格)を予定しており、有効なSA契約数を上限として契約できる。
SoftGridは、2006年7月に米国で発表されたSoftricityの買収によって獲得された製品で、内容的にはSoftricityの製品であった「SoftGrid for Desktops」と同一のもの。アプリケーションを仮想化するツールで、クライアントPCの環境を変更せず、サーバから配信された複数のアプリケーションの実行が可能になる。たとえばMicrosoft Officeの最新バージョンと旧バージョンを同時に実行したいような場合、新旧のバージョンが同一のレジストリ・キーを使用していたり、DLLファイルなど、同名だがバージョンが異なるシステム・ファイルがあったりするため、通常は1台のPC上に複数のバージョンを混在させることは困難だ。SoftGridでは、アプリケーション本体とその実行環境をまとめて“パッケージ”を構成し、クライアントに対してこのパッケージの実行イメージを配信する、という形を取り、クライアントPC上にアプリケーションをインストールすることなしに実行/利用することを可能にする。Windows Vistaへのバージョンアップを控え、OS/アプリケーション両方で互換性検証や移行のためのアプリケーション改修などの負担が増えることが想定されるが、移行期にSoftGridを使って旧バージョンをそのまま実行することで、環境移行の負担を減らすことが可能になる。
Asset Inventory Servicesは、2006年4月に米国で発表されたAssetMetrixの買収によって獲得されたもの。企業内のクライアントPC上で稼働するソフトウェアの状態を把握し、インベントリ管理を行なう。
Diagnostic and Recovery Toolsetは、2006年7月に米国で発表された、Winternals買収によって獲得されたもの。クライアントPC上で発生したトラブルの原因究明、紛失データの復旧、事後の故障解析などを行なう。
Advanced Group Policy Managementは、2006年10月に米国で発表された、desktopstandard買収によって獲得されたもの。グループポリシー設定を強化し、特定作業の管理権の委譲/割当が可能となる。
いずれも2006年の企業買収によって獲得されたツール群であり、マイクロソフト自身の対応が遅れていた部分を埋める技術を獲得したものだ。典型的な「時間を買う買収」の成果だといえるだろう。さらに、これらのツールをSA契約社を対象に提供することで、SAの魅力を高め、契約増加に繋げていきたいという強い意向の表われだと思われる。
《渡邉利和》
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