ラレコ先生独占インタビュー(前編)「やわらか戦車」誕生秘話
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それを記念して、今回編集部では作者のラレコ先生にインタビューを行った。「やわらか戦車」が生まれた経緯や、登場キャラクターたちの秘密、DVDの見どころなどを伺った。前編では、まず社会現象的ともいえる人気についてラレコ先生自身の感想や、「やわらか戦車」の生まれた経緯などを紹介する。
◆社会現象的な人気を実感していない?
——まずは、この社会現象ともいえる人気について、先生ご自身はどう感じているのかを教えていただけますか?
ラレコ先生(以下、ラレコ):作っている自分が一番実感がないのかも知れません(笑)。自分では有名になったとか、人気があるといった感覚はまったくないですね。あまりにも自覚がなさすぎるものですから、ファンワークスの社長さんにはよく「イベントに来い!」といわれます(笑)。「このファンの息吹を感じろ」といわれるのですが、今まで見に行ったことがないものですから、実は実感していないというのが本音です。
——でも、コンビニにはグッズが置いてありますし、着メロのダウンロード数もアイドル曲を抜いて1位になった月もあります。参画企業もものすごい数になっていますし。間接的に感じたりするのではないでしょうか?
ラレコ:それがですね、田舎に住んでいますから、あまりそういうのを実感できる場所がないんですね。
——ちなみに、どちらなのでしょうか?
ラレコ:○○です。
——そんなに田舎ではないですよね?
ラレコ:いえ、それが、キジがいたりしますし、周りは森だらけですし(笑)、それに、野犬とかいますから。実際には、野犬ではないのかも知れませんけど。というのも、住んでいる人たちがみんな大らかなものですから、飼い犬を「散歩してこい」などと、平気で放してあげたりします(笑)。
——なるほどー。でも、現在はネット環境が発達しているから、都心部にいなくてもクリエイターとして問題なく活動していけるというわけですね?
ラレコ:そうですね。それほど不自由に感じることなく作業しています。ちなみに危ないといえば、あと薬莢が落ちていますよ。禁漁区のはずなのですが(笑)。
——その話、冗談じゃなかったのですね(汗)? まるで日本ではないみたいです。
ラレコ:さすがに戦車は縦横無尽に走っていませんが(笑)。
◆子供を意識して生まれたわけではない「やわらか戦車」
——お住まいの土地のとても緊張感のある(?)点が、「やわらか戦車」誕生に一役買ったということはありませんか(笑)?
ラレコ:確かにきな臭いですからね(笑)。でも、さすがにそれはないです。
——やはり、映画「プライベート・ライアン」ですか?
ラレコ:それはありますね。あの映画で「人間の体は柔らかい」ということが、よくわかりましたので。それで、ことあるごとに「人間の体は柔らかい」というフレーズを使っていました。それだけ印象的だったということなのでしょうね。それがある日、戦車と結び付きまして、真逆の「やわらか戦車」に至ったというわけです。
——でも、本当に「やわらか戦車」というコンセプトは見事ですよね。子供にも大人にも関係なく好かれていますから。
ラレコ:自分ではよくわからないのですが、ジャンル越境的なイメージがあるみたいですね。アキバ系の人に好きといってもらえるかと思えば、アーティスト系の人にもいってもらえたり。
——それだけ作りがしっかりしているという証ではないでしょうか? ちなみに、最初から子供の視聴者も意識していたわけですよね?
ラレコ:いえ、実際のところ、最初はあまりお子さんたちのことは意識していませんでした。
——それは意外な感じがします。やわらか戦車のぷにゃっという柔らかさだけでも、子供たちが喜んでいますし。子供向けをすごく意識されているものと思っていました。ジミおじさんなども、大人はもちろん「伝説のミュージシャンがモデルなのね」とクスリと来るわけですが、一方で子供たちもシンプルに「変なオジさん」ということで喜んでいますし。
ラレコ:どんな題材でも二重性があって、それで大人も子供も楽しめるということではないかと思っています。子供はドリフターズ系のコントにあるように、大人向けの下ネタでも平気で笑いますよね。「わかっているのかな?」というようなネタでも大笑いする。そして「やわらか戦車」の反応を見ていても、同じような感じであることがわかってきました。特に子供向けということを意識しなくても、自分が面白いと思うことを描けば、年代に関係なく楽しんでもらえれるということですね。ツボさえしっかり押さえておけば、枝葉末節の部分がマニアックであっても大丈夫ということのようです。とにかく、お子さんたちも喜んでくれるのは嬉しいですよね。
◆キャラクター誕生の秘密!?
——ちなみに、ジミおじさんのモデルは伝説のギタリストのジミー・ヘンドリックスなわけですが、彼を登場させた理由は、音楽的に好きだからということでしょうか?
ラレコ:音楽的にも好きなのですが、伝説的な人たちはいろいろな逸話があったりして、人として興味深いというものがあります。
——確かに、アフロだったり、キバツなファッションだったりして、キャラとして立っています。他界している人に、そんないい方は失礼かもしれませんが(汗)。
ラレコ:そういう伝説的な人のほうが、想像力をかき立てられますね。
——では、そのうち別の伝説の人が新キャラとして出てくる可能性もあるわけですね?
ラレコ先生:可能性はありますね。でも、やっぱりジミヘンは自分の中で別格ですよ。ヒゲ面のくせに、びらびらと王子様みたいな服を着てたりして、キャラ立ちまくりですよ。カッコ良さだけじゃなくて、笑えて、愛される要素も入ってる感じ。そういう意味ではキャラ化しやすかったです。
——あからさまにアヤしいですよね(笑)。先生ご自身は、どのキャラクターを気に入っているのでしょうか?
ラレコ:ベイビーですかね。
——ベイビーといえば、「8」では何輌も出てきますが、あれは誰かの子供というわけではないのですか?
ラレコ:誰の子供というより、量産型と思ってください。同じ顔をしているといえば、三兄弟がまるっきり同じわけですが、最初はああいう描写はいけないかな、と思っていました。ところが、まったく普通に受け入れてもらえたので、とても不思議でしたね。
——あまり深く考える必要はないとみなさん、感じているのではないでしょうか?
ラレコ:みたいですね。
——ちなみにベイビーですけど、卵から生まれてくるのですか?
ラレコ:いやー、どうなのでしょう? まだ考え中です(笑)。
——ちなみに、三兄弟たちは、人間的に何歳ぐらいのイメージなのでしょう?
ラレコ:それも細かく決めていないですね。大人でもあるし、子供でもある、みたいな。
——確かに自分の子供がいる一方で、もろ子供な行動をいつもしていますし。人間には当てはまらない生き物なのですね、きっと。
ラレコ:そうです。大人のような子供のような、さらには赤ちゃんのメタファーみたいな部分もありますし。
——同じ口をきく戦車なのに、90式戦車はなんであんなに戦車らしいのでしょう?
ラレコ:90式戦車のような硬い戦車たちは、自分から見たら「ちゃんとした人」というイメージなのです。やわらか戦車=ダメな自分と、硬い戦車=ちゃんとした人。ちゃんとしているな、というのを硬さや重さで表現しているわけです。
——なるほど。先生は、ミリタリー関係も好きなのでしょうか?
ラレコ:好きですけど、詳しいというわけではないですね。重そうでカッコいい(笑)、とは思うけど、名前は知らない、というレベルですね。
◆次回作では「やわらか戦車」が野生化する!?
——また話を変えさせていただきまして、「やわらか戦車」の次の話の公開のことなどを伺えればと思います。まだ「9」がアップしてからそれほど経っていないですし、DVD収録の新作も制作されたばかりなのですが、「10」はいつぐらいを予定されてますでしょうか?
ラレコ:でき次第、お見せします(笑)。
——構想はもう練っていらっしゃるのですか?
ラレコ:そうですね、こんなのはどうかな、という感じで考えてます。
——このあと、卒業・入学シーズンとかありますが、そういう内容ですか?
ラレコ:いえ、そっちは考えていません。やわらか戦車が野生化したら面白いかな、と思っています(笑)。
——野生化ですか(笑)。楽しみにしております。
現在の人気ぶりを先生自身はあまり把握していない辺りが自然体で、先生らしいといえるだろう。それだからこそ、「やわらか戦車」のような味のある作品が生まれてくるのではないだろうか。それにしても、あれだけ子供にも好かれるキャラクターなのに、子供のことはあまり意識していなかったという点は驚きである。後日掲載の後編では、クリエイターとしてのこだわりや、ネットアニメのクリエイターを目指す人たちへのメッセージ、DVDの見所などをお届けする。
◆DVDタイトル:『やわらか戦車 The Legend of Yawaraka Tank』
発売日:3月21日(水)DVD発売
価格:2,940円(税込)
発売元:フアンワークス
販売元:ジェネオン エンターテイメント
《デイビー日高》
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