Webスキルを持ったプロデューサー育成が重要——デジタルハリウッド・ソリューションフォーラム2007
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
まずはデジタルハリウッド ソリューション事業部の営業担当朝日勇太氏から「企業のWebプロジェクトを活性化する人材教育」と題したプレゼンテーションが行われた。
プレゼンテーションではWeb2.0時代における企業のWEB制作に関する問題点として「知識レベルの異なる複数のメンバーがウェブ制作を担当したことにより、統一感がなく使いにくいサイトになってしまった」、「他部署からの要望をうまく調整できない」、「効果測定の方法がわからず、どの部分を改善すべきかわからない」などをあげ、これらを解決するためには、サイトの制作を外部に丸投げせずWeb標準スキルを持ったプロデューサー、ディレクターを内部で育成するべきだとの見解を示し、デジタルハリウッドの法人教育ソリューションの紹介が行われた。
続けて行われたスペシャルセッション「Web2.0ビジネスの展開とベンチャー流人財の集め方・育て方」では、モデレーターとしてネットイヤーグループ株式会社代表取締役CEOの石黒不二代氏、そしてゲストスピーカーとして株式会社ネットエイジグループ代表取締役の西川潔氏、サイボウズ株式会社代表取締役の青野慶久氏というIT系ベンチャーのトップたちが壇上に上がり、人材獲得と教育についてのそれぞれの体験や、Web2.0時代に必要となる人材像、人材育成の実践的手法などについてトークセッションが行われた。いくつか印象的な言葉をひろってみよう。
「中途採用については、人材紹介会社に必要な人材の条件を伝えて探してもらうことが多いですが、どちらかというと向こうから売り込んでくる人の方をよく採用します。自分で行きたいところを探せる人の方が熱意がありますからね。新卒に関しては通常の企業よりもWebを活用しているほうだと思います。実際現在の就職活動は情報収集にしてもエントリーにしてもWebが中心ですからね。」(ネットエイジ西川氏)
「就職活動中の学生からは『いっしょに働く人のことが知りたい』とよく言われるので、弊社では積極的にブログを活用しています。事業内容や製品については企業のサイトを見ればわかりますが、社長ブログだけでは雰囲気などは見えないですからね。開発、営業、マーケティングなど様々な部署の社員15人くらいがブログを書いています。」(サイボウズ青野氏)
続いて、これからの人材教育について実践的な意見が交わされた。
「これから消費の主流となる(19)76世代と呼ばれる若い人たちは、大学生のときからインターネットに接している本当の意味でのデジタルキッズです。そこに向けてマーケティングするのは絶対に同世代の人間しかできません。ユーザーと向き合うマーケティング部門には若い世代を積極的に採用するべきです。40代以上の人は予算配分や事業戦略といった豊富な経験を生かせる別のことをやればいいのです。」(ネットエイジ西川氏)
「私は逆にWeb2.0時代といっても根本はおなじじゃないかと考えています。もちろん手法は時代によって変わっていきますが、マーケティングの基本であるお客様を大事にしたい、喜ばせたいというのは不変です。そのことさえ忘れなければ、そうそう失敗はないのではないでしょうか。」(サイボウズ青野氏)
同じIT系企業とはいえ両社トップの経営方針は相反するところも多く、興味深いエピソードが続いた。
1時間程度のセッションの後は質疑応答となり、多くの一般企業参加者から様々な質問が飛んだ。中でも印象的だったのは教育業界の参加者からのこのような質問だ。
——中高生向けネットコミュニティを運営しているのですが、ユーザーからの『ここに書かれている参加者のコメントはすべて信じられるのですか?』という質問に困っています。ネットコミュニティで一度トラブルを経験してしまいインターネットすべてを信じられなくなってしまったユーザーというのが実際に多数存在しています。このような体験をしたユーザーを再びネットに引き戻す方法はあるのでしょうか。
この質問に対してネットエイジの西川氏は、
「運営者側がコミュニティーをパトロールして、悪質なユーザーを追い出すのは簡単ですがそれではコミュニティは成長しません。コミュニティ内で議論が尽くされ、ユーザーの方から閉め出される、いわゆる自浄作用が働くのがベストです。コミュニティをそういう雰囲気に導けていけるかどうかがポイントでしょう。確かに一度傷を負ってしまった人から再び信頼を取り戻すのは難しいです。小中学生の時点から親や教師がネットリテラシーを体系的に教育する必要があるのでしょうね。」
サイボウズ青野氏は、
「世の中に情報はたくさんありますが、何事も事実と解釈を峻別することが大事だと思います。例えば弊社では報告書提出時には事実と所感を明確に分けるよう指導しています。私も2ちゃんねるなどでよく攻撃されますが『これは事実ではなく相手の解釈(感情)』の問題なんだな、と思うようになってから腹がたたなくなりました。これもネットリテラシーなのでしょうが、このようなスキルを教育する必要があると思います。」
とそれぞれ回答した。
人材教育やマーケティングからコミュニティ運営の話しまで、スピーカーの経験に裏づけされた多岐にわたる興味深い話題が続出し、実り多いセミナーだった。
《田口和裕》
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