地域、製品、サービスの補完を実現するアルカテルとルーセントの合併
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日本法人の代表取締役社長は、藤田聰氏。藤田氏は元日本ルーセントテクノロジ代表取締役社長であり、2006年12月の本社合併時からは日本アルカテルの代表取締役を兼任していた。合併後の日本アルカテル・ルーセントは、本社を旧日本ルーセント・テクノロジーがあった六本木に置く。また、旧日本アルカテルがあった品川インターシティのオフィスも品川オフィスとして残すが、今年内には拠点を統合する予定だ。
仏アルカテルは1898年に創業した電話会社を母体とし、100年以上の歴史を持つ通信機器メーカーだ。米ルーセント・テクノロジーは米国ベル研究所から発足し、こちらも100年以上の歴史がある。両者の合併の理由は、地域特性と技術分野の補完にあった。アルカテルは売上の半分がヨーロッパ市場。残りが北米とアジア、中東、中南米という構成。一方、ルーセントテクノロジーは売上の半数以上が北米であり、残りがヨーロッパ、アジア太平洋地域、中南米だった。今回の合併により、アルカテル・ルーセントの売上比率は北米・ヨーロッパ・その他の地域がそれぞれ3分の1と等分される。アルカテル・ルーセントは世界を4つの地域に分けて統括するため、今後は売上比率において、4地域がともに発展していくモデルを目指すようだ。これはアジア・パシフィック地域の売上比率を10パーセント向上させることでもあり、同社が中国と日本を重視していることが分かる。
藤田聰社長は、日本アルカテル・ルーセントの事業展開として「総務省がe-JAPAN戦略の次に打ち出したユビキタスネット社会構想、u-JAPANに関する総合的なソリューションを中心に、あらゆるネットワーク・テクノロジーを顧客に提供していく」と述べた。
その主要な柱は7つ。
・次世代ネットワーク実現のためのIP化分野
・次世代ネットワークのマルチメディア系ソリューションを目指すコンバージェンス分野
・第三世代携帯電話をはじめ、モバイルWiMAXなどによるブロードバンドワイヤレスネットワークを目指すワイヤレス分野
・オプティカル分野
・ギガビットFTTHをはじめ、専用線やDSLなどを熟知したアクセス分野
・企業系ネットワークソリューションであるエンタープライズ分野
・マルチベンダソリューションやサードパーティ製品の間カスタマイズやメンテナンスなどを担うサービス分野
である。藤田氏は「これらの事業はどれも注力すべきだが、時期的にはワイヤレスとオプティカルを注力することになるだろう」と語った。
日本アルカテル・ルーセント代表取締役チーフ オペレーティング オフィサーのマーティン・ジョーディ氏は、「アルカテルとルーセントテクノロジーの合併には、地域的な補完だけではなく、製品やサービスの補完を実現するため」と語った。
日本アルカテル・ルーセントの強みは、グローバルに展開するアルカテル・ルーセントの技術力と製品開発、販売ノウハウの蓄積にある。アルカテル・ルーセントの研究開発費用は年間30億USドル。研究職員は2万3,000名。研究実績としてベル研究所は6つのノーベル賞を受賞し、全世界で2万5,000件の特許を取得している。製品販売とサービスの実績では、エンタープライズソリューション、光伝送インフラ、アクセスソリューション、IPアドレスマネジメントなどで世界第一位。最新のワイヤレステクノロジー、WiMAX分野にてマーケット・リーダーの位置にある。
マーティン氏は「日本はもっとも通信分野が進んだ地域であり、アルカテル・ルーセントが持つもっとも進んだソリューションを提供できる。イノベーションを日本で進めたい」と抱負を語った。
記者発表の冒頭で、アルカテル・ルーセントは世界を4分割して統括すると説明された。これについて、アジア太平洋地域広報担当のポール・ロス氏が日本法人の位置づけとアジア太平洋地地域のヴィジョンを説明した。
アジアパシフィック市場は本部を中国の上海に置く。これは多国籍企業としては初めてのことだ。基本的には地域本部が担当地域のすべての国で展開する。しかし、アジアパシフィック地域のうち、日本と中国は独立した法人を設置する。それだけ重要だと考えられているわけだ。
アジアパシフィック市場は19か国で構成され、2006年の売上高は21億1600万ユーロ。これはアルカテル・ルーセントの総売上の17パーセントである。また、世界に6拠点ある研究開発施設のうちのひとつが中国にある。
2007年の取り組みは、IPTV分野でリーダーシップをとること、3G技術の積極的な投入、次世代ワイヤレス・ブロードバンドアクセスの実現、IPネットワークへの速やかな移行、公共市場、産業市場の拡大、ネットワークアプリケーション、サービス主体のビジネスを加速させていくこと、とした。
近年の成功事例としては、台湾のChunghwa Telecom社が台湾初のユニバーサルWiMAXネットワークを構築した際にアルカテル・ルーセントのソリューションが採用されたことを始め、中国チャイナテレコム、マカオCTMのIP移行に採用されたこと、前日4月2日にシンガポールでIP移行化センターをオープンさせたことなどがある。
ポール氏は、日本アルカテル・ルーセントが日本市場の要望にもっとも適した製品ポートフォリオを提供していくとまとめ、さらに、先進の日本市場がアジアパシフィックの戦略のカギとなる、と期待を寄せた。
日本アルカテル・ルーセント社は、グローバル企業のひとつのエリアに対する責任を持つと同時に、その実績やノウハウを全世界にフィードバックするという重要な役目を持っている。日本法人の合併・存続は、アルカテル・ルーセント社のアジアに対する期待を強く感じさせる施策だと言えるだろう。
《杉山淳一》
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