【インタビュー】日立独自のサーバ仮想化機構「Virtage」とは?
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
——まず仮想化の基本概念について教えてください。
上野氏「CPUの仮想メモリ、ネットワークのVLAN、ストレージのRAIDといったように、コンピュータの世界にはすでにいろいろな仮想化があります。“物理的に限られた資源を実際にはたくさんあるかのように見せる”のが仮想化といえます。サーバの仮想化は、日常生活ではレンタカーに例えられます。レンタカーは必要なときに必要に応じて借りられるので、仮想的に様々な車を持っていると考えることができます。Webサーバやデータベースサーバなど、特定の用途で使おうと思ってマシンを購入すると、メモリやディスクの構成が決まってしまい、そのサーバが不要になっても他の用途に転用できないといったことが起こります。あるいは、メモリを取り外して別のサーバに付け替えて再利用すると、資産管理が煩雑になってしまうといった問題もあります。しかし、物理的に大規模なマシンを1台用意し、それを複数のサーバとして柔軟に割り当ててやることができれば、サーバを新たに購入しなくても、用途に応じたサーバ構築が可能になります。サーバを仮想化するには、メモリ・I/O・CPUを、例えば全体の3分の1しかないように見せかけるソフトウェアの改造が必要です。そういった物理資源を分割して見せる階層を“仮想化機構”や“仮想化ソフトウェア”と呼んでいます」
——今なぜサーバの仮想化が注目されているのでしょうか?
松村氏「ブレードサーバは、用途に応じてブレードを接続し、複数台のサーバを構成できますが、もっと細かい単位で柔軟に構成したい、無駄を省きたいといったニーズがあります」
上野氏「昨今のマシンの高性能化は、マシンサイクルが頭打ちになってきて、プロセッサのスピードがコア数をかせぐ時代になっています。仮想化で効率よく使えるようにしないと、ソフトウェア側では対応ができなくなっているということもありますね」
松村氏「ブレードサーバにはまた、資源を一カ所に集約することで管理コストを効率化させられるメリットがありますが、仮想化によって従来よりもITシステム投資の改善が見込めるということも、仮想化が注目されている理由の1つです」
上野氏「データセンターの冷却設備が限界にきているといった環境面での現状の問題もありますし、また“新業務に迅速に対応したい”という声も多く聞きます。“明日から新しい開発プロジェクトに人員を配置するからサーバを用意して欲しい”といった要求にも応えることが求められているようです。他にも、ピーク負荷対応のサーバ投資を最小化したいとか、ディザスタリカバリの待機系サイトを仮想化してサーバ投資を効率化させたいといった要望もあるようです」
——日立がWindows、Linux環境の仮想化基盤を開発したのはなぜですか?
上野氏「いずれはIAアーキテクチャでも仮想化が必要になると我々は考えていまして、メインフレームの時代から仮想化に携わっていたチームが、細々と(笑)開発を続けていました」
松村氏「随分古い頃からですよ(笑)。まだVMwareが世の中に聞こえていなくて、マイクロソフト社のVirtual Serverもない頃でしたから」
上野氏「オープンの世界でもそろそろ仮想化を考えてみようという動きも出てきましたし、市場投入できる時期が到来したということで、このたび、インテル社の仮想化技術“Intel Virtualization Technology(VT)”との連携による仮想化製品の出荷を開始したというわけです」
——日立の仮想化機構「Virtage」と、他のソフトウェア方式の違いを教えてください。
上野氏「IAアーキテクチャにおいて仮想化を実現するためには、CPU、チップセット、PCI、管理サーバのそれぞれでハードウェアアシストが必要になります。CPUの仮想化をアシストする技術としてVT-i(IPF用)とVT-x(Xeon用)がインテル社から出ましたが、Virtageでは、まだ製品化されていない、I/Oの起動やメモリへのデータ転送を高速化するVT-dに相当する機能の一部を独自にLSIに組み込みました。他社のソフトウェア方式は、このI/O支援をソフトウェアエミュレーションで実行していますが、VirtageはCPUからPCIカードへのアクセスを仮想化ソフトでいったんトラップする必要がなく、性能的に優位性を持っています。また機能面においても、ソフトウェア方式の場合は、仮想環境と実際のハードウェアの間の制御を行うハイパーバイザが入ることにより、物理的にあるデバイスをそのままゲストOSに見せないようにしているわけで、逆に言えば、OSから見たとき、実際とは異なるデバイスが見えてしまいます。Virtageの場合は、本当のデバイスがOSから見えます。こうした他社ソフトウェア方式にない“ハードウェアの透過性”は、クラスタシステム(ネットワークで接続された複数のサーバを連携させて1つのシステムとして運用するシステム)を物理サーバと同様に仮想サーバでも構築できるというメリットも生みます。例えばMSCS(Microsoft Clustering Service)でクラスタシステムを構成した場合、複数のサーバ間で排他制御を行うための特殊なコマンドを共有LUに対して発行しますが、物理ディスクをそのまま見せることができるVirtageであれば、クラスタソフトウェアが意図したとおりに共有ディスクを動作させてクラスタ制御することができます」
上野氏「“ハードウェアの透過性”はもう1つ、物理環境と同じファイルシステムが使えるという優位性もあります。一般のソフトウェア方式では、VMware社独自のファイルシステム“VMFS”を前提とした構築が多く、いったん開発プロジェクトで使用した仮想環境のディスクは、そのまま本番の物理環境へ移行することはできません。Virtageであれば、ディスクをつなぎかえるだけですみます」
——「Virtage」は今後、どのような戦略で販売を展開してきますか?
上野氏「“システムのライフサイクルマネジメント”に適したソリューションとして展開していきたいと考えています。各業務システムに必要なマシンパワーにもライフサイクルがあります。Virtageであれば物理環境・仮想環境の区別なく論理サーバを移動できますから、新規投入したばかりでまだユーザーが少ないサービスは仮想サーバで構築し、サービスが本格化してきたら物理サーバに移行して大規模運用、そして運用末期では再び仮想サーバに戻して規模を縮小していく、といったライフサイクルで効果的に活用していただけます」
松村氏「Virtageは当社のブレードサーバの中でも、ハイエンドモデル“BladeSymphony BS1000”に搭載されているサ−バ仮想化機構ですから、ターゲットとしては、大企業様の中で、細かい業務を集めたり、開発環境を柔軟に用意するといったニーズに応えていけると考えています。まだ仮想化に不安を持っていて“開発環境でなら使ってみるか”といったお客様もいらっしゃいますが、現在Virtageに興味を持っていただいているお客様は、本番環境での利用を検討していらっしゃいます。当社がメインフレーマーであり、国内で迅速にサポートできるということも評価していただけているようです」
《RBB TODAY》
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