FTTHは電力系、ケーブル系と協調し脱NTTを加速——KDDI決算報告
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KDDI代表取締役社長の小野寺正氏は「5期連続の増収増益。営業利益が初めて4,000億円を超えた」と好調ぶりをアピールした。
セグメント別では、移動通信事業の売上は2兆8,626億円(6.9%増)で営業利益は4,550億円(18%増)、固定通信事業の売上は7,186億円(0.6%増)で営業損失は647億円、その他の事業は売上が1,672億円(53.8%増)で営業利益は90億円(31.4%増)となった。平成21年3月期(2008年4月〜2009年3月)は、売上は3兆7,000億円(2.9%増)で営業利益は4,430億円(10.6%増)と引き続き増収増益を見込んでいる。設備投資は5,900億円(730億円増)。auの2GHz帯や新800MHz帯、固定網のオールIP化を中心に積極的に投資する。
●携帯電話事業は「商品に対する管理が甘くなった」
移動通信事業では、「W42K」のバッテリー事故と、新しいプラットフォーム「KCP+」を採用した携帯電話の発売の遅れをあげ「商品に対する管理が甘くなった」(小野寺氏)と振り返った。2007年10月から開始した新しい端末の販売方式「買い方セレクト」についてユーザに対する周知が足りなかったことも問題だとした。
KDDIはCDMA2000方式を採用しており、その延長線上には3.9Gにあたる「UMB」(Ultra Mobile Broadband)がある。しかし、KDDIがドコモなどが開発を進める「スーパー3G(LTE:Long Term Evolution)」方式を採用するという一部報道があった。小野寺氏は、「3.9Gに関しては何かしらの場で説明をしたい。LTEもUMB方式も技術的には差はない。マーケットを見ながら決める。非常識な選定をするつもりはない」との発言があった。
ドコモとソフトバンクモバイルが採用している端末の割賦販売(分割払い)は、「時期は未定だが検討中」(小野寺氏)としたほか、スマートフォンについては「諸般の事情で遅れている」という。
平成21年3月期は、営業利益は前年比9.2%増の4,970億円を見込む。ARPUは6,260円から5,660円に、端末の販売台数は1,582万台から1,440万台に減少するものの、149万契約の新規契約を見込んでおり、これが増収増益につながるとした。
平成20年3月期中は、業界全体で約600万契約の新規契約があったが、「個人市場はシュリンクしている。今年度は業界全体では390万台程度」と予測する。しかし、法人契約と組み込み用のモジュールに期待しており「(業界全体では)2億台という数字を目指していくべき」とした。
「誰でも割」や新しい端末の販売方式により、「2年契約が中心になっている。キャリアの乗り換え少なくなり、解約率も下がっている」とした。
●赤字でも「固定通信事業は縮小しない」
メタルプラスは黒字に転化したが、FTTH事業は以前として赤字だ。固定通信事業全体においても、647億円の営業損失がある。しかし、小野寺氏は「固定通信事業は縮小しない」とする。アクセスチャージ料金を減らすためだ。
たとえば1987年当時、東京〜大阪の市外通話は3分間300円だった。このうちNTTに支払うアクセスチャージは20円であり、93.3%が手残りとなった。しかし、現在の戸建て向けFTTHの場合は、利用料金が月額7,528円であるが、このうちNTTに支払うアクセスチャージは5,460円となり、手残りの割合は27.5%となる。この27.5%には、コロケーション費用などは含んでいないため「利益は売上の10%から20%に過ぎない」(小野寺氏)という状態だ。
固定回線事業ではこのように、NTTに支払うアクセスチャージ料金が重くのしかかっている。KDDIでは、東京電力からパワードコムとFTTH事業、中部電力からは中部テレコミュニケーション(CTC)、CATVの持ち株会社ジャパンケーブルネット(JCN)を買収している。いずれの事業者もユーザ宅までの回線を保有しているため、NTTに支払うアクセスチャージ料金を減らせるほか自由度も増すというわけだ。
これらの買収や既存サービスの新規契約により、FTTHやメタルプラス、ケーブルプラス電話、ケーブルテレビなどの固定のアクセス系回線だが、2008年3月末現在は483万回線だが、2009年3月末には530万回線に増やす計画だ。法人向けのアクセス回線は順調で、特に電力系通信会社との連携によるメリットが大きい。アクセスラインには、NTTと電力系通信会社の両方を採用することで二重化し高い信頼性があるとアピールした。
特に、パワードコムのネットワークにより首都圏では効果を発揮しており、CTCの回線により中部地方でも積極的に展開する。
《安達崇徳》
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