GT-R開発責任者、水野氏に聞いた——マルチメータのログデータをメモリに読み出せれば
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「追浜」の呼び方は「おっぱま」だ。この研究所とテストコースといえばサファリ仕様のPA10(バイオレット)やモンテカルロ仕様のフェアレディZなどの開発やセッティングを手がけていたことで有名だ。
水野氏のプレゼンは、GT-Rの発表時に使用されたスライドをベースに行われた。すでに各自動車関連メディアがさんざん伝えている内容なので、ポイントだけに絞ったものだったが、ときにはホワイトボードの図解など交え、内容はかなり熱く、日本のものづくりや車という「資産」の考え方、設計思想などを語ってくれた。ここで、それをあらためてまとめるのはRBB TODAYの役目ではないと思うので、写真とトピック、そして水野氏に聞いたGT-R情報を紹介しよう。
まず、プレゼンの中で面白かったのは、GT-Rのエンジンとミッションは専用の工場で12人の専門のスタッフが1台ずつ手作業で組み立てているとのこと。このため、GT-Rでは、じつは品質は均一でなく、職人が熟練していくほど精度があがっていくという。これは、通常のエンジニアリングやライン生産の考え方を否定するものだが、これこそが日本のものづくりの原点ではないかとのことだ。もちろん、品質のばらつきがマイナス方向にでないように、組みあがったエンジンなどの出力検査などは全数行う。サンプリング検査などありえない工程だ(エンジンについては)。また、車は年数が経つほど減価償却的に価値が目減りしていく。一般に3年で60%前後の価値になってしまうが、GT-Rは3年後の価値の目減りが少なく、残価設定が可能な「リース」の発想が可能だとしている。たとえば、写真は、小さいナットを車の塗装板金に射出したときのキズのつき具合だが、GT-Rの塗装はキズがつきにくい。エンジンやメンテナンスの無料補償もランニングコストでみた価値も高めてくれる。すべてに適用できるわけではないが、このような発想の転換は、アジアなど新興国が市場で台頭してくるなか、日本独自の生き残りの施策として、差別化のために重要との考え方だ。
GT-Rといえば、そのレーシングカーのようなスペックだけでなくITに関係の深い装備もある。通常カーナビとして使うモニタ画面を使った「マルチモニタ」だ。業界なら「データロガー」のディスプレイといえばわかりやすいだろう。競技車輌の場合、タコメータ以外に油圧計や過給器の圧力計(ブースト計)、その他電子制御部分の計器などが個別のメーターとして取り付けられるが、最近の航空機のマルチディスプレイよろしく各種センサー情報を画面を切り替えて表示できるものだ。
表示できるデータは、油温、水温、アクセル開度、ステアリング角度、横G、加減速Gなど多岐にわたる。これらを表示するだけでなくロギングするデータロガー機能も持っている。記録されたデータは、現状ではメンテナンス用に利用されるものだが、このデータをユーザーに解放しないのか水野氏に聞いてみた。一般ユーザーがこれらのデータをどのように使うのか、という疑問もなくはないが、ログデータを携帯やPCに転送できれば、コミュニティやサービスなどの幅が広がることは確かだ。
この質問については、そういった要望はすでに各所からいただいているので検討している。現状ではなにもコミットできないが、とにかく待っていてほしい。との返事だ。
一定のログデータがあれば、ネット経由でドライビングや車の状況を診断してもらうこともできるし、長期的なモニタリングによって、ショックアブソーバ、タイヤ、ブレーキなど特定部分の最適なメンテナンス時期を知らせることもできるだろう。サーキット走行などではオーナーどうしの情報交換やドライビング分析など、コミュニティの輪が広がるかもしれない。ぜひ、前向きに進めてほしい機能だ。
プレゼンでは、職人がエンジンを1台ずつ手作りしているとのことだったので、生産がおいつかないのではないかとの質問もしてみた。返事は、もちろん間に合っていないとのことだ。現在注文しても納車は3年待たされる状態だという。それでも製造工程を変えることはない。プレゼンでの話に戻るが、それがGT-Rの価値につながっているようだ。実際、アラブの王族からは、特注仕様のGT-Rを400台受注しているとの話をしてくれた。当然分納になるし、海外では1200万レベルの価格になるが、それだけ価値を認められているからだろう。
最後にGT-R試乗の感想をひと言述べさせてもらうとしたら、加速については旅客機の離陸G以上のGが体感できる、とだけいっておこう。
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