携帯サイトのリッチ化と収益化を同時に加速させる「Colors」
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
その一方で携帯電話のWebサイトはリッチ化が遅れている。携帯電話ネットワークの高速化、パケット通信料金の定額化、ディスプレイの大型化と高精細化、CPUの高速化などリッチ化を進める条件が揃っているにもかかわらずだ。
この遅れは、携帯電話に搭載しているWebブラウザに制限が多いことに原因がある。これを解決するソリューションとして、ネイキッドテクノロジーのモバイルRIA(Rich Internet Applications)プラットフォーム「Colors」がある。専用のクライアントアプリを用意することで、携帯電話に搭載されているWebブラウザでは実現できないアニメーションや快適な操作性を実現している。
さらにネイキッドテクノロジーは、Colorsで開発したモバイルRIAサービスに広告配信を行うために、10月にサイバー・コミュニケーションズ(cci)、クライテリア・コミュニケーションズ(クライテリア)と提携し、アドネットワークとして「ADJUSTモバイル」を採用した。
そこで、ネイキッドテクノロジー代表取締役の菅野龍彦氏に、Colorsのコンセプトやモバイル広告との連携の意図などを聞いた。
——Colorsの概要を教えてください
UI(User Interface)を記述してHTMLに埋め込める独自言語仕様「XUI」を核としたモバイル機器向けのコンテンツ配信プラットフォームです。XUIで記述されたコンテンツは、専用のゲートウェイサーバを経由して、携帯電話のクライアントアプリで閲覧できます。携帯電話にダウンロードをするアプリを共通のプラットフォームとして、サービスやコンテンツが順次追加されていく形を目指しています。
現在、クライアントアプリはiモード版のみを提供しています。ソフトバンク版は年内に、KDDIのau向けBrewアプリは2009年初夏までには開発を終了し、順次公開をしていく予定です。
——携帯電話で動作をするクライアントアプリの役割は何ですか
クライアントアプリは、HTMLファイルを読み込んで表示をする点でWebブラウザに似ています。標準搭載のブラウザと異なるのは、ネイキッドテクノロジーが拡張した言語XUIを解釈して表示できるということです。
——XUIの特徴は何ですか
既存のHTMLコンテンツ資産を継承して、携帯電話に最適化されたUIを持つRIAを効率的に開発し実現できる言語仕様であることです。
現状の携帯電話向けWebサイトは、テキストと静止画を中心とした静的なものがほとんどです。携帯電話向けWebサイトでリッチな表現を実現するにはFlash Liteを用いる選択肢がありますが、標準搭載ブラウザのプラグインとして実装されているため、ボタン操作や通信のタイミング、データ容量などに制約が多く、サービス設計の自由度は低い状況です。しかし、XUIでは専用のクライアントアプリを利用するために、ユーザ側の直感的な操作を可能とし、非同期通信を利用するなどして、より自由度の高いサービスの設計が可能になります。
また、Flash Liteですと専用のコードではじめからコンテンツを記述していく必要がありますが、XUIではHTMLに拡張タグを追加するだけで動きのあるWebサイトが作成できます。このように既存のコンテンツに少しの手間を加えるだけでリッチな携帯電話向けコンテンツが作成できるのが最大のメリットです。さらに、クライアントアプリがマルチキャリアを実現した際には、1つのソースで複数のキャリアにサービスを提供できるようになります。
——どのようなコンテンツだとColorsを使うのに適しているでしょうか
Colorsの特徴として、HTMLのコンテンツ資産を継承して効率的な開発ができること、クライアントアプリが非同期通信をサポートしていることがあげられます。このことから、サービスを提供する際に多くの画面遷移を必要とするサービスや優れたナビゲーションが必要になるサービスにはすべて適しているといえます。具体的には、情報検索サービスやモバイルコマース、ニュースや情報系コンテンツサイト、ブログやSNSなどのCGMサイトなどで活用されることを想定しています。
たとえば、現状のモバイル向けレストラン検索サイトでは、地域や料理ジャンル、価格帯や用途・目的など、多くの検索条件をユーザ側が入力しないと、適切な検索結果を得ることができません。一方でColorsが実現するUIでは、雑誌をめくるような感覚で、多様な検索軸を閲覧しながら項目を選択し、写真を中心とした情報を文字どおりブラウジング(流し読み)しながら、自分の感性に合うお店を直感的に選択することが可能になります。
また、現在モバイルコマースの利用シーンの多くは単品買いであるといわれています。ファッション商品であれば、雑誌に出ていたアイテムをモバイルサイトで検索して、一番安い価格の店で購入するといった利用形態が想定されます。
従来の“メンズファッション>ジーンズ>ブランド>アイテム”といったツリー上のカテゴリ構成や、フリーワードを中心とした検索では、“30インチのストレートのブラックジーンズを複数のブランドから探したい”というユーザニーズには応えることができません。
優れた操作性を実現する技術を前提に、快適なブラウジングが可能なUIを提案できれば、多様な検索軸による閲覧方法の提案により、今までのモバイルコマースが取り込めていない利用シーンを捉えて、ユーザ一人あたりの売上高を上げることが可能になるかもしれません。
——クライテリア・コミュニケーションズのモバイル広告「ADJUSTモバイル」と提携した理由は何でしょうか
クライテリアの親会社であるサイバー・コミュニケーションズ(cci)は、主にPCサイト向けの広告を手がけています。cciにとっては、PCサイト向けの広告で取引のあるメディア企業に対し、モバイルサービスへの進出を促していくことによって、取り扱い広告商品の品目を拡大していくことができます。ネイキッドテクノロジーには、PC向けサイトのコンテンツから、効率的にモバイルRIAを作成する技術があります。cciの事業戦略課題に、ネイキッドテクノロジーが持っている技術が貢献できるのではないかと思っており、これが今回の提携に至った最大の理由です。
クライテリアのADJUSTモバイルは、コンテンツと広告のマッチングを行い、広告表示します。将来的には、閲覧履歴などを用いた行動ターゲティングを共同で開発しようと考えています。
モバイル広告市場はハイペースで拡大しつつあるものの、PCサイトと比較して著しく低い広告単価であるため、多くのメディア企業にとって、モバイルサービスの収益化にはまだ厳しい状況です。原因の1つにはCGMのサイトが抱えるモバイル広告の在庫があります。相対的に単価が安い広告在庫が、市場のかなりの部分を占めているために、他の業態が持つ広告の価格も下がっているということがあります。
もう1つは、モバイルでは広告自体が持つ情報が非常に少ないということにあります。テキストや静止画、一部でアニメーションの表現があったとしても、PCサイトの広告表現と比較して情報量が非常に少ないことが、広告主がモバイル広告の用途を限定し未だに一部の広告主による活用にとどまっている理由の一つであると考えています。
これらの問題は、ADJUSTモバイルのコンテンツマッチング技術や、Colorsを用いて広告表現をリッチ化していくことで解決できる可能性があります。
表示できる情報を増やすという課題に対しては、たとえば、Colorsの非同期通信をサポートする特長を利用して、広告をあらかじめキャッシュさせ、ユーザが広告をクリックしたら即座に15秒間のアニメーションが再生されるという表現も可能です。これにより、モバイル広告の付加価値を高め、広告単価を上げることが可能になるかもしれません。
——今後、追加していきたい機能や将来像をお聞かせください
今のところ開発の中心は、マルチキャリア対応を進めるところに注力をしています。プラットフォームサービスですので、より多くのコンテンツ事業者に利用していただきやすい環境を早く実現する必要があるからです。将来的にColorsは日本発の世界標準を目指しており、Symbian、iPhone、Android等のプラットフォームへの対応を通じて、海外展開を加速していきたいと思っています。
《安達崇徳》
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