保護だけでなく流通させるDRM——電子書籍のP2P流通を可能にする技術
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
この技術はアイドックが持つ「KeyringPDF」をベースに、「超流通」の機能を実装した電子書籍フォーマットだ。PDFには自由に閲覧できる立ち読み部分と暗号化によって保護された全体のコンテンツがある。この暗号化は各コピーごとに決済処理をすると解除できるようになっている。つまり立ち読み部分を見て、気に入ったら購入手続きをすれば続きが読めるようになるPDFだ。これらの機能はPDFファイルに埋め込まれているので、クライアント側(主にPC)に特別なソフトウェアや事前にサイトへのアカウント登録などは必要ないただし、。KeyringPDFはAcrobatのプラグイン機能なので使っているPDFリーダーにこのプラグインがインストールされている必要がある。KeyringPDFのプラグインは、配布される電子書籍データにダウンロード機能が埋め込まれる。
超流通とは、本来ソフトウェアの流通のために考えられた手法で、ファイルそのものの配布やコピーに制限がなく、そのファイル(プログラム)を使うときになんらかの課金や認証処理を必要とするしくみだ。この方式なら、ファイルはP2Pネットワークだろうがメール添付だろうが媒体経由だろうが配布、流通を制御したり監視する必要はない。そのファイルに決済機能や認証機能を実装すれば、利用者のアカウント管理もほとんど必要ない。これを電子書籍に応用したものが、今回発表された電子書籍フォーマット「KeyringPDF for 超流通」ということになる。
この電子書籍は、決済後のファイルをUSBメモリにコピーできる。USBメモリのコピーはプロテクトがかかるので(コピーワンス)、それ以上の複製はできないが、決済後のコンテンツを別のPCや端末で見ることができる。従来のDRMでは、ダウンロードしたPCでしか利用できない不便さがあったが、USBメモリでコンテンツを持ち運べるようになる。USBメモリで「マイ本棚」を持ち歩き、ネットブック(ミニノート)や出先のPCを読書端末として使えるわけだ。
また、印刷の可否や回数、キャプチャーツールの制限などもコンテンツホルダー側の要望で任意に設定できる。これによって、権利者側は、印刷ができるバージョンとそうでないバージョンで価格差を設定したり、論文や官公庁資料などなるべく制限を設けたくないコンテンツへの応用も可能になる。
アスペクトは、KeyringPDF for 超流通を応用した電子書籍販売を展開していくとしている。いまのところWindows対応のみだが、今後Mac OS対応を行い、iPhoneやWiiといったマルチデバイス対応も展開していく予定があるとのことだ。なお、この方式による電子書籍の価格(決済金額)は、1,260円〜2,000円前後となる見込みという。
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