【事例取材】「狙いどおりに構築」……富士通ETERNUSで実現した明大キャンパスストレージ
エンタープライズ
その他
注目記事
-
【デスクツアー】真似したい自宅デスク環境一挙公開!
-
富士通、デジタル放送をハイビジョン画質と高音質のままDVDに保存できるリビングPCなど5シリーズ10モデル——デスクトップPC春モデル
-
F5、富士通「ETERNUS」に対応したストレージ仮想化ソリューション「F5 ARX」

◆企業とは違う、大学にあるべきストレージシステム
明治大学では、ITインフラの整備にとどまらず、情報倫理やリテラシーも含めたIT教育にも力を入れ、TA(Teaching Assistant)の院生がPC講習を行うなど、継続的な教育体制を整えているという。現在では多くの大学で導入されているラーニングマネジメントシステムも、明治大学は国内大学としては早期に導入し、シラバス(講義の要旨、計画、参考資料などの学習案内)やレポート提出においてIT利活用を進めている。
しかしながら、こうした全学的なIT化を進められずにいたのが、各研究室や部門が管理する膨大なデータだ。研究データは、各研究室・部門が独自に構築したファイルサーバや、学生・教員のPCに保存され、データのやり取りにはUSBなどの外部メディアが使われていた。そのため、大容量データのやりとりが難しく、また毎年学生が入れ替わるためにきちんとしたメンバー管理ができないといった情報セキュリティ上の不安もあった。そこで明治大学は、理工学部と情報基盤本部が主体となり、学内LAN内上にストレージシステムを構築して研究室のデータを統合し、セキュアな環境下で大容量データを簡単にやりとりできる仕組みを大学の基盤として用意しようと、2007年春、プロジェクトを立ち上げた。
システムを選定するうえで問題となったのが“データのポリシー管理”だった。「企業であれば、情報システム部門がポリシーを集中管理できるが、大学、特に理工学部では各研究室が独立した管理主体となる。言わば、教員を中心とした“個人商店の集まり”のようなもの」と、明治大学の齋藤氏は語る。他大学とプロジェクトを組んでいる教員は外部アクセスを許可したい、といったように、それぞれの研究に沿ったポリシーで運用したいのだ。そのため、研究室内でメンバー管理やアクセス権限を自由に設定し、大学側が堅牢かつ大容量ストレージとユビキタス環境、セキュリティ、そしてユーザサポートを提供する──齋藤氏は、こうしたイメージのもと、ベンダーの選定を始めた。
大学の運用に対応した大容量ストレージシステムは当時としては前例がなく、複数のベンダーに声をかけた中で、齋藤氏のイメージに合う新システムを提案したのが富士通だった。しかし、「前例のないシステムではありましたが、富士通には以前から手厚い体制を組んでシステムを構築していただいていたこともあり、安心して任せられました」と齋藤氏は言う。
◆前例のない大容量キャンパスストレージ
「明治大学キャンパスストレージシステム」では、Windowsファイルサーバ3台を、それぞれファイバチャネルで「ETERNUS(エターナス)4000」と接続し、合計212Tバイトのストレージを用意した。これをユーザからは1台のファイルサーバに見えるようDFS(分散ファイルシステム)サーバで統合。また、Windows Serverの「ダイナミックディスク」を利用して1ボリューム64Tバイトを実現するとともに、利用者に割り当てられた領域の変更に対し柔軟に対応できる構成とした。障害対策に関しても、RAID6を採用してディスクの二重故障にも対応するなど、データの保全性を考慮した。
ストレージアクセスの認証にはActiveDirectoryを利用し、研究室の管理者による研究室データへのアクセス制限は、富士通の大学向け統合アカウント管理システム「Campusmate/ICAssist ユーザーマネージャ」で行う。大学側があらかじめ各研究室にフォルダを割り当てておき、研究室の管理者は、Webブラウザ上から自分が所属する研究室のフォルダに対してだけ、あらかじめ登録されたActiveDirectory上のユーザの登録と、フォルダへのアクセス権を自由に割り当てればよい。
このキャンパスストレージシステムは、3つのキャンパス(生田・駿河台・和泉)のどこからでも学内LANを介して24時間アクセスでき、またVPNを経由して学外からもアクセスできる。ストレージ容量は最大650Tバイトまで拡張可能と、将来のデータ増大をすでに見据えた構成となっている。
◆クラウド時代の学内統合サービスへ
明治大学キャンパスストレージシステムは今年6月に運用を開始し、現在は理工学部と農学部を中心に、教員200人、学生7,000人が研究活動に活用し、他のキャンパスからも利用可能である。齋藤氏は「狙いどおりのシステムが構築できた。私の研究室内で以前構築していたファイルサーバよりも格段に速くなり、認証もスムーズで、安心して手軽に使える。生田キャンパスと駿河台キャンパスを行き来することの多い私にとって、両キャンパスからアクセスできるメリットは大きい」と語る。齋藤氏の研究室の院生でTAを努める島崎氏も「TAの仕事で外出する際、今までのようにUSBを持ち歩かなくてよくなり、大容量データも取り出せるので、作業効率が非常に上がったとTAの間でも好評」と言う。
今後の展開について齋藤氏は「“学内ペーパーレス”の基盤としての活用はもちろんだが、私としては、今の大学そのものの情報基盤サービスのあり方をもう一度見直して、今の学生のニーズに合った利活用シーンの拡大を図っていきたい」と語る。一昔前の学生は、コンピュータを使うために大学のPCルームへ通っていたが、今の学生はコミュニケーションや情報収集のツールとして携帯電話を活用している。にもかかわらず、大学にLANをはり巡らせてPCが使える箱を用意するだけでは学生の利用率は高まらないと齋藤氏は考える。「キャンパスストレージシステムは、これからの大学に必要な情報基盤の第一歩。IT業界では“クラウドコンピューティング”が注目されているが、大学もそういった情報基盤を提供することが必要。今後は、現在独立して存在している各サーバを学内LAN上に集約し、付加価値の高いサービスの提供を目指していきたい」と締めくくった。
《柏木由美子》
特集
この記事の写真
/
関連リンク
関連ニュース
-
富士通、デジタル放送をハイビジョン画質と高音質のままDVDに保存できるリビングPCなど5シリーズ10モデル——デスクトップPC春モデル
IT・デジタル -
F5、富士通「ETERNUS」に対応したストレージ仮想化ソリューション「F5 ARX」
エンタープライズ -
富士通のPCサーバ「PRIMERGY」、6コアプロセッサモデルを新規に提供開始
エンタープライズ -
明治大学、国内大学では最大級のストレージシステムを導入
ブロードバンド -
富士通、中国移動通信集団より約20億円分もの基幹システム用サーバ、ストレージを受注
エンタープライズ -
富士通、ブレードサーバと「SAP NetWeaver 7.0 BI Accelerator」のオールインワンモデルを提供開始
エンタープライズ -
京都大学のT2Kオープンスパコンのシステム構築が終了、本格稼働へ
エンタープライズ -
【富士通フォーラム2008 Vol.18(ビデオニュース)】データセンターの温度管理を光ファイバーで!
エンタープライズ -
【富士通フォーラム2008 Vol.14(ビデオニュース)】手のひら静脈認証か指静脈認証か?
エンタープライズ -
【富士通フォーラム2008 Vol.13(ビデオニュース)】世界最小のWiMAX基地局を展示——台湾からも視察が!?
エンタープライズ -
【富士通フォーラム2008 Vol.12】仮想化スイッチを活用しストレージ統合を実現
エンタープライズ -
【富士通フォーラム2008 Vol.11】人手を省けば人的ミスは減る——テンプレートでストレージ設定手順を最大90%削減
エンタープライズ -
【富士通フォーラム2008 Vol.10(ビデオニュース)】ストレージ仮想化デモ——管理コンソール「Storage Cruiser」
エンタープライズ -
【富士通フォーラム2008 Vol.9】ファイルサーバの容量削減でコスト削減とコンプライアンス対応・内部統制強化を実現
エンタープライズ -
【富士通フォーラム2008 Vol.8(ビデオニュース)】オフィスにブレード!低騒音コンパクトラックをデモ
エンタープライズ