【インタビュー】ベストな動画体験を!動画配信の最適化技術「ダイナミックストリーミング」
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CDNとは、動画をはじめとしたコンテンツの配信を最適化する技術。CDNを利用しない場合、クライアントがサーバに直接接続するため、接続数に応じて配信サーバや回線を用意する必要がある。CDNを利用すると、クライアントは配信サーバではなく、コンテンツがキャッシュされた「エッジサーバ」に接続する。このエッジサーバは、世界中のネットワークに配置されているため、配信サーバへの接続は少なくなる。また、クライアントから近いエッジサーバに接続するため、ネットワークの混雑の影響を受けにくく、ユーザは快適にコンテンツが楽しめる。
このCDNを提供している事業者として、アカマイ・テクノロジーズ(アカマイ)がある。アカマイは全世界に4万台のエッジサーバを設置しコンテンツ配信をサポートしている。米国では、CNNやABC、フォルクスワーゲン、ナイキ、CNETなどが映像配信で利用している。
このようなアカマイだが、映像配信をさらに進めるため、アドビシステムズ(アドビ)のFlashを用いた映像プレイヤーの開発キット「Media Framework」を無償で公開した。Flash用のMedia Frameworkは、アドビ システムズの映像配信サーバ「Flash Media Server」に対応。さらに、最新版のFlash Meida Server 3.5でサポートされた動画配信の最適化技術「ダイナミックストリーミング」にも対応している。
そこで、Media Frameworkやダイナミックストリーミングの狙い、日米の動画配信ビジネスについて、米アカマイ・テクノロジーズのSoftware Engineer DistinguishedであるWill Law氏、アカマイのソリューションズ・エンジニアリング部部長の尾崎圭一氏、アドビ システムズのDMO(ダイナミックメディア)テクニカルエバンジェリストである太田禎一氏に話を伺った。
——アカマイがMedia Frameworkを無償で提供した理由を教えてください
Law氏:Media Frameworkを提供することで、ユーザーがインターネットで動画を見る機会が増え、それが収益に結びつくと考えているからです。
——Media Frameworkのリリースはアドビ システムズにとってはどんな意味がありますか?
太田氏:これまで使われてきたQuickTimeやReal、Windows
Mediaによる動画配信では、専用のプレイヤーがあり、URLを指定とすぐに再生ができます。しかし、Flash Media Serverを用いた動画配信では、プレイヤーはFlashで一から作る必要があります。Webサイトにあったデザインのプレイヤーが作れる反面、Flashを知らないと作れないという欠点もあります。Media Frameworkを使うと、プレイヤーが簡単に作れるのでこの欠点が解消されますので、動画配信におけるFlashの採用が増える可能性があります。また、ダイナミックストリーミングは、Flash Media Server 3.5で新たに搭載した機能です。それに歩調を合わせて対応するプレイヤーが出てきてくれたのは心強いですね。
——ダイナミックストリーミングの特徴は何ですか
太田氏:今までのストリーミング動画は、最初から最後まで同じビットレートでしたよね。このビットレートが自分が使える帯域とマッチングしていることを祈るのみでした。500kbpsの帯域があると思いビットレートが300kbpsの動画を選んでも、途中で輻そうがあって実は150kbpsしか使えない可能性もあります。この状態が何分も続きますと、動画は見られなくなってしまいます。
しかし、帯域が150kbpsしかなければ、それに合わせてビットレートを落とせばいいのです。これにより画質は落ちますが、動画を見続けられます。これがダイナミックストリーミングの特徴です。あとダイナミックストリーミングを使うと、映像の立ち上がりが早く感じられます。最初は低いビットレートで映像の再生を始め、バッファがたまり次第、高いビットレートに切り替えるという方法があります。これにより再生の開始時にまったく待たないで、高品質な動画が見られるというわけです。
尾崎氏:動画の配信事業者に聞いたお話ですが、例えばビットレートが300kbpsと1Mbpsの動画を用意したとしましょう。この場合、1Mbpsの方が高品質だと分かるユーザさんは、どんな回線を使っていても1Mbpsを選ぶケースが多いそうです。その結果、コマ落ちをして見られないということもあります。しかし、ダイナミックストリーミングがあれば、多少、画質が落ちてもスムーズに流れるので評価をいただいています。
——ストリーミングのビットレートは何を基準に切り替えているのですか
太田氏:クライアントのバッファやドロップフレームなど複数の指標をモニタリングしながら切り替えています。
——ダイナミックストリーミングを使うと帯域が細くても高画質で動画が楽しめるのですか
太田氏:ダイナミックストリーミングを使っても、帯域が狭ければ画質は悪くなります。Webで映像を見ることが多くなってきたので、そのエクスペリエンスを最良のものにしたいと考えています。この最良のエクスペリエンスを提供するには、途中で動画が止まらないことが重要です。もし動画の再生中にビットレートを切り替えることがあっても、それが分からないようにスムーズで切れ目がないように見せるのがダイナミックストリーミングの役割です。
——ダイナミックストリーミングとMedia Frameworkを採用している事例はありませんか
Law氏:まだリリースしたばかりですので、公式に発表できるものはありません。いくつかの配信事業者と、検討を進めている最中です。
——アカマイのCDNはオバマ大統領の就任式の配信で採用されたそうですね
Law氏:Flash動画のトラフィックだけでも、最大トラフィックは800Gbps、同時再生数は700万を超えました。この同時再生数が700万というのは、ケーブルチャンネル1つに相当するほどの数です。実は2007年に自転車レースのツールオブカリフォルニアを配信しましたが、最大トラフィックは4Gbps、同時再生数は8,000でした。オバマ大統領の就任は、このツールオブカリフォルニアから14か月しか立っていません。その14か月で最大トラフィックは200倍に増えました。今後もこのような成長を期待しています。
——今後もこのようなペースで配信数が増えていくのでしょうか
Law氏:大統領の就任ほど大きなイベントはありませんので、14か月で200倍のペースでは増えないと思います。今後は、イベントによりトラフィックがピークを迎えるよりも、全体的なトラフィックが上がっていく傾向になると思います。2008年にアメリカで行われた調査結果ですが、Webで映像を見るのは1日で平均4分半だそうです。しかし、テレビは1日4時間です。それを考えますと、Webで映像を見る時間はまだまだ少ないように思います。しかし、今後はテレビからシフトしていきWebで映像を見る機会が増えてくると期待できます。
——日本とアメリカでWeb上での映像配信への取り組みに違いは感じられますか
太田氏:著作権管理は、アメリカさらにはハリウッドが一番厳しいでしょうね。地上波放送やケーブルテレビ、インターネットなど配信メディアごとにかなり厳格なコンテンツ保護の要求を決めています。これは、例えば解像度が標準画質なら出力制限は必要がないといったようなものです。しかし、日本だと、インターネットならひとくくりに全部ダメとしてしまっています。配信していいのかダメなのかのどちらかで、中間がないのが問題です。ではなぜアメリカでは中間があるかといいますと、許容度を高めて柔軟に対応することでビジネスができあがり儲かっているからです。これが日本との違いだと思います。
Law氏:アメリカでも動画配信のビジネスは、試行錯誤をしている最中です。2008年の統計では、Web動画における広告費は5億ドルですが、テレビの広告費は640億ドルです。HuluはWebの世界では非常に成功しているのですが、テレビと比べるとまだまだ小さいですね。
——ダイナミックストリーミングは動画広告にも有効ですか
Law氏:ダイナミックストリーミングは、長時間の動画をスムーズに再生するには有効な技術です。しかし、動画広告は平均すると15秒ですのでダイナミックストリーミングは有効ではないかもしれません。とはいうものの、例えばテレビ番組のようにコンテンツに広告を入れるチャンスはあるでしょう。この場合でも、ユーザにとって動画が見やすくなければ、広告からの収益は上がりません。
太田氏:動画配信ビジネスは、今後も広告モデルと課金モデルの両方で成り立っていくと思っています。2つとも考えは一緒です。広告モデルでも課金モデルでも、良い体験ができなければお客様は離れます。どんなビジネスモデルであっても、良い体験は絶対に必要というわけです。
《RBB TODAY》
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