【インタビュー】集約性能/将来性/運用性/グリーン化を強化——次世代クラウドを担う富士通BX900
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BX900は、4月に発表したPRIMERGY RX200 S5/RX300 S5シリーズに続いて富士通のグローバル戦略製品の第2弾となるものだが、富士通のクラウド戦略、グローバル製品戦略のなかでどのような位置づけになるのか。同社 プラットフォームビジネス推進本部 ビジネス企画統括部 統括部長 兼 第一サーバ事業部 プロジェクト部長の武居正善氏とプラットフォームビジネス推進本部 PRIMERGYビジネス推進統括部 プロジェクト部長(ブレード担当)田中豊久氏に、製品の特徴や戦略的意味を聞いた。
富士通は、4月に新しいRX200 S5/RX300 S5シリーズを発表したときに、ブレードサーバの設計から供給までをグローバルに展開し、富士通グループでのx86サーバのグローバル市場シェアを最終的に10%まで押し上げようという戦略を発表している。そのため、設計拠点をドイツに集約し、各国の製造ラインやサプライチェーンをつなぐといった施策を展開しているが、BX900シリーズはこの戦略のなかで、大規模なデータセンター、通信事業者、HPC分野など、数十台〜数千台規模のシステム向けの市場を狙ったブレード製品となる。
このような製品を投入する背景には、富士通の描く「クラウド」の将来像がある。現在のところ、グーグルなどが「パブリッククラウド」と呼べるサービスを展開し、普及の兆しを見せているが、本格的なクラウド時代の到来にはまだ時間がかかりそうだ。仮想化技術も現在のところは、分散された業務サーバやシステムを集約させるために利用されることが多い。このサーバの集約化の段階を経て、次にデータセンターの集約が起こるというのが、次のトレンドと富士通では見ている。データセンターの統合化が進み施設ごとの規模やサーバ台数は増えていく。このフェーズで重要となるのが、仮想化技術に加えてデータセンター内のサーバ集積度を上げられるブレードサーバだ。
そもそも仮想化やクラウドへの市場の期待は、コスト削減や運用性の向上、ビジネス変化への即応性などに向けられていることが多いという。仮想化技術が注目を浴びた当初は、Windows NT、2000といったレガシーシステムの集約や延命、開発環境の集約に使われることが多かったが、現在では新規システム、業務システム環境の仮想化のニーズの高まりが市場からも感じられるとの認識でいるそうだ。
企業のCEOやCIOといった人々は、本来、ITシステムを導入したいのではなく、業務を効率化したい、コストダウンさせたい、といったことが目的のはずであり、ITの導入やクラウドの利用はその手段でしかない。そのうえで期待される仮想化の要件を考えると、ITシステムによるコスト削減、運用性、中長期での継続性などが重要であり、企業経営の延長にあるデータセンターの仮想化統合には、サーバの集積率、管理業務の効率化、そして低消費電力(グリーン化)のプラットフォームをいかに提供できるかにかかってくるという。
今回発表となったBX900シリーズは、以上のようなデータセンター統合やこれから訪れるであろうクラウド時代に対応すべく開発された。新製品の強化ポイントは「集約性能」「将来性」「運用性」「グリーン化」の4つだ。集約性能については、BX900の1シャーシは10Uサイズのものだが、これに18スロットのモジュールが搭載できる。一般的なブレードサーバの14〜16スロット搭載に比べ、画期的な増加ではないという意見もありそうだが、性能比でいえば2004年モデルの同社1Uラック型サーバなら230台分をBX900の1シャーシでまかなえる計算になる。
また、従来のブレードサーバの場合、集積度が高くても消費電力も比例的に増えていたので、通常のラックにブレードのシャーシが入るとフル実装できないということもあったが、BX900は後で述べるような技術、制御により従来の同社1Uラック型サーバと比較して消費電力で40%ダウンを実現しているという。
「将来性」というのは、今後進むと見られるデータセンターの集約に対応するため、今後5〜7年程度の実用性能を考えた設計がなされていることを指す。サーバブレード本体(PRIMERGY BX920 S1)がインテルXeonプロセッサー5500番台の最新プロセッサーを搭載し、高速処理、仮想化運用、低消費電力などの面で最先端をいく機種ではあるが、シャーシのミッドプレーンは6.4Tbpsという業界最高クラスのスループットを持っている。新開発の10Gbpsのイーサネットスイッチ(26ポート)も内蔵しており、独自のワンチップLSIによりレイテンシーが300ns、消費電力が40W以下に抑えられている。また、InfiniBand(40Gbps)や8Gbpsまでのファイバーチャネルなどに対応するなど、中長期的にスペックが見劣りしにくいシステム構成をとっている。
「運用性」は統合管理ソフトウェアと、状態などの可視化を強化することで確保する戦略だ。「ServerView Resource Coordinator VE」がその要の運用管理ミドルウェアとして発表されている。この製品については、富士通 プラットフォームソフトウェア事業本部 第二プラットフォームソフトウェア事業部 事業部長の藤原隆氏が、デモを交えて説明してくれた。
Resource Coordinator VEの特徴は、まず、サーバ、ストレージ、ネットワークなどの最新状況を動的に把握できるということだ。リソース配置など動的な制御をしているような場合でも、サーバ構成を含めた状態を可視化できる。そして、物理環境、仮想化環境が混在していても一元的に表示、管理することができる。
管理画面は写真のように、シャーシの各スロットのイメージでどのブレードサーバがどの仮想OS(仮想サーバ)を動かしているのかがわかるようになっている。画面で、横の行が物理サーバに対応し、それぞれの縦の列が稼働している仮想サーバ(業務サービス)に対応する。どのようなアプリケーションが動いているのかも把握できる。仮想サーバのサービス停止もリモートで操作でき、さらにそのサービスを別の仮想サーバに集約させたりすることも可能だ。
物理サーバに接続された内蔵ストレージユニットの状態もモニタできる。外部ストレージと接続させる場合は、別の外部ストレージの管理ソフトを使用することにより、内蔵ストレージと同様にモニタできる。
ネットワークの可視化は、文字どおり画面にネットワーク図のようなものを表示してくれる。この図も物理サーバで稼働している仮想サーバの状態と、仮想スイッチがどのようにつながっているのか、またシャーシの物理スイッチのどのチャネルと接続されているのかなどがわかるようになっている。内部の仮想スイッチとの接続がわかるため、たとえば、LANケーブルのどこかで断線その他トラブルが発生したとしても、物理サーバのどのサービス(仮想サーバ)が影響を受けるかがすぐに判断できる。
この運用管理ミドルウェアは、ブレード全体の状況が統合的に把握できるため、細かい運用制御も可能になっている。仮想サーバの配置を動的に変更したり最適化できることもそのひとつだが、電源制御も自動化できる。日次、月次での稼働状況が把握できれば、自動運転による運用の最適化が可能だ。たとえば、稼働率の低い時間帯には仮想サーバのサービスを集約させ、不要な物理サーバの電源を落とすといったことができるという。
Resource Coordinator VEの機能と直接関係はないが、運用性に関わる機能として、BX900シャーシには、大型のLCDが搭載されており、保守情報、ステータス情報などが表示される。これは、データセンターなどでリモート操作、メンテナンスを行う際に、現場でコンソールをつながなくても一定の情報が得られるようになっている。省エネについても、6個あるシャーシ本体の冷却ファンは個別に制御可能だそうだ。
なお、BX900シリーズはServerView Resource Coordinator VEとともに、14日より有楽町の東京国際フォーラムにて開催される富士通フォーラム2009の会場で、実機とデモが見られるとのことだ。
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