インテル、Atomベースで拡大するMoblinエコシステムとコア技術を解説
エンタープライズ
その他
注目記事

そもそもインテルがMoblinプロジェクトを立ち上げたのは2007年後半。MoblinベースのMIDが発売されたのは2008年前半だが、北米のみの発売で国内では登場しなかった。このころからUIの重要性が注目された。インテルがClutterの技術を持つOpenedhand社を買収したのも2008年後半だ。
東京・秋葉原で開催された開発者向けの「Moblinセミナー」に登場したインテル ソフトウェア&サービス統括部部長の池井満氏は「PCのデスクトップですぐに利用できる技術を、携帯端末で実現しようというインテルのもともとの考えがあり、それには低消費電力でインターネットを利用できるパフォーマンス、ソフトウェアの互換性、常時接続可能な接続性(ワイヤレス)が必要だった。これらを実現できるような端末として目指したのはMIDのはじまりだ」とMID開始のいきさつを説明した。
しかし、当時のLinuxを見たときには、いくつかの問題があった。池井氏によると、
・標準のLinuxのデスクトップUIのGNOMEやKDEは、どちらかというと経験のあるコンピュータユーザーに向いている。
・標準のPC Linuxに書かれているアプリケーションGUIは、主な入力がタッチスクリーンに対応していないケースが多く、かつMIDは横長(800×480)のためブラウザが使いにくい。
・MIDは一般的にはメモリ512MB、フラッシュが4〜8GBなので、一般的なディストリビューションに使うにはメモリやディスクの使用量が大きすぎる。
・電力効率はあまり注意がはらわれていない。最適化されていない。
これらを解決するために立ち上げたのがMoblinプロジェクトだ。
「MoblinはMIDからはじまっていろんな分野に展開しようとしている。我々がLinuxを使って小型の端末に最適化しようと考えたときに、ほかのエリア、つまりネットブック、自動車などそれぞれが全く異なるOSを使っている。これは言いすぎかもしれないが、同じLinuxを使っていてもバイナリーの互換がなかったりなどという状態だ。我々PC側からきた人間から見ると全部一緒にすることはできないまでも、これらを共通にできるようなフレームワークができないか、というのがMoblinの狙い。それによって、同じ携帯電話のなかでも違う機種に使えるかもしれないし、違う音楽プレーヤに使えるかもしれないし、それを考えて定義していかなくてはいけない」(池井氏)。
池井氏が示したMoblinのアーキテクチャは下の図のようなものだ。カーネル、アプリケーションサービス、UIサービス、UIと4つのレイヤーに分類される。インテルはComms Services、Internet Servicesなどオープンソースのプロジェクトを使い、UIではQT、GTK+のほかにClutterを進めている。Clutterはスクリプトベースで3次元のUIを書くことができ、基本的には下のレイヤーのMoblinコアでバイナリーの互換性をとろうとしている。「ここあるようなアプリケーションサービスに準拠してバイナリーを作っていれば、基本的にどの端末でも使える」(池井氏)。
なお、池井氏は図を見せながらインテルの役割は低いレイヤーでエコシステムを支えることだとして「我々はあくまでインテルのアーキテクチャで動くバイナリーの互換を追いかけている。また、簡潔したソリューションを提供するのではなく、UIを作るためのツールなどを提供している」と話した。
Clutterについては、高速で表現力があり、可搬性のあるアニメ的なグラフィカルUIを実現するためのオープン・ソース・ライブラリとして紹介された。特徴は、2Dマルチメディアの3D環境での操作に対応、画像サポート(SVG、PNG、JPEGなど)、テキストのレイアウト(Full UTF8 Pango)、アニメーション/特殊効果、スクリプトのr低アウトや絵に目用ファイルのサポート(JSON)、WEBのレンダリング(Mozilla Gecko)、物理エンジン(Box2D)、メディアの再生(Gstreamer、Helix)、GTK、QTのサポート(GTK embed、QT embed)といった具合だ。
また、インテルは次期AtomとしてMoorestownのリリースを2010年に控えている。現在のところ、同プラットフォームでMoblinベースのMIDの開発を表明しているのは、Inventec、Quanta Computerなど5社がある。Moorestownについては別記事で紹介する。
《小板謙次》
特集
この記事の写真
/
関連ニュース
-
【ビデオニュース】Moblinセミナー開催!インテルがコア技術を紹介
エンタープライズ -
インテル、MoorestownでさらにMoblin環境を加速!
エンタープライズ -
Moblinは新しいユーザー体験を与え、ビジネスモデルを形成していく——Jim Zemlin氏
エンタープライズ -
【WIRELESS JAPAN 2009 Vol.10】クラリオン、WiMAX搭載ポータブルナビを参考出展
IT・デジタル -
【WIRELESS JAPAN 2009 Vol.7】製品対応が進むUQ WiMAX——VAIO Type Pにも内蔵モデルが!
エンタープライズ -
【ビデオニュース】インテル、次期Atom“Moorestown”のデモムービーを公開
IT・デジタル -
インテルとノキア、次世代の革新的モバイル・コンピューティングのための戦略的協力を発表
エンタープライズ -
【COMPUTEX TAIPEI 2009(Vol.23)】Timelineシリーズで次の市場を作り上げる!
IT・デジタル -
【COMPUTEX TAIPEI 2009(Vol.18)】インテル、Moblin Executive Summitを開催!Moblin v2.0 beta搭載ネットブックも
IT・デジタル -
【COMPUTEX TAIPEI 2009(Vol.16)ビデオニュース】Moblin搭載ネットブックやMIDが展示——Moblin Executive Summit
IT・デジタル -
【COMPUTEX TAIPEI 2009(Vol.15)ビデオニュース】インテル、Mobilin v2.0 Betaを紹介——Moblin Executive Summit
IT・デジタル -
【COMPUTEX TAIPEI 2009(Vol.11)ビデオニュース】台湾ASUSTeK、Moblin搭載のEee Keyboard
IT・デジタル -
インテル、Atomプロセッサー新製品を搭載した次世代端末「Moorestown」をデモ 〜 IDF基調講演
エンタープライズ -
LGエレクトロニクスとインテル、モバイル・インターネット端末(MID)の開発で協力
エンタープライズ -
【CES 2009 Vol.13】モバイル・インターネット・デバイス向け「Skype 1.0 for インテルMIDベータ版」発表
IT・デジタル