デジタルライフスタイルの変化が生む新しいUI——ワコムのペンタブに新機種登場
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まず、その新しいユーザーインターフェイス(UI)戦略がどういうものかを説明するため、同社の代表取締役社長 山田正彦氏が登壇した。山田氏によれば、コンピュータは仕事において不可欠な存在になってきたが、実生活においても生活の一部になりつつあるとして、コンピュータを使うことの価値に変化が表れてきているという。また、ブロードバンド時代では、コンピュータはネットワークにつながっていることが前提となり、さまざまなサービスやアプリケーションがそのような環境で成立するようになっている。
PC以外でも携帯電話やデジタルカメラ、デジタルテレビなどもインターネットに普通に接続する時代において、新しい「デジタルライフスタイル」へのパラダイムシフトが起きていると指摘する。コンピューティングとネットワーキングにより、さまざまなデジタル機器が、年齢、国、文化を超えて「すべての人のもの」になり、モバイル環境の整備が進み、使う場所も選ばなくなってきている。このような動きは、機器の操作を「慣れ・複雑」から「直感・容易」にするように加速している。そして、このとき重要になるのは、いかに簡単に使えるか(Simplicity)という点だという。
その理由として、PCを始めとするデジタル機器の多機能化が進むにつれて、可能性が広がりつつもそれを実現するための「多機能化の壁」が障害となることをあげた。つまり、機能が増えて使い方が複雑になってくると、使いこなしが難しくなってしまい、万人がその技術やサービスの恩恵に与れないことが問題になるという。ワコムでは、これをUIによって解決できれば、IT業界だけでなく一般社会にとってもメリットになると考えている。
ワコムは、人間の自然な入力インターフェイスとして「ペン」にこだわり、タブレット製品で独自の市場ポジションを獲得してきた企業だ。今回もこのポリシーを引き継ぎ、ペン入力にくわえ「タッチ」と「ジェスチャー」によるインターフェイスをタブレットに組み込んだ。より自然な操作や直感的な操作がペンとタッチということだ。ただし、このとき注意しなければならないのは、UIを単なる技術としてとらえてはいけないということだ。効率やプロセスにこだわるのではなく、自分らしさを表現するための感性のツールとしてとらえることが重要だという。根底に流れるのは、「人のEmotionは普遍である」という思想だと山田氏は語る。
続いて、実際のタブレット新製品の詳細のプレゼンテーションに移った。登壇者は山田社長に代わり、オペレーションズ統括 営業本部 プロダクトマーケティング部 ジェネラルマネージャ 大山和子氏だ。
市場に投入される新製品は、「Bamboo Touch」「Bamboo Pen&Touch」「Bamboo Fun Pen&Touch」「Bamboo Art Master Pen&Touch」の4機種だ。「Touch」は、複数の指によるマルチタッチ入力、ジェスチャー入力が可能な製品で、携帯することも意識したコンパクトサイズの製品だ。「Pen&Touch」はビジネスユースも考えられたマルチタッチとペン入力の両方の機能を備えた製品だ。「Fun」はデザインのプロフェッショナル指向のペン入力とマルチタッチに対応する。本体サイズも「Touch」や「Pen&Touch」よりもひとまわり大きく、グラフィックソフトで細部の描画もストレスなく可能だ。「Art Master」は「Fun」と同等な製品だが、グラフィックソフトでの描画や動画加工のためのガイドブックが付属する。
「Touch」と「Pen&Touch」は本体色が黒のみとなっており、携帯可能なサイズでおもにビジネスユースをターゲットとしている。「Fun」と「Art Master」は、グラフィックツールや画像加工ソフト、動画編集ソフトなども付属し、本体色もホワイトとシルバーが用意されている。デザイナーなどのプロユースも可能としながら、一般ユーザーがデジタルカメラの画像や動画を加工・編集したりする用途も意識している。
ワコムでは、動画投稿サイト、画像保管サービス、共有サービスが今後のデジタルライフスタイルを担うとして、これらの新シリーズによってマウスに代わる多機能入力装置としてタブレット製品の裾野を拡大する考えを持っている。
製品の機能概要を紹介したあと、ビジネスシーンとホームユースシーンを想定したデモが行われた。ビジネスシーンでは、マウスの代わりにBambooを使い、アプリケーションを開いたり、ブラウザを操作したりする実演が行われた。さらに、PowerPointやWordの編集作業もタッチとペン入力を駆使し、マウスではできない操作や機能を実現していた。たとえば、Word 2007は、校閲機能にペン入力による校正が入れられるようになっているが、その実演が行われた。WordやPowerPointに画像素材を張り付ける作業も、マウスによる矩形切り出しではなく、ペンによる自由な範囲指定が可能だ。PowerPointで作成したスライドのプレゼンでは、スライドを表示して説明しながら手書きの文字を書き込む機能が紹介された。これによって、ポイントとなる点の強調など、クリップアートのアニメーションとは違った訴求が可能になる。
ホームユースシーンでは、Google Earthのような3Dアプリケーション(サービス)をペンやジェスチャーで操作するデモのほか、デジカメの画像を編集したり、プリクラや携帯電話のカメラ画像のエフェクト機能のような加工を施したり、イラストや文字の書き込みが簡単にできることを示していた。さらに、動画編集も必要な部分の切り出しや複数素材データの接続(フェードイン・フェードアウト含む)を行い、動画投稿サイトやSNSへのアップロードまでを行うデモが行われた。
今後、デジタルライフスタイルへのシフトが進むと、ネット上に多彩なサービスが生まれてくると思われる。マウスやキーボードだけでは対応しにくいアプリケーションも増えてくるだろう。逆にいえば、手書き入力やジェスチャー入力がPCでも一般的になれば、ゲームや学習ソフト、各種登録、認証など新しいサービスの可能性も広がってくるはずだ。なお、Bambooシリーズの発売は10月3日からとなっている。価格はオープンだが、4機種の価格帯は6,980円〜20,980円前後になる見込みだ。
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