【インタビュー】モバイルでも関西の情報通信サービスを牽引──ケイ・オプティコム社長 藤野隆雄氏
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──6月に社長に就任されましたが、今までと戦略的な変更はありますか?
基本的には何もかわらない。加入者数などを拡大しながら価値を高めていく。来年はモバイルブロードバンドサービス「eoモバイル」も提供する。家庭のなかだけに限定せず、できるだけどこ行ってもブロードバンドサービスが受けられるようにする。これまでのコンセプトを少し広げたということだ。
──そのモバイル展開ですが、規模的には?
関西エリアに限定してということだが、(アクセスポイントを)3万までもっていきたい。ここまでの規模は世の中にはないわけで、かなりのインパクトを与えると思っている。来年の目玉といえる。まずは1年目には1万にもっていく。駅やコンビニにアクセスポイントを1万設けると関西全域の70%くらいのカバーになる。3万になると、それ以外のエリアにも広げることができる。
──関西の公衆無線LAN事情は?
関東はかなりエリアが充実しているが、関西は全国的にみても(エリアの)広がりが小さい。関西のユーザーはそういう恩恵を受けていないと思う。
──料金プランの例は?
我々の光ファイバーに入っていただくと315円(税込み)で接続可能という加入権がもらえる。しかも使い放題だ。ひとつのIDで利用できることも想定している。
──モバイル展開は解約の防止にもなると?
その通りだ。まだサービスを開始していないのでどの程度かは判断できないが、eo光を解約するという人は少なくなるだろう。
──光ファイバーはどのように展開していく予定ですか?加入者増も限界では?
確かに飽和状態に近くなっているという話は聞く。しかし今のところ新規の獲得数は年間16万加入で増加傾向にある。頭打ちになってしまうのはもう少し先ではないか。ADSLからの乗り換え、CATVからの乗り換え、NTTからの乗り換え、こういうものがミックスされて16万加入になっているのが現状だ。サービスを他に先駆けて打ち出していることがかなり評価されていると思う。
──CATVというのはJ:COMですか?
それだけではなく全てだ。ただ、J:COMは関西限定のお得プランを出し、これがかなり我々に近い値段になっている。J:COMからの乗り換えは少し頭打ちになってきている。
──NTT西日本に対してはどうでしょうか?ライバルではない?
いやいや、そんなことはない。マンションや集合住宅系に関してはNTT西日本の存在力が大きい。戸建てではかなりいい勝負をしており、戸建てでのシェアは4割を超えるくらいまでになっている。ディベロッパーとの包括的な契約という点から見ると、どうしても関東系が有利になってしまう。我々は関西ローカルなので、集合住宅に関してはそこがネックではある。
──顧客の囲い込み戦略では何かありますか?
今のところ、電話とインターネットをセットにすると業界最安値というのがうちのウリになっている。関西は価格反応度が高い地域だ。したがって、業界最安値という水準を維持している限り、かなり評価されると思う。当分はそれを是非とも死守していきたい。
──価格の安さは必須ですか?
関西では必須だと思う。ただ安いだけではダメだ。加えて“値打ち感”というのが必要だ。信頼性や新しいものを追加していく新規性も必要。例えば、テレビ1台ごとにSTBを置くのは面倒という意見が多かった。そういう声に応え、2台目以降はSTBなしでもBS、地上デジタルも見れる対応を行った。
──テレビに関してですが、2011年アナログ終了に向けての影響は?
最近は、テレビの申し込みが増えてきている。申し込み全体を100とすると、電話とのセット加入は80%くらいになるが、テレビの率がどんどん伸びてきている。これは、やはり2011年のアナログ停波が後押しになっていると思う。
──NTTが下り200Mbpsのサービスを開始しましたが
顧客には“高速の世界へ”という動きもあるが、我々はすでに200Mbps、1Gbpsのサービスを提供している。高速の方がいいというユーザーには一定の評価がある。NTTが200Mbpsのサービスをはじめたことで、より速い回線が一般的になってくることが見込まれるため、ますます光の良さが際立つだろう。それは、我々にとっては良いことだと思う。一方、CATVでは160Mbpsというサービスを展開しているが、上りが細いのが欠点だ。
──エリア拡大と同時にARPUをあげるという方向もあると思いますが
数値は公表していないが、ARPUを上げるための努力はしている。しかし、なかなかARPUは上がらないのが現状だ。確かにモバイルサービスがはじまることで、その分多少はARPUが上がるかもしれないが、どれだけモバイル対応の新サービスを展開できるかだろう。また、既存のインターネット接続サービスではセキュリティーサービスが、かなりARPUを上げる手段としては有効だ。
──顧客の年齢層は?
40歳前後が中心だ。戸建を所有している方だ。最近ではシルバーエイジ、60歳を超える方も増えてきており、開通時のセッティングサービスにも力を入れている。
──ECの展開で囲い込むなどの戦略は?
まだ結論がでていない。価値を上げていく上で、本当にそれが有効かどうか、もう少し見極めたいと考えている。
──法人系事業の展開についてはどうでしょうか?
回線獲得の数は増えても、1本当たりの単価が下がっている。したがって回線×単価で計算すると、だいたい横ばいだろう。これは、不景気がかなり影響していると思う。銀行の合併、コンビニの廃止など事業所そのものがなくなると、その事業所にあった回線が不要になるわけで、解約につながるという構図だ。
──データセンター事業の方は?
おかげさまでデータセンターは結構ニーズがあり、そのニーズも多様化している。本当に信頼度を要求する顧客や価格に価値をおく顧客、またイージー運用をしてほしいという顧客もいる。我々のデータセンターはそれらの要望にだいたい応えられるよう、拠点ごとに特色を持たせている。
また、ホスティング、ハウジングを中心にサービスしているが、それだけだと売上げには限界がある。企業ニーズに合うようクラウドの検討体制を立ち上げているところだ。現段階で分かっているのは、アプリケーションソフトまでフルサービスを提供するクラウドは大変だということだ。回線、データセンターというハードウェア、インフラ、そこから派生するようなクラウドでなければ特徴を活かすことはできないのではないかと思っている。世間で言われているHaaS(Hardware as a Service)とかPaaS、こういうサービスをやりながら広げていくというアプローチがベストだ。今年度中には新サービスも発表したいと考えている。
──政権が交代して影響はありそうですか?
正直、まだちょっと見えていない。特に、NTTの体制をどうしていくつもりなのか?新しい電気通信法をどうするのか?そのへんを注視しなければいけない。競争を阻害するような方向にもってかれては困る。土台となるのはインフラ設備だが、競争をないがしろにすればサービスは成り立たない。インフラとサービスを含めてトータルでの競争体制を維持するような制度にして欲しい。設備投資へのインセンティブがなくなると投資がしにくくなり、インフラがどんどん細くなっていくのは確実。それを使うサービスもインフラが有限であるということを前提に考えなければならなくなっていく。自由な発想で、設備も使うもよし、使わずにサービスを膨らませるのもよし、と選択も増えるようになるのが理想だ。それを担保するために設備投資を潤沢に行えるようなインセンティブを与えるべきだと思う。
──最近、日本企業が最近弱い印象がありますが
リーマンショックや外需依存の傾向もあるが、日本企業はそんなに弱くないと思う。かならず芽がでると思う。それには、今のアメリカのビジネスモデルから、日本独自のビジネスモデルを考えていかなければいけないと思う。
──社長にとって会社の理想の姿は?
高圧的にモノを言って言論を封鎖するようなことは嫌いだ。自由に発言できる雰囲気を作りたいと考えている。
──今後の抱負は?
前社長の田邉で100万回線目前までもっていくことができた。100万回線は当然達成可能だが、数年中に150万にもっていきたいと思っている。
《RBB TODAY》
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