【OGC 2010】ソーシャルエモーションを揺さぶるアプリを〜mixi笠原社長 基調講演
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今年の基調講演はmixiアプリで躍進を見せるmixiの笠原健治社長が登壇し「mixiのオープン化戦略」と題した講演を行いました。
ミクシィは2004年に運営開始をしたSNS。「マイミクシィ」と呼ばれる友人と一緒に楽しむというのがサービスの根幹で、ネット上で友人関係が構築されます。その構築を支援する仕組みとして「同級生」や「キーワード」などがあり、繋がった人同士で関係を深めるために「日記」や「ボイス」などの機能が提供されています。
12月末の登録者数は1858万人に対してログインユーザー数は1257万人、月間PVはPCが51.3億PV、モバイルが224.8億PVとなっています。
●mixiのオープン化
これまでは「日記」や「ボイス」などmixiが自身で開発し、提供した機能の提供のみでしたが、昨年秋からオープン化に取り組み、mixiを外部のパートナーに解放する施策を進めています。
mixiのオープン化としては、mixi内でアプリが自由に開発できる「mixiアプリ」とmixiのデータを外部から取得できる「mixi Connect」の2方向があります。mixiアプリは今期の大きな取り組みとして既にサービスインしていて、mixi Connectに関しては既に一部で使われ始めているが、来期の大きな施策として準備を進めているとのこと。
笠原氏はmixiアプリの狙いとして、ソーシャルグラフの活性化とコミュニケーションの多様化を挙げました。これまでmixiのソーシャルグラフは主に日記とコミュニティで構築されてきました。そこにアプリが加わることでコミュニケーションの軸が増えます。また、アプリは外部の開発者に解放しているため、多様な方向性が期待できます。
●リアルな友人関係に基づくmixi
オープン化という意味ではモバゲータウンや今後実施してくるであろうGREEとの対比がなされる機会か多くなっていますが、笠原氏はmixiはそれらのサイトとは根本的に異なるものだと話します。mixiが実際の知人・友人関係に基づくソーシャルグラフを基盤にしているのに対して、GREEやモバゲーはそうした基盤を持たず、ネット上で「ゲーム」を一緒に遊ぶという要素で結びついたバーチャルグラフを基盤にしたサービスとなっています。このことから、サービスの内容は近くとも、ユーザーの利用意向は全く異なるものになると笠原氏は言います。
この対比は明確で、バーチャルグラフに基づくサービスはゲームをすることで他のユーザーと繋がる一方、mixiのようなソーシャルグラフは友人とより強い関係を結ぶためにゲームを遊ぶことになります。主従関係でゲームが主にあるか、従にあるかという違いです。それにより、様々な違いが出てきます(図を参照)。そしてそれは後述するmixiアプリで成功するための秘訣にも繋がります。
●どんなアプリがヒットするのか 4つの秘訣
続いて笠原氏はヒットするmixiアプリのポイントについて話します。
まず「(1)分かりやすさ」は非常に大事です。アプリを始めるきっかけとして多いのが友人からの招待です。招待されると結構の割合で義理立てする気持ちもあり、一度はゲームをチェックするユーザーが多いようです。そうすると、分かりやすさは何よりも大事になります。「(2)ソーシャル性」は友人・知人と楽しむ仕組みです。それにより揺さぶられる気持ちがあるかも重要です。「(3)巻き込み性」は誘いたくなるゲームかどうかということです。そして「(4)継続性」は当然ながら必要です。
笠原氏は特に重要な要素を「ソーシャルエモーション」と説明します。それは、顔見知りだからこそ生まれる、嬉しい・悔しい・悲しいといったような人間的な感情のことです。ヒットしている『サンシャイン牧場』であれば、「仲のいい〜さん」だからこそ、水やりをしてくれたら嬉しく、作物を持っていかれると悔しい、そうした気持ちです。『サンシャイン牧場』では、それを牧場ニュースとして伝えて、感情を増幅させています。笠原氏はこの感情の揺さぶりを、どれだけコントロールできるかがヒットアプリのコツではないかと話していました。
最後にもうワンポイントが披露されます。笠原氏によればmixiユーザーの平均マイミク数は26人という小さなネットワークを構築していて、その90%以上が普段毎日顔を合わせているような仲の良い友達で構成されているそうです。高校生ならクラスメート、大学生ならゼミ、サークル、バイト仲間、社会人なら同僚などと、気の許せる空間が作られているのがmixiの特徴です。1800万人以上の膨大な数のユーザーのいるサービスという理解ではなく、このような小さな空間が無数に存在するサービスという理解がmixiアプリでの成功の秘訣となりそうです。
個々の空間の繋がりの強さこそがmixiの強みです。開発者視点で見ると、マイミク内でのみ一緒に遊べるゲームよりは、1800万人の誰とでも一緒に遊べるゲームの方がユーザー数が集まりやすくて安心です。平均26人のマイミクでは同じゲームを遊んでいる人がいる方が稀かもしれません。しかしながら笠原氏はそうではないと言います。ユーザーが望むのは知らない人との繋がりではなく、気を許せる空間を共有することで、もしそこに寂しさを感じたならば招待などでゲームのプレイヤーを増やす努力をすると言います。mixiアプリで最もユーザーを抱える『サンシャイン牧場』もマイミク同士でしか一緒には遊べないゲームです。
●開発者向けビジネス支援
mixiではmixiアプリのビジネス支援も行っています。
「mixiアドプログラム」では、mixiアプリ上に広告を掲載し、表示回数に応じて金額を支払います。「mixiペイメントプログラム」では課金システムを提供し、決済手数料を除いた8割を開発者に提供するというもの。これらで既に月に4000〜5000万円の収益を上げているアプリが複数あり、今後は年間10億円を稼ぐアプリも数多く出てくると予測しました。
また笠原氏は課金のトレンドについて、これまでのオンラインゲームなどではアバターなどの個人を着飾るための課金が中心なっていたのが、今後はマイミクと一緒に遊ぶために購入する課金が増えていくのではないかと予測しました。他人へのプレゼントとしてアイテムを買う、もしくはアイテムを買うことでマイミクみんなに恩恵があるようなスタイルが主流になっていくのではということです。
笠原氏はmixiについて、それぞれの学校・職場など無数の小規模なネットワークが膨大に存在するSNSと表現。それらの局所で流行しているゲームは幾つか出てきたが、まだ全体で流行るようなゲームはまだ無いとコメント。これからそういうゲームが出てくるのを期待していると述べ、基調講演を終えました。(インサイド Mr.Cube)
《RBB TODAY》
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