【テクニカルレポート】統合型データ保護のメリットとは?~高コストな従来型アプローチとの比較~前編
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・高可用性
・ディザスタ・リカバリ(災害復旧)
・ビジネス継続性
・アーカイブとコンプライアンス
これらの機能を確保するために、多くの企業がいくつものソリューションに頼っているようです。高可用性、バックアップ/リストア、ビジネス継続性、アーカイブといった目的別に、それぞれ異なるベンダーを選択している企業もあります。そのために管理が著しく複雑化し、莫大な出費を強いられる結果になっています。
統合型データ保護戦略は、重要なデータ保護機能をストレージに集約することで、このような複雑性を緩和し、より挑戦的なRecovery Point Objective(RPO:目標復旧時点)とRecovery Time Objective(RTO:目標復旧時間)を設定可能にすると同時に、コストを削減し、管理に必要な労力を最小化します。
この記事では、統合型データ保護について概要を説明します。新規あるいは変更されたファイルの識別、データの移動と保存といった観点から、従来のデータ保護アプローチとプロセス・フローを比較します。さらに、基幹アプリケーションにおける統合型データ保護の価値についても説明します。
■統合型データ保護とは?
従来型のアプローチによるデータ保護は、コストが高く、ストレージ・システムの機能をフルに活用することができません。サーバOSの最上位にあるデータ保護アプリケーションが、データをセカンダリ・ストレージにコピーするだけです。これらのアプリケーションは、基盤となるストレージに組み込まれた特殊なデータ・キャプチャ機能や移動機能を利用しないので、動作が遅く、結果的にRPOやRTOが制限され、他のアクティビティに影響を及ぼす可能性があります。
統合型データ保護は、より効率的なアプローチを採用しており、データを別の目的にも使用できるフォーマットのまま保持することが可能です。統合型データ保護では、ストレージ・システムに高可用性、バックアップ、コンプライアンス機能が組み込まれています。すべての機能が連携するので、データ保護のさまざまな目的や要件に応じて、同じデータ・セットを使用できます。このアプローチには、次のような利点があります。
・重要なデータ保護機能がすべて1つのプロバイダから提供されるので、実装と運用中の管理が容易になると同時に、相互接続性が向上します。
・ストレージ機能をフル活用し、パフォーマンスと機能性の向上を実現します。
・データ・コピーを別のタスクに利用することができ、迅速な投資回収が可能です。
データ保護のフローを検証すると、この違いがはっきりと分かります。
■データ保護アプローチの比較
ほとんどのデータ保護動作(バックアップ、レプリケーション、アーカイブ)には、次のような共通のアクティビティがあります。
・データの変更/新しいデータの識別
・データの移動
・データの保存
■変更/新規データの識別
バックアップなどの従来型のデータ保護処理では、データの移動を開始する前に、新しいファイルや変更されたファイルをすべて識別する必要があります。従来型のバックアップ・プロセスでは、これが長い時間を要するファイル収集プロセスとなり、「ファイル・システム・ウォーク(ファイル識別処理)」を招くことになります。各ファイルのタイムスタンプを最新のバックアップ日時と比較し、変更のあったファイルを識別し、ファイル・カタログを作成してからでないと、実際のデータ移動を実行できません。非常に大容量のファイルシステムでは、このプロセスに数十分、あるいは数時間を要する場合があります。
統合型データ保護では、ストレージ・システムに組み込まれたSnapshotテクノロジを利用します。Snapshotは、前回のSnapshotを実行したのちに、変更のあったデータ・ブロック(ファイル全体ではなく)へのポインタのインデックスを即時にキャプチャすることで、時間のかかるプロセスを回避します。そのため、データ移動を非常にすばやく開始することが可能です。
■データの移動
データを移動する機能は、データを識別する機能と密接な関係があります。従来のテクノロジでは、単純に変更されたファイルを識別して変更箇所が1ブロックしかない場合でもファイル全体をコピーするため、ネットワーク帯域幅とセカンダリ・ストレージを大幅に消費します(従来の方式で消費されるストレージ容量を減らすために、ターゲットでの重複排除が広く行われるようになりましたが、RPOやRTOの改善には役立っていません)。
合型データ保護では、スナップショット・プロセスでキャプチャされたポインタ・マップと変更されたブロックだけが転送されるので、スピードと効率が高まります。ネットワーク帯域幅の観点では、バックアップを即時にオフサイトに複製する必要がある企業で、コストの高いWAN接続のオーバーヘッドを最小化しなければならない場合、この方式が特に有効です(19.4 MBpsを提供するOC-3の場合、コストは年間約2万7千ドルに上ります)。
■データの保存
データの保存に関しては、ほとんどのソリューションが独自のフォーマットを利用しているため、リカバリ以外の目的にデータを使用するのは困難もしくは不可能です。バックアップを必ずテープに保存していた時代には、バックアップ・アプリケーションがテープ・チェンジャやドライブと連動しなければならなかったため、この点についてはそれほど意識されませんでした。
統合型データ保護では、オープン・ファイルシステム・フォーマットでデータ・コピーを保存する必要があります。そのため、次のような利点が得られます。
・ユーザが管理者の手を借りずに、簡単に自分のファイルを見つけ出して回復することができます。
・開発/テスト、データ・マイニング、ディザスタ・リカバリ、コンプライアンスなどの目的でバックアップ・データを活用できます。
従来型のデータ保護では、バックアップ・データの変更によってリカバリ不能に陥る可能性を抑えることが目標とされていました。統合型のデータ保護では、バックアップ・データは読み取り専用で、読み書き処理から切り離された状態にあることが保証されます。
たとえば、NetApp FlexCloneテクノロジを使用すると、データ・セット全体をコピーせずにセカンダリのデータ・コピーを作成し、これを他の目的に利用することができます。これらの書き込み可能な「シン・クローン」は、変更があった場合にしか余分なストレージ・スペースを消費しません。したがって、これらのクローンは非常にスペース効率が高く、ディスクベースのバックアップやレプリケーションに使用しているセカンダリ・ストレージを十分に活用することが可能になります。
保存したデータを眠らせておく必要はありません。統合型データ保護では、バックアップ・イメージをディスクやテープに保存したまま埃をかぶらせておく必要はなく、これらのイメージを他の業務に活用し、データ保護チェーンをさらに拡大することが可能です。バックアップ・イメージをディザスタ・リカバリ用に複製した後、コンプライアンス目的でロックするといった処理が可能ですが、その際、それぞれ個別のアプリケーションを管理したり、複数のプロセスを実行してサーバ・リソースを大量に消費し、ビジネス・アプリケーションのパフォーマンスに悪影響を及ぼしたりすることもありません。
執筆者:敬称略
David A. Chapa
バックアップ/リカバリ・ソリューション担当ディレクター、NetApp
Davidは業界で20年以上の経験を有し、データ可用性、ディザスタ・リカバリ、ビジネス回復プラクティスを専門としています。『Implementing Backup and Recovery: The Readiness Guide for the Enterprise』の共著者であり、バックアップとリカバリ、ディザスタ・リカバリ、ビジネス回復に関する第一人者と見なされています。
Nathan Moffitt
バックアップ/リカバリ・ソリューション担当シニア・マネージャー、NetApp
NathanはIT業界で13年以上の経験があり、サーバ、ストレージ、ネットワーキング、データ保護テクノロジに取り組んできました。世界中のFortune 500企業で採用されているソリューションの設計と実装に携わるかたわら、データ保護と共有ファイルシステムについて、さまざまな記事を執筆しています。
※同記事はネットアップ(NetApp)の発行する「Tech OnTap」の転載記事である
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