【テクニカルレポート】Microsoftアプリケーションによる”全体の”仮想化に向けて~後編
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
共同ソリューションを設計する際、私たちが主に目標としていたことの1つに、明確な設計のガイドラインを作成し、同時に十分な柔軟性を持たせて、各環境の要件に応じたカスタム・ソリューションを構築できるようにするということがありました。このセクションは、Microsoftアプリケーションを完全な仮想環境に移行する際に、読者の方が疑問に思うであろう主要な質問の一部に答える形で構成されています。
どのストレージ・プロトコルを選択すべきか?このソリューションがもたらす優れた利点の1つは、NetAppストレージを含むすべてのソリューションと同じく、使用する環境に適した任意のストレージ・プロトコルを自由に選択できる点です。私たちは、FC、iSCSI、NFSの各プロトコルについて、対応するアーキテクチャ・ガイドラインを提供しています。NetAppとVMwareの共同パフォーマンス調査(英語)によると、各プロトコル間のパフォーマンスの差は10%以内であることが証明されています。そのため、パフォーマンスに基づいて、あるプロトコルが他よりも優れていると判断することはできません。
すでにFC(ファイバ・チャネル)インフラを導入済みの場合は、そのインフラを引き続き使用できます。まだFCインフラを導入していない場合は、NFSやiSCSIを使用することで簡単にストレージのニーズが満たされます。個人的には、必要となるコスト(資本コストと運用コスト)、管理性、スケーラビリティ、柔軟性の点から各プロトコルについて検討し、それぞれのニーズに最も適したプロトコルを選択することをお勧めします(後述のストレージ・レイアウトに関するセクションで、より具体的なガイドラインをいくつか紹介します)。
どのNetAppソフトウェアが必要になるのか?次の4つのNetApp製品からなる、コア・セットの使用を強く推奨します。
・Rapid Cloning Utility (RCU):RCUはvCenterの無償プラグインで、仮想サーバとデスクトップを迅速にスペース効率よくプロビジョニングする機能を提供します。RCUには、NetApp FlexClone、データストアの重複排除管理機能、データストアのプロビジョニング機能、サイズ変更機能、削除機能が活用されています。
・Virtual Storage Console (VSC): VSCはvCenterの無償プラグインであり、VMwareに関連するNetApp固有のストレージ側属性について、vCenter内から直接管理と監視を実行できます。
・SnapManager for Virtual Infrastructure:SMVIは統合型データ保護ソリューションです。仮想マシンのバックアップとリカバリのほか、DRに対応した複製機能を提供します。SMVIではNetApp Snapshot機能のほかに、VMバックアップ用にVMware Snapshotを作成するオプションも使用できます。
・SANScreen VMInsight:このvCenterのプラグインは、仮想ストレージと物理ストレージ間のマッピング(vmdk、データストア、LUN、ストレージ・ファブリック)について、監視機能と幅広いレポート機能を提供します。環境の管理とトラブルシューティングに役立ちます。
さらに、Exchangeのメールボックス・サーバ、SQL Server、SharePointのデータベース・サーバとインデックス・サーバをホストするゲストVM内に、NetApp SnapDriveと各アプリケーション対応のSnapManager製品をインストールしておけば、データベースやログなのバックアップやリストアを行う際に、アプリケーションとの整合性を保つこともできます((バックアップとDRについては、以降で詳しく説明します)。
さまざまなデータ・コンポーネントに対して、どのストレージ・レイアウトを使用すべきか?どのストレージ・プロトコルを選択するかは、ストレージ・レイアウトを決定する一因にもなります。ここでは、選択可能なすべてのストレージ・レイアウトとプロトコルについて取り上げるのではなく、最も柔軟性の高いIPベースのストレージ・レイアウト・オプションの中から、1つに絞って説明することにします。インフラを一から導入する場合や、既存のインフラでこのアプローチに対応できる場合は、図2に示すNFSとiSCSIを組み合わせたレイアウトを使用するようご提案します。FCやiSCSIのレイアウトについては、TR-3785を参照してください(すべてのケースのアプローチと、その背景となるロジックは、大部分が共通です)。
大まかなガイドラインは次のとおりです。
・ゲスト・ファイルシステムのアライメントは、パフォーマンスを最適化するうえできわめて重要です。 NetApp TR-3747(英語)では、仮想環境におけるファイルシステムのアライメントに関するベスト・プラクティスを紹介しています
・NFSデータストア上に、NetApp RCUを使用してVMを作成します
・VM(仮想マシン)のvswapファイルと一時ファイル/ページ・ファイルを格納するNFSデータストアを分け、NetAppストレージ・システムの別のボリュームでホストします(一時データを分離すると、NetApp Snapshotコピーの作成時間が短縮され、ストレージ効率も向上します)
・NetApp SnapDriveソフトウェア(ゲストOS上にバージョン6.2以上のインストールが必須)を使用して、iSCSI Raw Device Mapping(RDM)LUNをゲストVMの内部に直接作成して接続し、そこにアプリケーション・データ(データベース、ログなど)を配置します
・ゲストVM内に各アプリケーションに対応するSnapManagerソフトウェアをインストールし、整合性のあるバックアップときめ細かなリストアが行えるようにします
Microsoft iSCSIソフトウェア・イニシエータを使用してゲストと接続されたLUNでは、このアプローチの使用をお勧めします。現在または将来的に災害対策としてVMware vCenter Site Recovery Managerを実装する予定がある場合、アプリケーション・データがiSCSI RDM上に配置されていると、フェイルオーバー/フェイルバック・プロセスが大幅に簡易化され、VMwareからもよりよいサポートが受けられるからです。また、VMware vCenter Site Recovery Managerを利用する予定がある場合は、すべてのデータストアとRDM LUNを同一のストレージ・システム上に配置してください。
SnapDrive(および上記で推奨したiSCSI RDM、またはiSCSIソフトウェア・イニシエータを使用してゲストと接続されたRDM)の利点を活用するため、各アプリケーションに対応するSnapManagerツールを使用してExchange、SQL Server、SharePointデータをバックアップする場合は、RDM(FC RDM、上記で推奨したiSCSI RDM、またはMicrosoft iSCSIソフトウェア・イニシエータを使用してゲストと接続されたLUN)を使用します。
何らかの理由で、アプリケーション・データを格納するためにVMFSデータストアやNFSデータストアを使用して環境を構成しなければならない場合、バックアップにはSMVIを使用するのがベストの選択です。SMVIは、3つのアプリケーションすべてについて整合性のあるバックアップを実行できますが、いくつかの点で制約があります。現在、VMware VSS Requestorの制約のために、SMVIではトランザクション・ログの切り捨てやバックアップ検証を自動的に実行できません。いずれの処理も、手動で実行する必要があります。また、VMware VSS Requestorは現在、Windows Server 2008を実行するVMのアプリケーション整合性をサポートしていません。そのため、このソリューションを使用できるのは、トランザクションレベルのきめ細かなリストアが要求されないシナリオ(SQL Serverのポイントインタイム・リストアなど)や、バックアップ後に手動でバックアップ検証を実行できるシナリオのほか、シンプルなリカバリ・モデルのSQL Serverデータベース(SQL Serverが自動ログ切り捨て機能を提供)など、代替手段を通じてトランザクション・ログの切り捨てを実行できるシナリオに限られます。
アプリケーション整合性のあるバックアップとリカバリを実行するにはどうすればよいのか?Microsoftアプリケーションに関してアプリケーション整合性のあるバックアップを実行する最もよい方法は、必要に応じて、各VMのゲストOS内にSnapDriveと該当するSnapManager製品(SnapManager for Microsoft Exchange、SnapManager for Microsoft SQL Server、SnapManager for Microsoft SharePoint Server)をインストールすることです。これらのツールには、アプリケーション整合性のあるバックアップ、バックアップの自動検証、きめ細かなリストアを実行するための固有の機能が備わっています。たとえば、SnapManager for Exchangeには、単一のメールボックスをリカバリする機能があります。
DRを実装する最もよい方法は何か? NetApp SMVIとアプリケーション対応のSnapManager製品を使用すれば、VMとホストされたMicrosoftアプリケーションについて、複製やディザスタ・リカバリを実行できます。VMware vCenter Site Recovery Managerをこれらの製品と併用することで、ディザスタ・リカバリを完全に自動化できます。このソリューションを使用すると、Tech OnTapの記事『 VMware Site Recovery Managerによるシンプルな災害復旧の対策』で紹介したような複雑な環境でも、フェイルオーバー・ワークフローを完全に自動化することが可能です。
マルチパスの実装はどうすればよいのか? 環境の安定性強化を目指すなら、マルチパスを実装する必要があります。FCベースのアーキテクチャであれば、Asymmetric Logical Unit Access(ALUA)プロトコルとRR PSP(ラウンドロビン・パス選択ポリシー)の使用をお勧めします。ALUAを使用すると、SCSIターゲット・デバイスとターゲット・ポートの間で自動的にパスのネゴシエーションが実行され、動的な再構築が可能になります。ESXホストではALUAがデフォルトで有効です。NetAppストレージ・アレイでは、ALUAをイニシエータ・グループで有効にする必要があります。そうすることで、より動的な、プラグアンドプレイと同様のSANアーキテクチャが実現します。RR PSPは、パスの冗長化と帯域幅の集約機能を提供します。ゲストVM内にはDSM(Device-Specific Module)が必要ない点に注意してください。
iSCSIについては、vSphereによりマルチパスに対応して、ESXホスト・レベルで複数のTCPセッションがサポートされるようになりました。ユーザは2つのVMkernelポートを設定し、ラウンドロビンPSPを使用してプラグアンドプレイ・マルチパスを実現できます。この方法では複数のアクティブ・パスが提供され、ゲストVM内にDSMは必要ありません。また、従来のネットワーク設計や、マルチスイッチ・トランキングによるネットワーク設計も使用できます。詳細はTR-3749(英語)でご確認ください。
NFSでマルチパスを実現するには、従来のスイッチとクロススタック・スイッチを使用できます。詳細については NetApp TR 3749(英語)をご覧ください。
Cisco Nexus 10GbE(10ギガビット・イーサネット)を使用する場合、ESXホスト上で必要となる10GbEポートは2つだけです。CiscoのvPC(仮想ポート・チャネル)機能により、冗長性、フォールト・トレランス、セキュリィティが提供されます。
重複排除とシン・プロビジョニングの利用にメリットはあるのか? この設定がもたらす主な利点の1つは、選択するプロトコルにかかわらずNetAppのStorage Efficiency機能(FlexClone、重複排除、シン・プロビジョニング)を活用して、必要なストレージ・スペースを大幅に削減できるということです。
一般的な仮想環境では、同じOSやアプリケーションのバイナリ・コピーが異なるVM内にいくつも存在し、貴重な共有ストレージ上で大量のスペースを消費しています。NetAppのStorage Efficiency機能を使用すれば、プライマリ・ストレージで50%を上回るストレージ・スペース削減を達成できます。図5は、共同ソリューション検証の際に、92%のスペース削減率が達成されたことを示しています。
環境のサイジングはどうすればよいのか? 環境のサイジングには、VMwareデータストア(ゲストOS、アプリケーション・バイナリ、VMのページ・ファイル、vswapファイルを含む)のサイジングと、アプリケーションのデータベースやログをホストするLUNのサイジングの両方が含まれます。NetAppは、各環境のサイズを適切に設定するサイジング・ツールを開発しました。担当のNetAppシステム・エンジニアまたは代理店が、お客様のサイトの次の情報に基づいて、環境のサイジングに関するアドバイスを行うことも可能です。
・仮想化対象のアプリケーション・サーバ数
・Microsoftアプリケーションの数と種類
・さまざまなデータ・コンポーネントの容量要件(予想される増加率を含む)
・読み取り/書き込み処理やランダム/シーケンシャル処理の割合を含めたパフォーマンス要件
・SQL Serverデータベースについては、データベースの数と種類(OLTP、DSS、混合)
・Exchangeサーバについては、メールボックスやユーザ・プロファイルの数とサイズ
・SharePointサーバについては、ユーザ数、ユーザあたりのスペース要件、同時ユーザの割合
・バックアップ/リストア/DRの要件
仮想化されたMicrosoftアプリケーション環境のパフォーマンス検証を行うにはどうすればよいか?Microsoftとサードパーティ・ベンダーから、物理環境の検証用に提供されているパフォーマンス検証のツール・セットを流用できます。こうしたツールを使うと、パフォーマンスがMicrosoftのガイドラインに合致しているかどうかを確認できます。この共同ソリューションのテストでは、Microsoft Exchange Load Generator、Microsoft SQLIOSimユーティリティ、AvePoint SharePoint Test Environment CreatorとAvePoint SharePoint Usage Simulatorを使用してパフォーマンスを検証しました。これらのアプリケーションをすべて同時に実行し、複数回の負荷テストを実施しました。アプリケーション別のパフォーマンス検証方法と合格基準については、TR-3785で説明しています。テストの結果、次のことがわかりました。
・VM内またはESXホスト上に、CPUやメモリのボトルネックは見られない
・ストレージ上に、I/O、CPU、ディスクのボトルネックは見られない
・読み取りや書き込みによる遅延はすべて、公開済みのMicrosoftガイドラインを十分満たしている
・ネットワークのボトルネックは発生しない
■まとめ
データ・センターの完全な仮想化という目標を達成するにあたって、Microsoftアプリケーションの仮想化プロセスを理解するために、この記事で紹介した情報がお役に立てれば幸いです。Microsoftアプリケーション仮想化のために開発した共同ソリューションについて、この記事で紹介できたのはほんの一部にすぎません。のソリューションの実装に必要なすべての情報を提供するため、 詳細なソリューション・ガイドを用意しました。このガイドでは、NetApp、VMware、Ciscoが行った入念な作業に基づいて、構成の詳細を細部に至るまで説明しています。ガイドは、FC、iSCSI、NFSの実装に対応しています。
■執筆者(敬省略)
Abhinav Joshi
サーバ/デスクトップ仮想化担当リファレンス・アーキテクト
NetApp
AbhinavがNetAppに入社したのは2008年のことです。当時すでに、データ・センターの統合と仮想化に関して9年を超える経験がありました。現在、スケーラブルなリファレンス・アーキテクチャの開発のほか、NetAppの仮想ストレージとデータ保護ソリューション、VMwareの仮想化テクノロジ、CiscoのUnified Computing Systemとネットワーキング・テクノロジをセキュアに統合するためのベスト・プラクティスの作成を担当し、お客様の問題解決やコスト削減を支援しています。また入社以来、さまざまな資料の執筆にもあたっており、この記事で紹介しているソリューション・ガイドの多くの作成に、筆者または関係者として貢献しています。
※同記事はネットアップ(NetApp)の発行する「Tech OnTap」の転載記事である
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