【インタビュー】今後は固定もターゲットに!いよいよ攻めに転じるWiMAX……UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏
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●2010年度末までに80万のWiMAXユーザーを確保できそうな勢い
――UQ WiMAXサービスの現状について教えてください。
おかげさまで、11月には契約純増数で6万1,900件となり、イー・モバイルを抜いて業界4位に浮上しました。現時点でWiMAXサービスの利用は43万5,200件で、年度末の目標である80万件をクリアできそうな勢いです。特に今回のモバイルアワードで嬉しかった点は、「スピード」と「料金」の両方でユーザーの皆様に評価していただけたことですね。実際に店頭キャンペーンでも「この速さで、この安さ」と宣伝していますから、それを認めていただけたものと感じています。最速40Mbpsで、年間パスポート料金が3,880円(11月からの月額定額プラン)になり、かなり安くなっています。ユーザー数が急増した背景には、料金プランやキャンペーン効果も大きかったのでしょう。ただし、これまでWiMAXサービスで指摘されていた唯一の弱点に、提供エリアの問題がありました。これについては11月末現在で基地局を1万2,367局(うち首都圏エリアは5,000局)まで増設しています。東名阪+全国の県庁所在地、分かりやすく言うと全国の政令指定都市では人口90%以上をカバーしている状況です。年末までには1万3,500局、そして来年2011年3月末には1万5,000局まで増やす予定です。いまやエリアの問題も解消されつつあり、1年前とは全く異なる状況になっています。
――MVNOについてはいかがでしょうか?
WiMAXを展開するMVNOも47社にのぼり(11月までの申込数)、さまざまなオペレーターが出てきています。たとえば主要MVNOとして、通信事業者やISPはもちろん、家電量販店や商社も参入しています。家電量販店がWiMAXを拡販することで、一回の売り切りではなく、毎月のレベニューが入る新しいビジネスモデルも確立しました。これから、さらにWiMAX+スマートフォン、タブレットといった形のコンシューマー販売が増えてくると思います。
――その他法人向け戦略の展開についてはいかがでしょうか?
法人向けの戦略についてですが、UQはコンシューマーのみを対象に展開しています。法人については親会社のKDDIが担当していく方針です。ただし我々はコンシューマーに近いSOHOやホームオフィス系などの個人事業や小企業についてはターゲットとして含めてもよいだろうと判断しています。法人については、クラウドコンピューティングの進展ともに、WiMAXの重要性がクローズアップされるでしょう。WiMAXは、いつでもどこでも高速で利用できることが大きな特徴です。クラウドコンピューティングの世界は、ネットの向こう側からデータをとるため、アクセス速度が速く、どこでも使えなければなりません。そう考えると、WiMAXはクラウドコンピューティングに最適な通信手段と言えます。
●内部と外部で使える! モバイルコンバージェンスを実現するWiMAX
――WiMAXの強みやメリットについては?
WiMAXの一番の強みは広帯域であり、光回線やケーブル回線と同等品質で外でも利用できる点です。最近では大手ISPもADSL/FTTHの代替としてWiMAXを提案するようになってきました。ADSL/FTTHだと固定通信のみに用途が限定されますが、WiMAXであれば家庭内の固定通信だけではなく、外でも移動通信として使えます。つまりブロードバンドを外に持ち出せる感覚で利用できるということです。そういう意味で、既存業者も新たな顧客を獲得できる流れになってきました。もうひとつWiMAXが強い理由には、通信機器の豊富さが挙げられます。いわゆるデータ通信カードから、モバイルルータ、さらにはWiMAX搭載パソコンと、幅広い選択肢からチョイスできるのです。例えばモバイルルータでは、先ごろNECアクセステクニカから「Aterm WM3500R」が登場しました。従来のモバイルルータはバッテリーの持ちが4、5時間程度でした。Aterm WM3500Rでは8時間と飛躍的に長くなっています。これなら家庭だけでなく、外に持ち出しても1日中使えるぐらいもつはずです。モバイルルータをバックに入れ、スマートフォンと組み合わせて使えば、WiMAX-WiFiで高速通信を実現できます。インテルもWiMAXにかなり注力しています。現時点で10メーカー、46機種のPCがWiMAXパソコンとして売り出されています。こちらは、あらかじめデータ通信機能がPC本体に内蔵されているので、ネットへの接続時間が早く、約12秒で準備が完了します。これは使ってみて初めて分かる価値でしょう。もちろんWiMAXが世界標準の規格であり、海外で利用できる点もメリットの1つです。米国でWiMAX通信サービスを展開するClearwireとローミング契約を結んでおり、全米の主要65都市(ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ホノルルも含む)でも、すぐにWiMAXで通信が可能な状況です。
●固定通信ユーザーもWiMAXのターゲットになる時代が到来
――今後、WiMAXをどのように展開していくのか、戦略について教えてください。
実は先ほどのClearwireでは、移動通信だけの利用だけでなく、家庭内でもWiMAXを利用するユーザーが半数を占めているそうです。我々は、ここに今後の展開の大きなヒントがあると考えています。これまでWiMAXを移動通信の用途として使っていたユーザーが、固定通信でも使うようになる可能性があるということです。移動通信は、固定通信を兼ねるわけです。移動が止まれば、固定ですからね。実際にITリテラシーの高いユーザーは、そういう利用方法に気づいています。
――ターゲットはモバイル用途だけではないと?
移動通信のみならず、固定通信そのものまでWiMAXによって置き変えてしまうという戦略を考えています。先ほど言及したように、大手ISPもADSL/FTTHの代替としてWiMAXを提案するようになってきました。もうすぐ進入学のシーズンで、引っ越しもたけなわになります。こういったユーザー層には、ADSL/FTTHを導入するのではなく、最初からWiMAXをお勧めしたい。そのためには幅広いコンシューマーに向けて、WiMAXのメリットを十分に理解してもらえるように、しっかり宣伝していく必要があります。かつては固定電話と携帯電話が共有されていましたが、いまの若者は携帯電話をメインに使う方向に変化してきました。これと同様に通信の世界でも、ADSL/FTTHからWiMAXへという流れが起きてくるでしょう。ようやくWiMAXが大きなブームを引き起こせるところまで来たという手ごたえを感じています。
●最大のチャンスを迎えたWiMAXで、いよいよ攻めに転じていく
――ここにきて競合他社の展開も活発になってきました。他の通信サービスについて、どのようにお考えですか?
この12月3日にはイー・モバイルからDC-HSDPAのサービス(emobile G4)が始まりました。通信速度は下り42Mbps/上り5.8Mbpsで、料金は5,980円(にねんM)となっています。まず料金についてですが、我々のUQ Flat年間パスポートのほうが3,880円で割安感があります。速度については、WiMAXは40Mbps/10Mbpsなので、一見するとDC-HSDPAよりも遅いと思われるかもしれません。しかし、WiMAXでは無線通信に必要なエラー訂正機能が含まれた速度を発表しています。そのため40Mbpsとなっていますが、もしエラー訂正がなく、同じ符号化率であるならば、48Mbpsの速度が出る計算になります。実はこのように速度比較の前提条件が違うのです。実測値でも明らかにWiMAXのほうが高速だという結果が出ていますから、特に問題ないと思っています。また通信デバイスは、WiMAXのほうがバリエーションも豊富で選択の幅があります。さらに通信エリアについて言えば、他社の通信サービスは限定的な地域からのスタートです。ちょうどWiMAXがスタートしたときの状況と同じです。いまWiMAXは全都道府県所在地をカバーし、かなりのエリアまで広がってきています。たぶん現時点では我々のほうが2年ぐらい先行していると見ています。年末にスタートするLTE(Xi)でも、WiMAXのほうが速度も料金も勝っています。エリアについては今後、LTEはFOMAとのハイブリッド対応で拡大してくるでしょうから、我々も3GとWiMAXのハイブリッド対応を進めていきたいと考えているところです。もうひとつ重要なポイントがあります。それはWiMAXには帯域制限がないということです。もともとWiMAXは30MHzという広い帯域を割り当てられているからです。モバイルで動画を見るような用途でも安心して利用できます。このような状況を考えると、いまの時点では、競合他社のサービスよりWIMAXのほうが断然有利なのです。我々にとって最大のチャンスを迎えていますので、これから攻めに転じていきたいと考えています。
●WiMAXの次なる一手、WiMAX2の進展も!
――新しいWiMAX2の技術も注目を浴びています。今後の計画や予定について教えてください。
WiMAX2は、下り330Mbps/上り112Mbpsという速さで、従来のWiMAXの8倍ぐらいの高速化が見込めます。これによってブロードバンドの新しい利用法が考えられます。将来的にはマルチスクリーン・マルチデバイスで映像を見る時代になるでしょう。スタジアムの映像を上下・左右・中央など、複数の映像として束ね、視点を自由に選択して映像を見るといった使い方も可能です。また「CEATEC JAPAN 2010」で出展したような3Dハイビジョン映像にも適用できます。このように全く価値の異なる新しい使い方を実現するために、WiMAX2が活用されるはずです。もちろん現状のWiMAXでも新しい利用法がどんどん登場しています。たとえばM2M(Machine to Machine)分野では、デジタルサイネージや自動販売機でもWiMAXが利用されるようになっています。いま品川駅で設置されていますので、ぜひご覧ください。我々はWiMAXを次世代インターネットの本命であると考えています。これまでも世の中では「ユビキタス社会」という概念がずっと叫ばれ続けてきました。しかし、「いつでも、どこでも、誰でも」ということを考えると、真の意味でのユビキタス社会は、まだ完成していません。エネルギー、運輸・交通、産業、研究、ビジネス、医療など、あらゆる分野で、それを実現するのが、まさにWiMAXなのです。
《井上猛雄》
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