ゲームで最適な3D立体視を実現するためには・・・DiGRAで開発者が議論
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会場となった国立情報学研究所「edubaseSpace」には、プロのゲーム開発者から研究者・学生まで、約50名が参加。ゲーム開発者の属性も、プログラマーが5割、ゲームデザイナーが4割、アーティストが1割という混成ぶり。研究会の模様はUstreamでも配信され、のべ260名以上が視聴するなど、関心の高さを伺わせました。
はじめに研究委員会委員長で、『ゼビウス』などの生みの親として著名な遠藤雅伸氏から、DigraJが日本学術会議より「日本学術会議協力学術研究団体」の指定を受けた旨の報告がありました。遠藤氏は「これで名実共に『学会』として認められた」と述べ、これまで以上に活発な活動を推進していくと抱負が語られました。
冒頭で挨拶する遠藤雅伸・研究会委員長研究会は国立情報学研究所で開催された
続いて後藤田洋伸氏、石井源久氏から「3DC安全ガイドラインの背景と内容」「両眼視差方式の原理に基づく『快適な立体視』をリアルタイムゲームに応用するには」と題した講演が行われました。
立体視ゲームも、他の立体視コンテンツと同様、本格的に普及期に入りました。しかし、立体視コンテンツは作り方によって、見づらさが感じられる場合もあります。本研究会ではこうした状況を避けるために、どのように注意すればいいか、3Dコンソーシアムが提示する「3DC安全ガイドライン」をベースに議論が行われました。
はじめに後藤田氏は、人間は物体の重なりや陰影といった「手がかり」から、平面に描かれた映像からでも立体感を感じ取ることができると説明し、立体感は立体視の専売特許ではないと説明。その上で立体視に特有の立体感として「水晶体の焦点調節」「運動視差」「両眼視差」「両眼の輻輳」の4点をあげ、それぞれ解説しました。
立体視の概念と問題点について解説する後藤田氏
しかし、現在主流のメガネ式や、裸眼による両眼視差方式では、このうち「両眼視差」「両眼の輻輳」の2つのみを活用することで、解像度とのバランスを保っています。また視聴位置によっては立体像が歪んで見えたり、左右の映像分離が不完全だったり(クロストーク)、分離された映像が必ず両眼に届くとは限らなかったり(ウィンドウ違反)、といった問題が発生することもあります。
さらに人によっては、急激な動きを多く含んだ映像を視聴すると気分が悪くなる、「映像酔い」の問題が発生します(中には平面視のテレビの映像を見ているだけで、酔ったような気分になる人もいるほどです)。これらの現象が絡み合い、疲労や不快感の原因になると整理されました。
これらの問題については、解決法が提示されているものもありますが、そもそも原因がはっきり特定できていない問題(映像酔いなど)も含まれています。また不快感についても個人差があり、これには開発者自身も含まれます。一方で基準が示されないまま、映像器機やコンテンツが乱立したのでは、消費者に広く浸透させることが困難です。
こうした背景から、3D事業に係わる業界団体が中心となって、2003年に設立された団体が、3Dコンソーシアムです。コンソーシアムでは視聴者に周知すべき内容と、コンテンツ制作者、ハードウェア製造者のための内容を含む「3DC安全ガイドライン」を策定。2010年に全面改定がなされました。ガイドラインはウェブ上で公開されており、無償でダウンロードできます(http://www.3dc.gr.jp/jp/scmt_wg_rep/guide_index.html)
ただしガイドラインは目安であり、各業界や社内ごとに独自のノウハウを盛り込み、運用していくことが求められています。特にゲーム業界は実写ではなくCG映像が中心で、リアルタイム性が強く重視される点が特徴となっています。
そこで石井氏は、3DCガイドラインの内容をどのようにゲーム業界で応用していくか、バンダイナムコゲームスの社内事例をベースに、解説していきました。
社内ガイドラインをベースに解説する石井氏
はじめに石井氏は「見やすさ」と「立体感」は完全に相反するものではないと切り出しました。にもかかわらず、正しい描画方法を行っていない立体視コンテンツが世にあふれると、「立体視そのものが見づらさの原因である」といったような誤解が生まれてしまう恐れがあります。
その一方で、仮に描画方法の誤りに作り手が気づかないまま調整を行った場合でも、視差を下げれば見やすくなったように感じられてしまいます。その結果、必要以上に立体感が薄くなったコンテンツがユーザーに届いてしまう事態は避けなければならない、と問題提起を行いました。
そのため最も大事なことは、作り手側が、正しい描画方法に基づく立体映像制作を行なった上で、ユーザーに視差を調整してもらうことだと指摘しました。また視差設定をカバーするための方法として、空気遠近法のような、平面視レベルでの立体感表現をもっと活用すべきだ、と提案しました。
続いて立体視コンテンツの開発では、「必須項目」「重要項目(3DC安全ガイドラインに記載があるものをはじめ、立体視全般でよく知られているもの)」「推奨項目(ゲーム独自のものを中心とした、見やすさに影響する事項)」と対策を切り分ける姿勢が示されました。同社でもこの方針で立体視ガイドラインが策定されているとのことです。
「重要項目」とされているものに、奥行き範囲の設定と視線誘導があります。プレイヤーの注目が予想される主人公キャラクターなどは視差角±1度以内の範囲におき、オブジェクト内の視差角を1度以内におさめることが望ましいこと。それ以外のものは、なるべく視差角±2度以内に配置し、範囲を外れるにつれて、注目が行かなくなるような工夫をするべきだとの指摘がありました。他に手前側に飛び出すような表現には、注目が行きがちなので、より配慮が望まれるとのことです。
また、作り手側が設定した見やすい範囲にプレイヤーが注目してくれるとは限らないため、映画などの映像演出に見られるような、見やすい位置にさりげなく視点を誘導するような仕組みを、ゲームでも盛り込むこと。このほか移動画面やアクション画面、リプレイ画面など、パートごとに立体視の設定を調整できるようにする、などのアイディアも示されました。
他に「完全な解決が最も難しい問題」として上げられたのが、「奥行き乖離」と「めり込み問題」です。奥行き乖離とは、画面内で同時に見るべき2カ所の奥行きが、前後で分かれていて見づらいこと。めり込み問題とは、描画優先度と奥行き関係が逆転して、不自然なめり込み方に見える問題です。それぞれ字幕や、体力ゲージなどの情報表示物と飛び出しオブジェクトの干渉などで、発生しがちとなります。
めり込み問題の回避策として示されたのが、全ての情報表示類を視差0面に置き、3Dオブジェクトを奥側に配置する・・・。つまり「飛び出す」のではなく「奥行きがある」ような画面演出に特化すること。同時に視差を少なくすれば、奥行き乖離問題も解消します。これは、よく用いられる手段ですが、多用すると3D立体視である意味が乏しくなるのも事実です。そのため特定の場面でだけでも使えるような対策を複数検討し、それらを場面に応じて使い分けることが重要であるとの指摘がなされました。
後藤田氏と石井氏の講演は、「現状の立体視方式では個人差はあるものの、疲労感や不快感の発生を完全に抑えることは難しい」「対策は多岐にわたり、ゲーム内容や状況によって変化する」という2点にまとめられます。石井氏は快適な立体視ゲームを作るために、「デプスデザイナー」などの新しい職種が必要になるのではと指摘。プログラマーの技術的支援を受けつつ、企画職など、ゲームのイメージが頭に浮かぶ人が担当するのが望ましいとコメントしました。
セガ麓氏も加わって行われたパネルディスカッション
パネルディスカッションでは冒頭、立体視テレビの遅延問題に関する質問がありました。一時期問題になった液晶テレビなどの遅延問題ですが、昨今ではかなり解消されています。しかし現行の立体視テレビでは、大画面化に伴い、遅延が大きくなる傾向が見られます。一方、東芝のレグザZG2・ZP2など、立体視ゲームの表示遅延が少ないことをセールスポイントとしたモデルも登場しつつあり、メーカー側での対応が期待されます。
CG映画業界での事例も紹介されました。あるCGスタジオでは、2Dですべての映像を完成させ、そこから3Dの演出をつけていくというように、ポストプロダクションの一部として3Dが位置づけられているそうです。一方でプリプロダクションの段階で、監督の3Dに関する演出意向を汲んで脚本が作られ、CGが制作される例もあるのでは、という意見も出されました。
また「立体視ならではのゲームデザイン」の可能性については、「立体視の視差を利用して、隠されたアイテムを見つけ出すようなゲーム」などのアイディアが出されました。委員長の遠藤氏から「アーム付きの土木建築機械を遠隔操作する際、立体視モニターでなければ、うまく操作できないと聞いた。ゲームのヒントになるかもしれない」とコメントされる一幕もあるなど、さらなる議論が期待されます。
後藤田氏・石井氏の両講演スライドは、DigraJ公式サイトからダウンロード可能です。詳細なスライドですので、ぜひ本稿とあわせてご覧ください(http://www.digrajapan.org/modules/mydownloads/index.php)。
《小野憲史@INSIDE》
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