京大とNTT、極低温の原子気体を用いて物質の新しい量子状態を作り出すことに成功
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これにより、極低温にまで冷却された原子の状態を非常に高い精度で制御、観測することが可能になる見込み。さらに、物質の性質を決める原理の解明に向けた量子シミュレーターの実現に大きな役割を担うことが期待されるとのこと。研究成果は、英国科学雑誌「Nature Physics」(ネイチャー・フィジックス)に8月1日(英国時間)に掲載される予定。
近年、「光格子」と呼ばれる人工の結晶をレーザー光で作る技術が確立し、物質が低温で示す特異な性質を極低温の原子気体を使って調べようとする研究が注目を集めている。京都大学とNTTでは、それぞれの強みを生かし、共同で極低温原子気体の研究を行っていた。
今回、イッテルビウム原子に含まれる異なる同位体を極低温にまで冷却して光格子のなかにとどめ、通常の物質系では存在しなかった新しい量子状態を作り出すことに世界で初めて成功した。量子力学ではすべての粒子は「ボース粒子(ボソン)」と「フェルミ粒子(フェルミオン)」と呼ばれる、性質が異なる2種類の粒子に区別される。今回、イッテルビウム原子の豊富な同位体を利用して、ボソンとフェルミオンを光格子のなかで混合させた結果、ボソンとフェルミオン間に働く相互作用および混合させる数に応じて、多様な量子状態が実現することが判明した。
特に、ボソンとフェルミオンが格子点上に1個ずつランダムに入り混じった「混合モット絶縁体」、複数のボソンとフェルミオンが合わさって1つの粒子のようになった「複合粒子状態」は、今回の研究で確認された新しい量子状態だという。
今後は、原子気体を冷却する技術をさらに発展させ、物質の性質を決める原理の解明に向けた量子シミュレーターの実現を目指す。さらに将来的には光格子を量子コンピュータへの応用を可能とするため、原子の制御・観測方法の開拓を目指すとのこと。
《冨岡晶》
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