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従来のWindows Mobileは「アプリを入れれば何でもできる」のが売りであり、自分で環境をカスタマイズするスキルのあるパワーユーザーには支持されたが、一般ユーザーには「いろいろできるのだろうが、難しそうだしわかりにくい」という印象を与えていた。Windows Phone 7では逆に、ユーザーが最も強く求めている「コミュニケーション」にフォーカスすることで、シンプルで軽快な使い勝手を実現しようとしている。
これは筆者の私見だが、Windows Phone 7はあえて「スマートフォン」とは呼ばないほうが、その特徴が正しく伝わる製品なのではないかと思う。現状でスマートフォンというと、アプリを中心とした機能の豊富さが想起されることが多く、実際にKDDIからIS12Tが発表されたときも、一部報道では「Windowsとの互換性が高くWordやExcelのファイルも開ける」といった取り上げられ方をしていたが、数ある特徴の中でまずOfficeに注目するのはまったくナンセンスであろう。プラットフォームビジネスとしては当然iPhoneやAndroidと競合していくことになるが、Windows Phone 7という製品自体について言えば「従来に比べてTwitterやFacebookが飛躍的に使いやすくなった携帯電話」といった説明が正確なのではないだろうか。
Windows Phone 7における懸念となるのは、ソーシャル系のサービスはトレンドの変化が激しく、利用者が求めるユーザビリティもその時々によって常に移り変わっているということだ。例えば、現状のWindows Phone 7.5ではTwitter、Facebook、Windows Live、LinkedInをサポートしているが、話題となっているGoogle+や、日本で人気のあるmixiやGREEなどには対応していない。OS標準のpeopleハブですべてのサービスを横断的に利用するという理想があっても、自分がメインで利用しているサービスに対応していなければ意味がないし、また同じサービスの中でも次々と登場する新機能をサポートし続けなければならない。
例えば、最近のAndroid機では複数のSNSを横断的に利用できる独自アプリがプリインストールされていることが多い。筆者も新機種を試用する際には必ずそれらを試すようにしているが、実際には個々のSNSを使いこなすには機能不足であることがわかり、結局TwitterやFacebookの個別アプリを追加しなければ使い物にならないことのほうが多い。Windows Phone 7がこのような状態に陥ってしまったとしたら、peopleハブの存在はむしろシステムの複雑さを増すだけの結果になりかねない。
逆に今後が楽しみなのは、Skypeとの連携である。今年5月にマイクロソフトはSkypeを買収することで同社と合意している。マイクロソフトが今後どのようにSkype事業を運営していくかについては、現在まだ買収手続きが完了していないとの理由で一切のコメントは得られていないが、Windows Phoneのコミュニケーション機能のひとつとしてSkypeを活用しない手がないことは、誰の目にも明らかであろう。
Windows Phone 7の特徴として、同じ相手に対して複数のコミュニケーション手段を使い分けられる点がある。例えば、SMSの着信に対してFacebookのチャットで返事をするといったやりとりが同一の画面上で可能となっている。これをSkypeにも拡張すれば、Skypeのチャット、音声通話、ビデオによる会話などをシーンに応じて自在に選択することができるので、通常の電話をかけようと思ってpeople画面を開いたら、相手がオンラインだったので電話の代わりにSkype経由で発信する、という使い勝手も容易に実現できる。
現在、個人にひもづく連絡先情報の中では携帯電話番号と携帯メールアドレスが最も高い価値を持っていると考えられるが、Windows Phoneのようなデバイスが普及すれば、将来はSkypeなどインターネットサービスのアカウントのほうがより有用な連絡先になる可能性もあるのではないだろうか。
コミュニケーションを新機軸としたWindows Phoneが、iPhoneとAndroidが優勢なモバイルデバイス市場にどれだけ食い込んでいけるか、期待をもって注目していきたい。
《日高彰》
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