【CEDEC 2011】グーグルはなぜ3月11日の大震災に対応できたのか
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グーグルは3月11日の震災発生から2時間語に安否情報を登録して確認できるようにする「パーソンファインダー」を提供開始したほか、カーナビメーカーから情報提供を受けた「自動車通行実績情報マップ」、被災前の写真を収集する「未来へのキオク」、YouTubeで地元ビジネスを支援する「東日本ビジネス支援サイト」、Person Finderの動物版の「アニマルファインダー」など次々に震災支援サービスを立ち上げていきました。
グーグルには大規模災害に対応するグーグルクライシスレスポンスというチームが常設で存在するそうです。ただ、今回のサービスの数々は結果的にはグーグルクライシスレスポンスではなく東京のエンジニア達が大きく先行する形で主導していったそうです。
しかしそうした取り組みは「果たしてそれはグーグルの仕事なのか?」という疑問を社内からぶつけられることもあったそうです。賀沢氏は「それは自分にも分からない」と言いながら、「考えて分からないことはググレと言われている」と冗談めかしながら話し、検索ボックスに「誰かを助ける」と入力すると入力支援で「誰かを助けるのに理由がいるかい」という候補が出てきたと紹介。これには会場も爆笑。グーグル先生は最初から理由を知っていたわけです。
冗談はともかく、グーグルがどのような支援を行ったか、も当然重要ですが、なぜグーグルはこのような未曾有の事態に対応するような取り組みが行えたのか、「なぜグーグルは動けたのか」は重要な教訓になります。
賀沢氏は2つの写真を見せてヒントを語りました。1枚目はキマイラという架空の動物。もしキマイラが襲ってきたら? と考えると、大変な事態です。しかし手がかりはあります。キマイラは頭はライオン、体はヤギ、尻尾はコブラという動物です。自分達が知っているようなものに分解すれば対処法も分かりそうです。分解して小さな所からコツコツと対処するということです。
2枚目の写真はライト兄弟の飛行機です。有人飛行を果たして彼らですが、本当に人を乗せた飛行機が飛ぶかは確信が無かったと言われます。しかし操縦桿があり、上手く飛べなくても調整できるようになっています。飛んだ後の事は飛んだ後に考え、やりながら調整すればいいということです。
グーグルの支援も何か大きな戦略にのっとったものではなかったと言います。
「パーソンファインダー」に動物の安否情報が多く集まったから、さすがにそれはマズイだろうと考えた結果生まれたのが「アニマルファインダー」です。あるいは、避難所に掲示されている被災者リストを送ってもらったら膨大な量が送られてきたという事があったそうです。当初は画像を見てスタッフで手動で「パーソンファインダー」に入力するつもりだったそうですが到底ムリな量です。悩んでいると、それを入力してくれるボランティアのような人たちが自然と現れたそうです。グーグルでは上手く入力するコツをまとめた手順書を公開することで、この膨大な量の画像を入力することに成功したそうです。初めから計画されたわけではありません。賀沢氏は「もしボランティアの人を集めようというな大掛かりの事を最初から考えていたら、その道程の遠さに最初から断念していたかもしれません。計画よりも適応することが大事ということです」と話していました。
小さい事からコツコツと、計画するのではなく適当する、こうした方法によって未曾有の事態に対処できることをグーグルは示しました。
しかし、と賀沢氏は言います。「未曾有の事態(=誰もが未体験)だから難しいのであって、予め経験していれば未曾有の事態にも容易に対処できるのではないだろうか」。この点で賀沢氏はゲームやエンターテイメントに期待を示しました。「シリアスゲームで巨大地震を体験するものがありました(SGラボが作った『Dモーメント 巨大地震編』)。大人数でこうした体験をするというのは技術的には既に可能です。きちんと続けるにはお金が必要ですが、ぜひ皆さんにも考えていただきたい」
そして賀沢氏は今回の教訓を必ずや活かさなければならないと強調しました。「自動車通行実績情報マップを立ち上げるのに東日本大震災では1日か2日を要しましたが、先日の台風12号では2時間で立ち上げられました。次は1時間でやります。その次は自動化します」
《土本学 / Mr.Cube@INSIDE》
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