【韓国LGレポート(Vol.1)】LGの主力工場「LG Digital Park」を見学
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
LG Digital Parkは、首都ソウルから南へ車で1時間ほど離れたピョンテク(平沢)にある同社の主力工場。テレビをはじめとするAV機器を手がけるホームエンタテインメント(HE)事業部および、携帯電話を手がけるモバイルコミュニケーション(MC)事業部に属する製品の製造を行っており、中でも日本、韓国、北米などの市場に向けた比較的付加価値の高い商品を担当している。冷蔵庫や洗濯機などのいわゆる白物家電を除き、日本に入ってくるLG製品はすべてここピョンテクで生産されているという。
敷地内は写真撮影禁止のため目視のみでの見学となったが、携帯電話を生産している建物は、自動実装機などを利用して部品を基板上に実装するSMTライン、部品を組み立てて最終製品に仕上げる組み立てライン、そして品質検査部門などから構成されている。
組み立てラインでは、機種・携帯電話事業者ごとにラインが形成されている。同じ機種であっても提供先の事業者が異なると別ラインとなるため、それぞれのラインには「機種名/○○○」(○の中には事業者名が入る。SKテレコムを示す「SKT」、米AT&Tを示す「ATT」などが確認できた)の形で名前が付けられている。組み立ては人手と機械の両方を通過する流れ作業となっているが、ビス止め、ラベル貼付、性能試験などおおむね自動化されており、人が担当する作業は機械の監視、テスト行程での端末へのケーブルの挿抜といった部分である。
ライン上には電波を外に漏らさないシールドボックスがテスト用に多数用意されており、この中に端末を入れると、GSM、3G、Wi-Fi、Bluetoothといった各種無線機能の出力や受信感度が自動的に測定され、所定の性能を満たしていることが確認される。製造される端末1台1台についてすべてこのようなテストが行われ、これを通過した個体は最後の行程で、内部に書き込まれていたテスト用のプログラムが消去されるとともに、各携帯電話事業者向けにカスタマイズされたソフトウェアがインストールされ、完成品となる。
一方の品質検査部門では、量産前の試作機などについて耐久性や安全性の試験を行っている。試験の一例としては、氷点下45度への冷却と90度への加熱を繰り返す環境試験、砂ぼこりの入った箱の中で端末を回転させるダスト試験、端末の各面それぞれを下にして1.5メートルの高さから落とす落下試験、すべてのキーを2万5000回ずつ押下するキープレス試験といったものがあり、これら多数の試験をすべて通過できなかった機種は量産に入ることができず、設計のやり直しとなる。折りたたみやスライド部を持つ機種に至っては10万回の開閉を実際にテストするといい、フロアでは多数の携帯電話が延々と機械のアームによって開け閉めされ続ける様子なども見ることができた。
同社は韓国を含む世界数カ所の拠点で携帯電話の生産を行っており、2010年の出荷台数は全世界で約1億1400万台だったが、ピョンテクでの生産はこのうち半数近くを占める。携帯電話端末のグローバルベンダーでは、自国では設計のみ行い、製造は中国などに設けた工場やEMS企業で行うというケースも少なくないが、LGの自国生産比率が比較的高い理由としては、高付加価値機種に使用するキーデバイスを自社で供給しているという点が背景にある。液晶パネルはLGディスプレイ、バッテリーはLG化学といった具合に、グループ内から調達する部材が少なくないため、国内に生産拠点を置くことで最新のデバイスをタイムリーに最終製品に反映できるとしている。
《日高彰》
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