【インタビュー】KDDIのスマートフォン戦略……「人気端末」「スマートパス」「スマートバリュー」、世帯ARPUという考え方
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その一方でauの端末戦略は、Android端末だけでなくiPhoneやWindows Phoneもラインナップしており、Galaxy、Xperia、INFOBARなど国内外の人気端末のブランドをひととおり押さえる全方位型だ。
スマートパスと全方位型ラインナップによって、auは2012年のスマートフォン市場でどのような戦略を展開していくのだろうか。今回、auのスマートフォン戦略について、現場の担当者に聞いた。
今回話を聞いたのは、KDDI コンシューマ営業本部 コンシューマ営業企画部 au営業企画グループリーダー 担当部長 村元伸弥氏、同 新規ビジネス推進本部 ビジネス統括部 ビジネス統括グループリーダー 課長 繁田光平氏、同 プロダクト企画本部 パーソナルプロダクト企画部 パーソナル商品企画グループリーダー 課長補佐 大谷宏氏の3名だ。
■3OS、人気機種含めた多彩なブランド展開で市場ニーズをカバー
auではスマートフォンの戦略として「3M」を掲げ、マルチデバイス、マルチユース、マルチネットワークという3つの柱で端末やサービスを考えている。3M戦略は2011年に発表されたものだが、2012年はそれを着実に実行していく年だという。とくにマルチデバイス、マルチユースという点では、「現在、3OS(Android、iOS、Windows)という他キャリアにない多彩な機種をそろえ、中高生、若者、社会人、主婦など家族みんなが使えるようなラインナップを揃えています(大谷氏)」という。
とりわけ、iPhone、Xperia、Galaxyという人気の3ブランドが選べるインパクトは大きい。以前取り上げたスマートフォンのインサイト調査でも、想起されるブランド、機種変更したいブランド、としてこの3ブランドが上位を占めていた。
また、ラインナップ拡充の考え方として大谷氏は、「(現状)どこのメーカーのどこのブランドが、どのポジションに一番強いのか、まだ今後もいろいろ変わっていくところ。(auとしては)それぞれのブランドの中で、まずは一番上の方から選んでいただく。大は小を兼ねるではないが、一番数が出ているものが、安心して使えるという基準もある。その最たる例がiPhoneだと思う。」と述べた。一つのブランドからバリエーションを複数出すよりも、まずは各ブランドの代表モデルに絞ってブランド数を増やすことで、ユーザーにとってはより選びやすくなるということだろう。
■法人向けもマルチ展開
法人向けの端末については3つの流れで考えているという。ひとつは、コンシューマで売れ筋の人気端末は法人でもニーズが高いという流れ。2つ目は、「G'zOne」に代表されるヘビーデューティーなスペックが要求される特殊市場。3つ目は、サードパーティ製のソリューションでニーズに応えるというパターンである。
大谷氏によれば、Galaxy、Xperia、iPhoneなど店頭での人気機種は、そのまま法人での売り上げ構成にも反映されているという。その一方で、防水、耐衝撃性など特殊ニーズにも対応する端末も手掛けており、タフネスタブレットのシリーズも維持される。サードパーティのソリューションとしては、3LM SecurityのMDMソリューションを組み込んだEIS01PTを例に挙げ、企業のモバイルソリューションを支援するとしていた。
■豊富な機種ラインナップを無駄にしないスマートパス
続いて繁田氏に、サービス戦略について聞いた。3M戦略の中では、スマートフォン向けのサービスは、マルチユースを実現する位置づけにあるという。コンセプトはより多くの人にスマートフォンを使ってもらえるようなサービスを提供することとし、「auでは、スマートフォンの魅力を、オープンなインターネットへの接続、タッチインターフェイスによるユーザ体験、多彩なアプリケーションの3つにあると捉えています。せっかくのスマートフォンをただのタッチパネル端末に終わらせたくありませんから。(繁田氏)」と述べる。
しかし、auのスマートフォンユーザーの多くは、初めてスマートフォンを持つという人が少なくない。そのような人にいきなりインターネットの世界へ、といっても不安を抱くユーザーは多いはずだ。こうしたスマートフォンを初めて手にする人をタサポートするべく、用意したのが「auスマートパス」というサービスだ。
auスマートパスで利用できるアプリは、いわばauのお墨付きを得たアプリということで、オープンなアプリマーケットよりも安全性や質の面でも安心だ。また、コールセンターによるユーザーサポートも受けられる。こうしてインターネットの魅力を安心して利用してもらうためにキャリアがアプリ環境とサポート体制も提供することで、ユーザー体験の質を上げるという狙いがあるというのは言うまでもない。
■水平展開時代のARPUは世帯単位で考える
キャリアにとってはARPU(加入者一人あたりの売上)の向上という課題は避けて通れない。すでに端末とサービスの戦略を聞いたが、これらをどのようにARPU向上につなげていくのだろうか。この質問には、村元氏が答えてくれた。
「以前はFMC(Fixed Mobile Convergence)という考え方でモバイル+固定のまとめて請求や、まとめトークという戦略でARPU向上を考えていましたが、いまの市場では、このような垂直統合的な手法が機能しにくい現状があります。加えて、スマートフォンでは水平展開のビジネスモデルが台頭し、モバイル市場が再び動きだしています。(村元氏)」
しかし、現在auが展開しているスマートバリューというプランは、スマートフォンのプランとインターネット回線をまとめてお得という部分で、以前のモデルに似ているようにも見える。この点について、村元氏は、
「スマートバリューの固定回線の部分はauひかりにとらわれず、ケーブルテレビ局や電力系のFTTHにも適用できます。そして、OSや端末ベンダーも調達基準を時代に合わせ、ニーズがある人気ブランドをひととおり揃えるという端末戦略をとっています。また、スマートフォンのヘビーユーザーだけでなく女性や家族のだれもが使いやすいように、スマートパスというサポートとセットとなったオープンなアプリプラットフォームによって、世帯単位のニーズを吸収できるようにしています。以前は、ARPUというものを端末ごと、契約ごとに考えていましたが、端末やサービスが水平展開されるスマートフォンでは、ARPUも家族単位、または世帯単位という水平方向へのつながりを重視したものになります。」と説明してくれた。
■auの差別化戦略
最後に、3名にそれぞれにauスマートフォンの差別化ポイントを語ってもらった。
「端末もOSも、今後はさらにPCに近づいてきます。ソフトウェアやサービスの開発についても同様です。防水やデュアルコアなどスペックでの差別化はいっそう難しくなるでしょう。特徴をだせるとしたら、UIや中身の機能です。そのため、パートナーとなるメーカーも最初から絞り込むのではなく、ユーザーにとって使いやすいという視点でなるべくチャレンジしていきます。もちろんauクオリティを維持しながらです。(大谷氏)」
「サービスでの差別化戦略は、スマートパスに尽きるのですが、auスマートフォンは、ソーシャルの力を最大限に生かす方法にこだわりたいと思っています。例えば映像サービスも、NOTTVのようなモデルもアリだとは思いますが、Huluとの連携のような形ですね。ソーシャルのよい面を取り入れ、逆にコールセンターなど安心・安全のような部分をauで補うことで、ワンストップサービスのシナリオが描けることですね。(繁田氏)」
「スマートフォンによる市場シフトは向こう3年くらいは続くとみています。そこで重要なのは多様性だと思います。選択の自由度の有無というか、みんなが持っている端末がラインナップにない、簡単ケータイはやはり日本製でなければ、といった家族ニーズに応えることができる点を強調したいと思います。(村元氏)」
■攻めの端末ラインナップは「守り」にも有効
確かに、どのキャリアも家族割引のプランを用意しているが、家族全員が同じキャリアの端末を欲しがるかという点については、むしろ意見が分かれるのが普通だろう。社会人、主婦、学生と生活スタイルが異なるのだから端末当然だ。
auだけが、3OSに対応しており、iPhone、Galaxy、Xperiaという人気ブランドが揃っている。キャリアのブランドにこだわらなければ、いちばん選びやすく、選択の幅があるのはauということになるだろう。
とくに水平展開市場では、新しい製品やサービスがどんな企業やベンチャーからでてくるかはまったく予想できない。キャリアが主導して人気の端末やサービスを開発させたりする時代は終わっている。ならば、特定の企業とグループやアライアンスを組むより、オープンなパートナー戦略のほうが効果的なのはインターネットビジネスの世界をみても自明である。
端末の多様性だけでなく、料金面(auスマートバリュー)やサポート面(auスマートパス)といった全方位サービス展開で先行するauの攻めの姿勢が、ここ数ヶ月の好調さの要因だろう。
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