南シナ海の領有権問題でハッカーが
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この事件の翌日、フィリピンの代表的放送局ABS-CBNは、(フィリピンの)ハッカーが11日、南シナ海における中国の武力侵略に反対する世界規模の抗議運動に参加する旨を報じた。このABS-CBNのニュースを中国の人民日報が中国国内に配信するやいなや、中国ハッカーらの間に反撃決起メッセージが呼びかけられている。
そしてその原因として、動画サイトにアップロードされた9日の放火事件等の映像や、QQ微博の関連トピックの参照を求めている。
なお、ABS-CBNが報じた「南シナ海における中国の武力侵略に反対する世界規模の抗議運動」とは Anonymous Philippinesの#OpChinaDown(中国撃墜作戦)である。Anonymous Philippinesは11日現在までに、世界中の45のWebサイトを改竄し、メッセージを掲げている。
説明の要はないと思うが、メッセージ中の「スカボロー礁にいる船艦」とは、さる4月20日以来、中国政府が同地域に派遣した最新鋭の漁業監視船「漁政310」を含む中国海軍の船艦を意味する。中国は23日時点で監視船の引き上げを発表したが、実際には7隻の中国海軍船舶がスカボロー礁周辺に居座り続けているという。
中国当局のコントロールが厳しいため、中国ハッカーたちにとっては、数年前のような大々的サイバー攻撃を実行することは難しくなった。
だが、現在の南シナ海における膠着状態をめぐり、冒頭にあげたような「フィリピン在住の華人を対象にした惨劇」が発生しているのはあまりに悲しいと同時に、気がかりでもある。ある程度の年齢を重ねた中国ハッカーならば、すぐに1998年5月に発生した「インドネシア華人暴動虐殺事件」を思い出すだろう。在外華人にとって想像を絶する災難であったとともに、Windows95が登場し、ようやくインターネットが普及し始めた中国で、「黒客・紅客」とよばれる一群のハッカーたちが登場したのは、まさにインドネシア華人虐殺事件がきっかけであった。
フィリピン当局は報道で現在、在フィリピン華人らの身の安全は守られており、暴動等の気配はない、としている。だがインドネシアの事件の背景の1つがクリスチャンの華人対インドネシア人イスラム教徒の対立があったことを想起すると、今回の放火事件が発生した場所が、フィリピンでも例外的にイスラム教徒の多い(人口の約30%)ミンダナオ島であることは気にかかる。
なお「我々は大統領の命令さえあれば戦争も辞さない」と宣言したフィリピン海軍の姿勢は、尖閣諸島問題でのわが国の対応と対照的だ。
(Vladimir)
筆者略歴:infovlad.net 主宰。中国・北朝鮮・ロシアのセキュリティ及びインテリジェンス動向に詳しい
Anonymousフィリピンと中国ハッカーの葛藤高まる
《編集部@ScanNetSecurity》
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