なぜ日本市場に注目するのか?……ノキアシーメンスネットワークスCEO会見
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
文化的にも通信事業は特殊であり、モバイルネットワークにおいてはガラパゴスなどともいわれている日本市場のどこが未来なのだろうか。
スーリCEOは「数年前の日本市場の特殊性は、グローバルから見れば市場や技術が先行しすぎていたのです。エンゲージメントエコノミーやギガバイト革命によってこれから世界で起こることは、すでに日本では起きています。おそらくギガバイト革命が最初に訪れるのは日本だと思っています」と語り、日本市場でのビジネスは今後のグローバルビジネスにも役立つと見ている。
その根拠として、日本のスマートフォン出荷台数の急激な伸びを挙げた。日本の新規購入端末の70%がスマートフォンと言われているが、ヨーロッパではまだ50%前後だ。他にも、モバイルブロードバンドの契約率も日本は90%に達するが、ヨーロッパでは5年先に50%に達するかどうかという状態だそうだ。また、LTEの加入契約も2012年末には100万件/月と予測されている。1人あたりのトラフィックの発生量の1GBは、日本ではおよそひと月であれば達成している。
通信事業において世界に先行する日本だが、欧米に遅れて発生している事象もある。それは通信障害だ。スーリCEOによれば、欧米では2009年ごろにBlackberryやiPhoneの普及によるサービスやネットワーク品質の低下が問題となった。そのため欧米では料金の定額制から従量制への見直しが始まっている。日本でスマートフォンのトラフィックによる通信障害が問題になったのは2012年初頭である。
SNSでは、このような想定外の問題に対応するため、世界中に5ヵ所、スマートラボというR&D機関を設置している。ここでは、スマートフォンの出荷や新しいゲーム(例:Angry Birds)のリリースがトラフィックに与える影響などを分析している。スマートラボでは、ネットワークそのものの研究だけでなく、キャリアや電話会社、およびそれらのパートナー企業が構築するエコシステムまで含んだ範囲でサービスの品質なども分析対象としている。
続けてスーリCEOは、ギガバイト革命や通信障害のような問題に対処するには、「液体のようなネットワーク=Liquid Netという考え方が重要になります」とした。Liquid Netとは、液体のように柔軟かつ多様なユーザー体験を提供できるネットワークのことだ。ユーザーごとのニーズや、ネットワークからの要求に動的に周波数や帯域、QoSなどを制御する技術である。時間帯、季節、地域によるトラフィック容量の動的な配分や、ユーザーやデバイス、アプリごとに最適な帯域制御やSLAの適用が必要となる。
同社では、このような制御ソリューションを「Customer Experience Management(CEM)」と呼んでいる。CEMは、例えば、15分ごとにユーザーのトラフィックパターンをログし、顧客のニーズを把握する。そして、分析したデータによって、帯域やQoSの制御を行うだけでなく新しい料金プランを提案するなどを可能にする。これらのモニタリングや分析はタブレットなどで簡単に行うことができるという。
事業者は、CEMを導入することでチャーン防止につなげたり、顧客満足度の向上につなげることができる。ネットワークが効率よく活用されれば、輻輳や障害によるロスを低減でき、ARPUの向上につながるかもしれない。
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