【木暮祐一のモバイルウォッチ】第3回「モバイルデータ通信回線、選択の自由が拡がってきた!」
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
一方で、既存通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)からネットワークインフラの貸与を受けて、独自のブランドで通信サービスの提供を行う、MVNO(Mobile Virtual Network Operator : 仮想移動体通信事業者)という形態で事業展開を行う企業が増え、モバイルの通信回線を選ぶ選択の幅が広がってきている。MVNOの場合は、通信回線の提供が主業務になるので、MNOの回線契約よりも利用実態に合わせてより安価にデータ通信を利用できるプランが用意されていたり、MNOのように端末販売との抱き合わせによる継続利用の縛りが少ないため、手軽に利用できるところがありがたい。
とくにこのところ筆者が注目しているのが、1つの回線契約で複数のSIMカードを利用できるMVNOのサービスである。従来の回線契約は1回線ごとにSIMカードが1枚提供される形であったので、たとえば複数の端末を利用するユーザーがランニングコストを減らそうとするなら、わざわざ1枚のSIMカードをその都度差し替えて使うなどの工夫が必要だった。しかし、最近ではMNOの1回線契約分程度の基本使用料で複数のSIMカードを同時に利用できるMVNOのサービスが注目されている。
その先陣を切ったのは、IIJが提供する「IIJ mio高速モバイル/D」サービス。これはNTTドコモのMVNOで、NTTドコモのLTE網に対応したデータ通信用のSIMカードをIIJが提供し、NTTドコモの回線契約よりも手軽な価格でデータ通信サービスを利用できるというもの。しかも、1つの回線契約で最大3枚のSIMカードを利用できる。スマートフォンやモバイルWi-Fiルータなど、複数のデータ通信端末を利用しているユーザーの場合、わざわざSIMカードを差し替えなくても1つの回線契約で複数のSIMカードで利用が可能である。
料金プランは2種類用意されており、「ファミリーシェア1GBプラン」は月額2,940円(契約時に初期費用として3,150円かかる)で、最大1GBのデータ通信(IIJでは、これを1GBの「クーポン」と名付けている)が可能となる。1ヵ月のうちに1GBを使い切ってしまった場合は、100MB単位でクーポンを追加することもできる(100MBあたり525円)。追加を希望しなければ、通信速度は大幅に低下(最大128kbps)してしまうが追加料金を払わなくても継続利用でき、翌月になればまた最大1GBの高速データ通信が利用できる。逆に1GBを使い切らない場合、翌月に繰り越すことはできない。
また、利用頻度が少なく、もっと安価にモバイル端末を運用したいということであれば、月額945円のプランを選ぶことも可能である。これでも最大128kbpsでのデータ通信が可能で、高速な通信が必要であれば525円/100MB単位でクーポンを購入することで、下り最大75MBでのデータ通信を利用できる。
SIMカードは最大3枚まで利用できるが、課金方法にはちょっとした落とし穴がある。1GBのデータ量は10MB単位で各SIMカードに同時にシェアされるようになっている。3枚のSIMカードをいずれも平均的に利用しているユーザーは良いが、たとえば1枚のSIMカードに利用が偏ってしまうと、あまり使用しないほうのSIMカードにも同容量がチャージされてしまうので、無駄が発生してしまうことがある。各SIMカードに残っているクーポンを戻したり、別のSIMカードに配り直すことはできず、クーポンの残量がなくなった場合に別のSIMカードにクーポンが残っていても、最大128kbpsでの通信になってしまうので注意が必要だ。
もう一つ、MVNOの老舗で今や国内最大手となった日本通信は、6月27日より2枚のSIMを1契約で利用できる「PairGB SIM」の提供を開始し、ヨドバシカメラなどのパートナーブランドのパッケージで販売開始されている。PairGB SIMの場合、月額2,970円で2台の端末で2GBをシェアできるようにしている。2GBを超えて利用する場合は、IIJと同様に525円/100MB単位でチャージが可能である。IIJ mioの「ファミリーシェア1GBプラン」と月額使用料が同額でありながら、2枚のSIMカードで最大2GBを使えるというのが魅力的な製品である。IIJと異なるのは、日本通信の場合は2枚のSIMを合わせて2GBまで利用でき、片方のSIMカードのみで容量を使い切ることもできる。
IIJ、日本通信とも、SIMフリー端末での利用はもちろんのこと、NTTドコモのMVNOになるので、NTTドコモの販売した端末であればSIMロックがあっても利用が可能である。これまで、わが国ではモバイル端末と回線契約を別々に購入するということが原則できなかったが、昨今では中古端末の流通が一般的になり、またこうしたMVNOによるSIMカードのみの販売が増えてきた。中古のスマートフォン端末とこのようなMVNOのSIMカードを組み合わせ、サブ端末として利用したり、家族みんなで気軽にスマートフォンを利用するといった利用方法が考えられる。端末と回線契約の選択の幅が広がってきたというのはうれしい限りである。
《RBB TODAY》
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