もっと踊って〜! 『放課後ミッドナイターズ』竹清×『009 RE:CYBORG』神山
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Q --- 『放課後ミッドナイターズ』の印象をお聞かせください
神山 --- 竹清監督のことは、僕らですら3DCGに手を出すことに尻込みしていた時期に、福岡のほうで果敢に挑戦されているとは聞いていましたので、すごいなと思っていました。
『放課後ミッドナイターズ』にはモーションキャプチャーの良さを出来るだけ引き出した作品だと聞いていたのですが、拝見するまでいまいちどういったものなのかピンと来ていませんでした。実際、拝見してみて思ったのが“ライブ感がすごいな”と。人体模型や骸骨標本のキャラクターは手書きのアニメだけど、モーションキャプチャーで実際の人のリアルな動きと交って、“生”の面白さが出ている。
お笑いもライブのほうが面白いように、『放課後ミッドナイターズ』はそういう“生”感の面白さをもっている。最初に拝見させて頂いたときは(スクリーンに向かって)「もっとキュン様(人体模型の主人公)出てこないかな?」と思いながら観ていました。
Q --- 『放課後ミッドナイターズ』の主人公、人体模型のキュンストレーキというキャラクターが生まれた経緯は?
竹清 --- 別の仕事でモーションキャプチャーを扱ったことがあるのですが、お芝居に入る前とお芝居が終わったあとが一番面白かったんです。つまり演技に入る役者さんのひととなりが自然と出る瞬間の動きこそが面白かったんですね。これはうまく芝居をつければカラっとしたコメディが撮れると思い、アニメとモーションキャプチャーの組み合わせのアイデアを思いつきました。
人体模型というキャラクターにしたのは、実は多分に予算の都合があってですね(笑)。髪の毛を書かず服すら着せなくてよい、というコストカットが実現でき、見た目もインパクトがあって面白いから「こいつしかいないんじゃないか」という結論に至ったわけです。懸念点としては見た目が気持ち悪いということだったのですが、最初はそうでもあとから好きになってもらえるようなキャラ設定に気をつけました。
神山 --- 日本の商業アニメーションでは見た目が気持ち悪いと、主人公にはしてもらえないと思うのですが、海外ではそういった傾向はないので、『放課後ミッドナイターズ』のキュンストレーキというキャラクターはすごく新鮮でした。“キュン様”というキャラクターを、画的にもキャラ的にも、もっと観ていたいなと思いました。近年の商業アニメでは忘れられていた大事な部分だなと改めて思いましたし、ずっと観ていたいキャラクターを掘り起し、CGでうまく作り上げているなと感心しました。
竹清 --- 映画『放課後ミッドナイターズ』の原作である『放課後MIDNIGHT』というショートムービーがあるのですが、こちらはキャラ設定もストーリーも、『海猿』の原作者である小森陽一さんと一緒に作り上げていったのです。小森さんが福岡在住で、僕とご近所さんということもあって、とにかくボケ倒す設定を考えて頂きました。
神山 --- そもそも『放課後ミッドナイターズ』の絵コンテはどの程度書いているのですか? モーションキャプチャーの部分は人が演じるものだから、ある程度決め込まずに現場で撮ってゆくといった流れだったとか?
竹清 --- 絵コンテは通常のアニメーション作品で書く量を100だとしたら、おそらく60ぐらいだと思います。3Dならなんでもできるだろうと思っていたのですが、実際には絵コンテどおりにできないことがたくさん出てきましたので現場で実際の動きを見ながら決め込んでいく工程をとりました。
モーションキャプチャーの難しさはアニメのキャラならではのコミカルな動きが人間にはできないこと。現場で役者さんに「監督、そんなに飛べません」なんて言われるのですが、僕も「うーん、でももうちょっと飛んでみようか」といったやりとりがたくさんありましたね(笑)。
Q --- 竹清監督に伺います。初の長編映画を撮ってみていかがでしたか?
竹清 --- とにかくスケジューリングが大変でした。まるで一度も走ったことのないフルマラソンに挑戦しているような感覚でした。短距離走や中距離走といったレベルの作品は何度も作っているので、今回はとにかくペース配分がわからずに苦労しました。もうそろそろ30キロ地点かと思いきや、プロデューサーに「いや、まだ15キロぐらいだろ」と突っ込まれたりして。
ジョージ・ルーカスも『スターウォーズ』を作っているときに「もうやめちゃおっか」と言ったらしく、そのときは“なんて贅沢なこと言うんだろう”と思っていたのですが、今回自分で制作してみて、今はジョージ・ルーカスに謝りたいですね(笑)。
Q --- 竹清監督に伺います。作品にはどのような思い入れが込められているのでしょうか?
竹清 --- 僕が中学生の頃は、劇場に行くと『ゴーストバスターズ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『グレムリン』など、テーマ性を重視したというよりも、80年代のいい娯楽映画ばかりが上映されていたので、今回の『放課後ミッドナイターズ』もそのような映画にしたかったんですね。コメディとして作った作品なので思い入れやテーマ性というよりも、何も考えずに劇場で楽しんでもらえれば嬉しいです。
神山 --- 僕が『放課後ミッドナイターズ』に思ったのはキャラクターと世界観なんですね。どこまでがリアルでどこまでがファンタジーかという疑問は全く生まれず、とにかく見せ方が非常にうまいなと思いました。万人に受け入れられる80年代の娯楽映画の面白さを感じましたし、笑いの入れ方やセンスが抜群だと思います。素直に“キュン様、面白いなあ”とか“もっと踊ってほしいなあ”とか思いながら観てました(笑)。
《RBB TODAY》
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