千葉 中野木小でICT活用の公開授業…小4理科でデジタルスクールノート利用
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
◆デジタルスクールノートの活用
今回の中野木小学校学校の取組みでは、電子黒板と授業支援システムに加え、子どもたちに1台ずつスレートPC(富士通のFMV NQ4LE)を与えて、考える力と学び合いを支援している。スレートPCには、先ごろ内田洋行が発売を開始したばかりの学習支援アプリケーション「デジタルスクールノート」がインストールされている(対応OSはWindows XP/Vista/Windows 7、価格は25ライセンスで5万2,500円から)。これを利用して、子どもたちが授業中に気づいた点を自由な発想で描き、さまざまな考えを整理できるようにしているのだ(写真2)。
デジタルスクールノートの操作は至って簡単だ。子どもたちは、まるでゲーム機を扱うような手馴れた手つきで利用していた。このアプリケーションは手書きで入力でき、描いた文字や図形を移動して、シミュレーションを行うことも可能だ。たとえば複数のリンゴの絵を描き、それらから任意に指定したオブジェクト(リンゴの絵)を自由に動かせる。算数の授業で利用すれば、何度も試行錯誤を繰り返しながら、計算結果の確認が行えるだろう。
また教師側では、授業に活用するワークシートをデジタルスクールノートで作成。切り出したい画面範囲を指定してキャプチャーし、アプリケーション上で簡単に貼り付けられるのだ。同校の授業では、あらかじめ子どもたちの思考をアシストするための「シンキングツール」が作られていた。それらをベースにしたシートを必要に応じて各々の端末に配布することで、仮説や実験結果などを書き込めるように工夫を凝らしていた(写真3)。
さらに授業支援システムと電子黒板を組み合わせることにより、子どもたちの学び合いも強化。授業中に個々人で考えた結果を電子黒板に投影し、ほかの子どもたちの考えを共有できる。もちろんデジタルスクールノートを使って、プレゼンテーションも行える。
◆学びのスパイラルで自主的な思考を支援
本大会において公開された理科の授業は4年生のクラスのもので、「物の体積と温度の関係を学ぶ」というテーマに沿って進められた。授業では、子どもたちに課題を与え、グループごとに話し合いながら自主的に学んでもらうという方針だった。単に知識を暗記させるという一方的な教育ではなく、子どもたちが積極的に実験に取り組める場や、思考する場を設定することに重点を置いている点が大きな特徴といえるだろう。
公開授業の大まかな流れは以下のとおりだ。まず前回の授業までの復習を行う(写真4)。これまで「空気鉄砲」といった興味を抱きやすい学習教材を使用し、いくつかの実験を積み重ねてきた。電子黒板を使って、それらの学習結果を振り返る。次に新たな授業テーマとして「空気・水・金属の体積の変わり方を比べると、どのようなことがわかるか?」という課題を投げかける。これに対する仮説を考え、グループごとに話し合う。さらに、ここからデジタルスクールノートを使って、今までの考えを子どもたち同士で取りまとめて整理していくことになるわけだ(写真4〜8)。
一方、先生は授業支援システムを使って、子どもたちの活動を確認できる。各端末は無線LANでつながっており、先生のPC側に子どもたちの端末画面を取り込める仕組みだ(写真9)。子どもたちが描いた図やマトリクスの結果を一元的に管理し、それらを電子黒板上に表示することで、それぞれの考察や結果を共有することが可能だ。みんなで意見を交換し合いながら結論を導き出し、学び合いを通じて学習の理解の定着を図っていくという形である(写真10〜11)。
今回の公開授業を見学して強く感じた点は、子どもたちが学びを押し着せられることなく、自主的に学んでいけるように、各々に気づきを与えながら学習を進めていたことだろう。ここでは前述のさまざまなシンキングツールが重要な役割を果たしていたようだ。同校では、こうした学びの活動を連続的に繰り広げる姿について「紡ぎ」という言葉で表現している。子どもたちが段階的に繰り返し学ぶことを楽しめる「学びのスパイラル」の実現を目指しているそうだ。
先進的なICTやツールを導入することは、子どもたちの学びをアシストするという意味で重要だ。しかし、もっと重要な点は、まず子どもたちが楽しく学べ、その興味を持続しつつ、自らの思考をめぐらせることが可能なアイデアや創意工夫にあるのではないだろうか。今回の授業が終わったあと、実際に何人かの子どもたちから「授業が面白かった」という声を聞いた。子どもたちの理科離れが叫ばれて久しいが、このようなユニークな授業が津々浦々で実施されるようになれば、技術立国としての日本の未来も少しは明るいものになるかもしれない。
《井上 猛雄》
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