東日本大震災から2年、企業や自治体に“備蓄用食品”として見直される「お菓子」 | RBB TODAY

東日本大震災から2年、企業や自治体に“備蓄用食品”として見直される「お菓子」

エンタメ その他
NECでの備蓄のようす
NECでの備蓄のようす 全 8 枚
拡大写真
 東京都では、4月から「東京都帰宅困難者対策条例」を施行する。一斉帰宅を抑制する目的で、事業者に従業員向けの3日分の水・食料等の備蓄などを義務付ける内容だ。東日本大震災の教訓から、備蓄拡充の動きは、自治体、学校、そして西日本にも広がっている。

 たとえば目黒区は、避難者用備蓄食料を、現状の1日分から、3日分に増やすことを決定。2013年度から2年かけて、備蓄確保を進める(東京都から提供されている2日分の備蓄と合わせて、計5日分を備蓄)。また東京都教育委員会は、都立の中学校、高校、特別支援学校の計約250校を対象に、大規模災害発生時に、生徒を学校で保護する方針を打ち出している。またJR西日本は、管内の新幹線・在来線主要58駅に、合計約5万食の飲料水・食料を備蓄することを発表済みだ。

■備蓄用食品として見直されるお菓子

 こうした防災意識の高まりをうけ、備蓄用食品に対する需要も高まっている。厚生労働省の「2011年(2011年)国民栄養・健康調査」では、47.4%の家庭が非常用食料を備蓄しており、2009年(2009年)に実施された前回調査の33%から、大きく向上している。市場は今後も拡大が予測されている。

 とくに備蓄用食品として見直されたのが「お菓子」だ。備蓄用食品としては、「すぐに食べられるもの」「常温で美味しいもの」であることが望まれる。甲南女子大学の奥山和子助教授は、おいしい食事は気持ちをホッとさせることがある、という。「『知っている』、『食べたことがある』、『好きな食べ物』は気持ちをリラックスさせます。カレーは『飽きも来にくい』のでおすすめです。お米、水とあわせて『セットで備蓄』するよう心がけて下さい」と、『食べたいと思う、普段食べ慣れたモノ』を備蓄用に選ぶことをすすめる。

 また消費期限切れになっていたという事態を防ぐために、日常生活のなかで備蓄用食品を使用し、新品を補充する「循環備蓄」が大切だ。こういった観点から、「備蓄用菓子」は非常に備蓄用食品として優れている。製菓各社も、ビスケット、キャラメル、キャンディなどのラインアップにおいて、保存缶を採用するなどして、より備蓄に特化したタイプのお菓子を販売している。

 たとえば、江崎グリコのロングセラー商品「ビスコ」は、東日本大震災以降、「ビスコ保存缶」の需要が増し、売上を更新。「ビスコ保存缶」は、2011年度には2010年度の約10倍を売り上げるとともに、2012年度も過去最高売上を達成する見込みだ。

■備蓄食料の導入事例

 こういった備蓄用食品のお菓子は、企業や行政、学校などでの導入が進んでいる。和歌山市立日進(にっしん)中学校では、地域住民のための備蓄用食品に加え、PTAが全生徒分の非常食を購入。卒業式に3年生に「返却」し、次年度以降は新入生分を新たに購入していく「ローリングストック」方式を採用している。非常食として まずビスコ缶(全生徒分800缶)が備蓄された。今後 ペットボトル飲料も用意されるという。

 また日本電気(NEC)では、グループ53社、全国約1000個所に12万人×10食分以上の食料・水等を備蓄する。うち17社、約12万食でビスコで備蓄している。なかでも規模の大きい事業所である玉川事業場では、約1.3万人分の非常食を備蓄。通常の保管場所以外に、高層ビルにおける配布のしやすさを考慮して、ビルの執務フロアにも分散配備を行った。

 NECでは5年ごとに関係者が集まり、実際に非常食を試食して、備蓄食料の種類数(数種類)と個数を決定している。災害時の初動用食料としては、調理の必要がない非常食として味、安心・安全性、親しみやすさなどで、高得点だったビスコを採用したという。

 備蓄用食品を販売する各社は、おいしく商品できるアレンジレシピも紹介している。“帰宅困難者のための食料備蓄”が改めて見直される今、事業者や自治体、さらには食品メーカーも一丸となって取り組みを進めている現状が明らかとなった。

《冨岡晶》

特集

【注目記事】
【注目の記事】[PR]

この記事の写真

/

関連ニュース