【インタビュー】なぜ新OS? ドコモに聞く「Tizen OS」の狙い
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――ドコモとしても期待するHTML5の市場ですが、Tizenでの製品ラインナップのプランなどはどのようなものになりそうですか。
武岡氏:初号機は、先ほどのとおりサムスンの端末になると思います。そして、出すからにはこの1機種で終わりということにはしないつもりです。サムスンとしても後継機を考えるでしょうし、ドコモとしても1社、1機種に依存するリスクというのも認識しています。当然複数メーカーでのラインナップは考えています。初号機から1年以内で次のステップに進めればと思っています。
的場氏:幸い、Tizen Associationには国内、海外の複数の端末ベンダーが加盟していますし、興味を持って取り組んでもらっています。ドコモとしては、Tizen端末の販売だけでなく、国内外のメーカーや企業に対してTizenの普及や開発支援をしていきたいと思っています。それは国内の通信キャリアに対しても同様です。Tizen Associationとして、日本の通信キャリアが加盟したい、Tizenを扱いたいといった場合、拒む理由はありません。
――国内ではauがFireFox OSのサポートを表明していますが、FireFox OSとTizen OSを比較した場合の違いはなんでしょうか。
的場氏:一般論として、FireFox OSはローエンドモデル向けと言われています。端末の処理能力やコスト面において比較的低い機種にも搭載可能で、通信キャリアによっては南米など途上国市場の製品に採用する動きがあります。この市場は、いまのところドコモが考えているものではないので、ターゲットが異なるOSといった認識です。とはいうものの、Tizenと同じHTML5をベースとしたプラットフォームですので、アプリレベルでみたとき全体の市場の活性化にもつながりますし、方向性は同じであるとも見ています。将来、そのようなニーズがあれば、ドコモとしてFireFox OSは検討の対象になるでしょう。
武岡氏:日本市場を考えた場合、対応するチップのパフォーマンスなどから判断して、Tizenという結論になりました。日本ではローエンドと呼ばれる機種も、グローバルでみた場合ハイエンドな端末という分類に入りますので。
――端末ラインナップですが、Tizen端末はNEXTシリーズでの投入ということになりますか。
武岡氏:どのシリーズという以前に、まずドコモのスマートフォンとしてどう投入していくかで考えています。Tizen OSやHTML5というだけでも、一部のマニアやガジェッターにはアピールできますが、Tizen端末はそのような売り方をすべきではないと思っています。むしろ、一般ユーザーの多様なニーズに応えるための機種のひとつとして考えます。すでに市場でも評価されているAndroid端末と同じものを出しても勝てませんので、新しい分野でのサービスなど、既存の機種やモデルにないものを考えています。
――具体的にはどのような差別化を考えているのですか。
武岡氏:スマートフォンとしての基本的な作法というか操作方法はあまり変えても使いにくくなるだけと思っていますが、仮想画面の設計、アイコンによる操作の工夫、ウィジェット操作の工夫など、さらにアプリのパフォーマンスや電池の持ちなど基本的な性能部分もあると思います。やはり、HTML5というのが、ひとつのポイントになると思います。たとえば、i-modeの認定コンテンツプロバイダには、Web由来の企業やサービスが少なくありません。HTML5対応によって、このようなCPが、スマートフォンのネイティブアプリに対抗できるようなサービスやアプリを作りやすくなれば、サービス面での差別化がだせるでしょう。同時に、FireFox OSとの違いでもあるのですが、Tizenではネイティブアプリの開発も可能です。新しいOS、HTML5といった技術面を押し出さなくても、Webとの親和性やネイティブアプリの良さといった言わば「いいとこどり」のサービスが展開できるのではないかと思っています。
――最後の質問なんですが、ドコモがTizen Associationの議長として活動する意義や目的についてお聞かせいただけますか。
的場氏:ドコモとしてはグローバルなエコシステムを作りたいという思いがありましたから、プロジェクトの中で、新しいOSができたからそれを採用します、といった受け身で参加するより、自分たちからも提案し、リードしていきたいと考えました。Tizenのようなグローバルな枠組みにボードメンバーとして参加することで、ドコモや日本からの要求をそこに届けることができると考えています。
武岡氏:海外市場を見た場合、コンテンツの審査、セキュリティの基準、カード決済の方法など違いがあります。国をまたぐコンソーシアムや業界活動の場合、それらの違いをいかにそろえていくかは重要です。そこに日本市場の要望なりが反映できればユーザーのメリットにもなりますし、また日本で先行する技術やサービスなどを提供することでグローバルに貢献できると思っています。
――本日はお忙しいところありがとうございました。
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