幼稚園・保育所の実態と課題が浮き彫りに…ベネッセ次世代育成研究所が調査 | RBB TODAY

幼稚園・保育所の実態と課題が浮き彫りに…ベネッセ次世代育成研究所が調査

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調査報告の模様。左から無藤氏、後藤氏、真田氏
調査報告の模様。左から無藤氏、後藤氏、真田氏 全 2 枚
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 ベネッセコーポレーションのシンクタンクである「ベネッセ次世代育成研究所」は4月17日、「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」報告会を開催した。同研究所の主任研究員の後藤憲子氏と研究員の真田美恵子氏、白梅学園大学教授の無藤隆氏が登壇。2012年11月~12月にかけて行われた同名の調査について報告を行った。

 全国の認可保育所・幼稚園の園長を対象に実施されたこの調査で、回答が得られたのは保育所3,705件、幼稚園1,377件、認定こども園139件。同研究所では、2007年に全国の国公私立幼稚園を対象にした基本調査、2008年に全国の認可保育所を対象にした基本調査を行っており、本調査では、そこから4~5年を経過した現在の状況と課題を浮かび上がらせる形となった。

 「調査の結果、大きく4つの点が明らかになりました。幼稚園・保育所の幼児教育・保育における実態と課題が見えたと思います」と真田氏は言う。

 1つは、必要年齢層での保育所の定員超過と、幼稚園の定員割れだ。前者では0~2歳児層を受け入れる施設で61.8%が超過受け入れを、一方で後者では私立の79.4%、国公立の94.2%が定員割れをしており、サービスのアンバランスさが伺える。

 2つめは、現状の認定こども園への移行希望の低さ。「認定こども園設置法」施行の2006年10月から、思うように数が伸びない認定こども園だが、私立幼稚園で「条件によっては、認定こども園に移行してもよいと思う」と答えたのは36.0%と、約3園に1園にとどまった。深刻な待機児童問題を受けて、私立幼稚園の動向が増加の鍵となるだけに、この結果は頭が痛い。

 判断できない理由として、多くの私立幼稚園があげるのが「詳しい内容がわからないので、判断できない」(22.4%)。さらに、移行の決定を下す際に特に重視する条件としては、私立幼稚園の62.2%が「移行するための施設整備費の保障」をあげる。幼稚園として運営してきた施設に保育所の機能を持たせる場合、「調理室」や「あずかり保育のための部屋」などを新たに設置する必要があることが多い。その費用をどこから持ってくるかがネックになっているようだ。ちなみに、同じ質問に対して私営保育所の41.4%は、「保育者の処遇(給与)を改善するための人件費の充実」と回答。こちらは人材確保など別側面の問題としても捉えられるべきだが、いずれにしろ施設に費用面での課題があるのは明らかだ。

 後藤氏は2点に対し、次のように述べる。「国では認定こども園制度の改善を進め、移行する園を増やそうとしていますが、移行希望は私立幼稚園で約3園に1園に過ぎないのが現状です。認定こども園への移行を希望する園には、施設整備費や人件費の保障と充実を進めるとともに、先行している認定こども園の成功事例や課題、実践上の工夫に学んだ制度設計を行うことが重要です」。

 3つめの要点としてあげられたのが、保育者の非正規雇用率の高さである。特に国公立の幼稚園・保育所では、前者が47.1%、後者が54.2%とどちらも約半数を占める。背景には、施設運営費が一般財源化されたことにより、人件費の捻出がより難しくなっていることなどがある。真田氏は、「保育の長時間化などの側面を考えると、一概に非正規雇用の増加が悪いとも断定できない。研修期間がとれないなど、専門性を上がりにくくしている要因は取り除くべき」と補足した。

 4つめは、保育者の質の向上のためには何が必要かだ。私立幼稚園・保育所の約8割が「保育者の待遇改善」を選択したことがあげられた。私立幼稚園では77.2%、私営保育所では83.4%が回答している。さらに全体では「養成過程の教育内容の充実」(66.2%)、「保育者同士が学び合う園の風土づくり」(61.9%)の順で高ポイントとなっており、保育者育成のために園内外での多様な取組みが求められていることが明らかとなった。

 3、4点めについて後藤氏は「保育の量的な拡大は引き続き必要。しかし、それだけでは十分とは言えません。保育者が安心して働ける労働条件の改善や、専門性を高めるための研修機会の保障など、多様な取組みを通した保育環境の質の充実も大切」とコメント。ひいてはそれが、子育て世代が安心してわが子をあずけられる園が増えることにもつながるとした。

 締めくくりに、無藤氏が本調査に関して「全国規模で幼稚園・保育園をサンプリングしており、ひとつの調査の中で幼稚園、保育所、認定こども園を比較できるというのが今までにない点」とした。さらに、昨年8月に制定され本年度から実施される「子ども・子育て関連3法」や、関連3法を受けて間もなく始まる「子ども・子育て会議」にも触れ、施策の検討にあたっては本調査の結果も十分参考にし、子どもが家庭や園でよりよく学び、育つための環境整備が進められることを期待するとした。

《寺島 知春》

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