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【テクニカルレポート】情報社会を支える画像認識・文書解析技術の最新動向……日立評論

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図1:日立グループの画像処理技術
図1:日立グループの画像処理技術 全 9 枚
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4.適用事例

4.1 自動車事故防止のための画像処理応用
 日立グループは,自動車向け画像認識として主に近傍センシング用モニタカメラとステレオカメラ向けの画像認識技術の開発を行っている。適用例について以下に述べる。

(1)リアカメラを用いた路面標示認識
 駐車する際の後方のモニタ用として多くの車に搭載されているリアカメラの映像を流用して,前述した画像処理ライブラリを用いて路面標示の種別および車両との相対位置を算出し,地図DBに記録した路面標示の位置と比較することでカーナビゲーションシステムの自車両位置測定情報の高精度化を実現した(図5参照)。

(2)周囲監視カメラによる移動体検知
 車両の移動状態を考慮することで周囲監視カメラの映像から自車両周囲の歩行者などの移動体を高精度に検出し,ドライバーに警報するシステムを実現した(7)(図6参照)。

(3)ステレオカメラによる予防安全
 日立グループは,富士重工業株式会社との共同開発によりステレオカメラの製品化を行うとともに,将来的なアプリケーションとして,カーブ前での減速制御を目的としたカーブ道路線形の推定,道路逸脱防止制御を目的とした道路端認識アルゴリズムの開発に取り組んでいる(8)(図7参照)。

4.2 文書認識の応用
(1)領収印の読み取り
 カラー文書処理技術の応用例の一つが領収印読み取りである。従来技術では,あらかじめ押印や帳票の色を指定する必要があったのに対し,この技術では人間の知覚に近いカラー空間を用いた色彩の区分けによって押印色と帳票印刷色を自動的に分離して文字認識ができる。低品質な押印に対しても読み取れるため,税納付の期限チェックなどの用途で利用されている(図8参照)。

(2)仕様データ点検支援ツール
 ビジネスのグローバル化が進むにつれて,海外ベンダーや顧客が作成した英文の仕様書の処理負荷が増えている。このツールは,電子文書や紙の文書から仕様データを抽出し(9),自社製品の仕様項目と適合するか否かを点検する作業を支援する。英文仕様書にはさまざまな様式が存在するが,文書の構成要素(章,節,文,キャプション,表)の解釈を多重化し,チェックしたい仕様項目を定めたオントロジーを解釈する文書パーサにより,仕様データの抽出精度を高めている。予備実験ではデータ入力・点検にかかる作業時間を約半減した(図9参照)。

5.おわりに

 ここでは,画像認識技術と文書解析技術に関する最近の動向,およびハードウェア・ソフトウェアを含めた応用事例について述べた。今日の情報化社会では日々膨大な画像・文書データが生成・蓄積されている。より高度な画像認識・文書解析技術の開発を通して,こうした大量にある画像・文書データの利活用に必要となる情報インフラ環境が提供できる。


■参考文献■
1) T. Shima, et al.:A Vision-based road marking detection system for car navigation using an on-board rear view camera, 15th World Congress on Intelligent Transport Systems(2008)
2) 樋口,外:リアカメラの画像を用いた路面標示認識システムの開発,ViEW2008 ビジョン技術の実利用ワークショップ,精密工学会(2008)
3) T. Miyoshi, et al.:Simplifi ed Polynomial Network Classifi er for Handwritten Character Recognition, ICPR(2008)
4) T. Miyoshi, et al.:Character Normalization Methods using Moments of Gradient Features and Normalization Cooperated Feature Extraction, CCPR(2009)
5) M. Fujio, et al.:Logical Structure Understanding of PDF Documents for Generating Business Document Templates, DAS(2008)
6) 平山,外:仮説検証型アプローチを用いた定義レス帳票認識技術,FIT(2010)
7) 清原,外:車両周辺監視のための移動体検出技術の開発,ViEW2011 ビジョン技術の実利用ワークショップ,精密工学会(2011)
8) 樋口,外:ステレオカメラによる立体物情報を用いた道路形状推定,ViEW2009 ビジョン技術の実利用ワークショップ,精密工学会(2009)
9) M. Seki, et al.:Information Management System Using Structure Analysis of Paper/Electronic Documents and Its Applications, ICDAR (2007)


【執筆者紹介(敬称略)】
・永崎 健
1999年日立製作所入社,中央研究所 情報システム研究センタ 知能システム研究部所属
現在,文書解析,文字認識の研究開発に従事電子情報通信学会会員,情報処理学会会員
・川股 幸博
1993年日立製作所入社,日立研究所 情報制御研究センタ スマートシステム研究部所属
現在,自動車の安全を支える画像処理技術の研究開発に従事情報処理学会会

※本記事は株式会社日立製作所より許可を得て、同社の発行する「日立評論」2013年2月号収録の掲題論文を転載したものである。
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