【インタビュー】ARはどこまで浸透する?印刷業界の動き
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また、印刷業界も独自のデジタル化を模索し、新しい商品や付加価値サービスを生み出している。今回、ARを電子書籍や商業印刷に取り入れ、新しいビジネスを広げようとしている暁印刷という会社の事例を取材した。
同社はおよそ80年の歴史を持つ中堅印刷会社。同社のデジタル化の歴史は、他の印刷会社と同様に組版データの電子化から始まっている。DTPや製版フィルム・刷版のデジタルデータ化を経て、本格的な電子書籍を手掛けたのは、2004年ごろ。当時はPDAと呼ばれる電子端末向けのコンテンツ制作を主に手がけていたそうだ。その後2000年代後半からケータイコミックの市場が立ち上がり、デジタルコンテンツが一気に増えた時代も、コミックやケータイ小説のコンテンツの制作・オーサリングを行っていた。この流れは現在も続き、EPUBによる電子書籍やその他電子書籍のプリプレス、オーサリングをビジネスとして展開している。
暁印刷 営業本部長 原田幸雄氏は「デジタル化や電子書籍の時代において、印刷業は小ロットのニーズを無視することができません。弊社では『1部から100万部まで』対応できる印刷会社を目指しているのですが、本格的なオンデマンドパブリッシングには機械設備等に多額の投資が必要だったりします。これをいかに克服するかは業界のテーマでもあります」と同社の電子書籍への取り組みを語る。
ARもその一環だが、電子書籍や商業印刷にARを取り入れるようになったのは、3年ほど前にデジタルマーケティングツールとして、電子すかしなどを検討していたことがきっかけだという。同社営業本部 営業推進グループ 蟻田晴彦氏によれば、「パンフレットなどに、IDを電子すかしとして埋め込んで、アプリで読み込むと動画が再生されたり、指定のURLに飛ぶというような仕組みで広告や販促ツールにならないか。ということを考えていました。しかし、このシステムにはいくつかの問題があり採用には至りませんでした」とのことだ。
その問題点とは、まず電子すかしを自分たちで自由に作れないこと。そのため、パンフレットのデザインや制作の自由度が制限されること。なにより、電子すかしの作成と連動コンテンツを作るのにコストがかかりすぎること。広告としては面白いが、そのための追加コストが販促ツールとして見合うものでなければ意味はない。
「弊社は印刷会社ですので、最終的には紙の印刷に結び付けたいと考えていますし、紙の価値がなくなったとは考えていません。したがってARはあくまで紙の印刷物に付加価値を与えるものであって、ARそのものでビジネスを考えているわけではありません。いくら素晴らしいユーザー体験を提供できるといっても、ARコンテンツだけに数百、数千万といったコストはかけにくいでしょう(蟻田氏)」。
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