【インタビュー】『終戦のエンペラー』ウェーバー監督……歴史を理解するために精神をとらえる
エンタメ
映画・ドラマ
注目記事

おもな舞台は大空襲で焼け野原となった東京。1945年8月、日本が連合国に降伏し、マッカーサー元帥率いるGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が上陸するところから始まる。主人公は、マッカーサーの部下、ボナー・フェラーズ准将。「この戦争の真の意味での責任者を探せ」。元帥が准将に指示した極秘調査から物語が動き出す。
映画では、日本文化を愛する主人公の葛藤をはじめ、日本の戦犯たちの思惑や謎、不可解な御前会議、玉音放送前夜のクーデターなどが細かく描写され、マッカーサーと昭和天皇が並んで撮影されたシーンへと向かっていく。
今回は、ウェーバー監督に、本作品を通して垣間見たニッポンについてなど、いろいろと聞いた。
--- 日本の凄惨な空襲痕と、“日本美”が交互にスクリーンに現れる。
ウェーバー監督 --- 僕は、10回ほど日本を旅した。大阪・京都、それから富士山や温泉にも行った。全国を旅したわけじゃないが、これまでの旅を通じて、日本のいろいろなところを見てきたつもりだ。実はこれから北海道に行きたいと思ってるんだ。
--- 「この国(日本)は矛盾だらけだ」というセリフは監督の想いも重なる?
ウェーバー監督 --- どこの国にも不条理はあると思う。でも日本だけが矛盾だらけの国だとは思わない。非常に鮮烈で、唯一無二の文化があることは間違いない。
--- 脱いだ靴を外側に向けてそろえたり、お辞儀をするシーンなども細かく描いている。
ウェーバー監督 --- いまと昔とはまた違うと思うが、やっぱりこの国には特別な文化がある。非常に個性的な習慣や文化をつくりだす要因のひとつに、「島国」であることが挙げられると思う。マダガスカルなどの島国固有の動物と同じように、海で囲まれた国だからこそ、とても個性的で洗練されたスタイルがある。日本に対してはそう感じている。
--- 日本の焼け野原のシーンは、ニュージーランドで行なっている。
ウェーバー監督 --- かつて描かれた戦中戦後のニュース映画や、2011年の東北大震災で津波の被害を受けた地の映像などを参考にした文明が灰になった現場、黙示録的な世界、そこから再生する瞬間を描写した。頻繁に登場するジープなども、本物と同じものを集めた。
--- フィクションとドキュメンタリーの部分での折り合いや葛藤などは。
ウェーバー監督 --- ドキュメンタリーとドラマでは、当然できることが違う。ドラマでは、精神をとらえることが大事になってくる。“歴史の精神”をつかまえることが大切。そこに集中した。「歴史を理解する」という部分は揺るがないが、完全に正確でなくてもいい。ドキュメンタリーは、事実に従って描くもの。だから使う筋肉が違うというかな。
--- 登場する人物それぞれの精神が巧みに描かれている。
ウェーバー監督 --- すべての人物に“スペース”を与えることが僕の仕事。その世界のマネージャーをしているという意気込みで挑む。そのためには、ドラマだからこそ、事実や事象の確固たる裏打ちがないとできない。この映画の根底には「歴史を理解する」という想いがある。日本とアメリカが絆をつくりあげていく瞬間瞬間にスポットを当てている。
--- 制作するにあたり、観客の姿をはじめとしたターゲットを思い描いたことはあるか。
ウェーバー監督 --- ターゲットなんてない。世界じゅうの人が見て面白いと思ってもらえる作品にすること、とにかく最高の作品をつくりたいだけ。そのあとは……、松竹(配給)が考えること(笑)。
『終戦のエンペラー』は全国にて公開中。
《大野雅人》
特集
この記事の写真
/