渡辺謙、初めて本格的に共演した佐藤浩市は「共犯者」
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クリント・イーストウッドが主演・監督を務めた名作西部劇が、明治維新後の北の大地を舞台に再生。かつては“人斬り”と怖れられながらも、いまは北の地で静かに暮らす男が子どもたちとの生活のために高額の賞金稼ぎに加わり再び刀を抜くのだが…。イーストウッド、ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマンというハリウッドきっての名優が演じたメインキャストを渡辺さん、佐藤さん、柄本さんが務めている。
李監督は、19~20歳頃に映画館で観て感銘を受けたというこの世界的な名作のリメイクについて、「『悪人』を経て、善悪で終わりきれない世界をもう一度描きたいという気持ちがどこかにあった」と自らの中から沸き立つ欲求を明かしたが、「失敗したら日本どころか世界のどこにも居場所がなくなる…(笑)」と冗談めかしながら“覚悟”を覗かせる。
「ようやくできたなという気持ち。全てのシーンにエピソードがあり、思い出深い」と映画が完成しての感想を語る渡辺さん。『硫黄島からの手紙』で主演俳優と監督という関係で現場を共にした“盟友”イーストウッドによるオリジナル版の存在について、「イーストウッドにとってもこれまでと違うエポック・メイキングな作品となったと思う。話がエンドレスに巡っていき、終わりなく“生きていく”というのは人生と同じ。痛みや喜びがない混ぜになっていく。明快な答えを出さないというところは踏襲しようと思ったし、いまでも答えが出ずに悩んでいます」とその“重み”を語る。
一方で「日本の風土や複雑な歴史に置き換えたときに、全く独自の世界観を持つ映画になるという確信があった」と、単なる舞台を置き換えただけのリメイクではない点に自信を覗かせた。
街を力と恐怖によって支配する男を演じた佐藤さんは、「何も考えずに現場に入った」とそっけなく語るが、李監督によると「撮影の2日目の朝に『新しい佐藤浩市を見せる』と宣言された」という。渡辺さん演じる十兵衛を始め、人々を追いつめていく役どころだが、佐藤さんは「僕が李監督に追い詰められていく凄惨な日々だった」と苦笑交じりにふり返った。
渡辺さんと佐藤さんの共演はNHKの大河ドラマ「炎立つ」であるものの、ここまで濃厚なやりとりを交わすのは今回が初めて。互いの印象を尋ねられると、佐藤さんは「そんなこと照れくさくて言えるわけないよ!」と言いつつも、「互いに30年やってきて撮影所で顔を合わすこともあったけど、この年になってこういう作品で一緒にできるのは光栄。いつも威風堂々としていて、座長として全てを受け止める度量は僕にはないもので素晴らしい」と語る。
渡辺さんは「アプローチの難しい作品であり、高い山に登らなくちゃいけないけど、共演者というより“共犯者”。心強かったです」と強い信頼を覗わせた。
本作はヴェネチア国際映画祭に特別招待作品として出品されることも決定しているが、渡辺さんは「ウエスタンとは違う、痛みや湿度がどのように伝わるか楽しみです」と期待を口にした。
『許されざる者』は9月13日(金)より公開。
《text:cinemacafe.net》
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