サンフランシスコITベンチャー最新動向:プラットフォームビジネスが成功のカギ
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●プラットフォームビジネスのエコシステム
まず、全体を通じて感じたことは、米国ではPaaSといったプラットフォームビジネスの市場が広がっており、各種ベンチャー企業の成功をドライブしているという点だ。日本でもPaaSを提供するベンダーやプロバイダーは少なくないが、現地においては、大企業からベンチャー企業まで積極的にビジネスやソリューション、さらには自社のサービスやアプリケーションに活用している。
そのようなプラットフォームベンチャーは、AmazonやWindows AzureなどIaaSを活用しリソースコスト削減や事業の柔軟性を向上させるのが基本的なスタイルだ。その上に自社のサービスやプラットフォームを構築し、エンドユーザーや企業に提供するビジネスを展開する。このとき自社にない機能でも他のベンチャーが企業が提供している有用なプラットフォームやAPIサービスがあればそれも活用し、自社サービスの付加価値を向上させたり、ポートフォリオを充実させる。
また、ベンチャーが提供するPaaSは、多くの場合、エンドユーザー向けに無料提供枠を設けている(ストレージならば10GBまで無料など)。利用プランもエラスティックであるため、別のベンチャーがエンドユーザー向けのモバイルアプリケーションやサービスに、これらのプラットフォームを活用しやすい。
●プラットフォームベンチャーの例
いくつか例を見てみよう。LiveOpsという会社は、企業向けのコミュニケーションプラットフォームを提供している。企業は、同社のプラットフォームを利用することで、メールやチャットなどのサービスの他、IPフォンによる音声通話やコールトラッキングのサービスや業務システムを簡単に構築できる。SNS連携の機能やトレンド分析などの機能も利用できる。
SendHubというベンチャーは、BYODシステムの基盤を提供する。同社の基盤を利用すると、個人所有の端末でも、仕事関係の通話を切り離すことができ企業のセキュリティや料金管理とプライバシーとの混在を防ぐことができる。日本でいえば050Plusのサービスに似ているが、テレカンファレンス機能、一斉通信機能の他、ログ解析やコンタクトリスト管理・共有機能なども備えたプラットフォームだ。もちろんマルチデバイス対応なので、特定の端末と紐づくこともない。
SendGridという会社は、mail APIプラットフォームを提供する。スパム対策のためDKIM、SPFといったドメイン名認証にも対応しているのが特徴で、Square(北米で普及しつつあるスマートフォンを使ったクレジットカード決済サービス)やPinterestなどがメールシステムに利用しているという。
Parsというモバイルバックエンドシステムのためのプラットフォームを提供する。Webから各種モバイルアプリ(iOS、Windows Phone、Android)のために、データマネジメント、各種分析、ERPやCRMなどエンタープライズシステムとの連携やサーバーサイドマネジメントシステムを提供するアプリケーションプラットフォームだ。SIerやアプリプロバイダが主な顧客だが、無料プランも用意されている。2011年の起業ならが、すでに6万以上の顧客がいる。
●開発者はWindowsでなくMacを使う
最後にベンチャー企業のオフィスや開発作業のトレンドを見てみよう。ひとつの動きとして、オフィスが郊外のパロアルトやサンノゼといった地区から、サンフランシスコ市内に増えているという点がある。セールスフォースのように成功してからシリコンバレーに引っ越す例もあるが、多くのベンチャーは、家賃の安い市内にオフィスを構えてスタートする。Dropboxなどもオフィスは市内である。
内装などにお金をかけないからか、ロフト風にダクトやら梁がむき出しのオフィスが多いのも特徴だ。もちろんパーティションなどもなければ個室も少ない。会議スペースなどパーティションで分離させることはあるが、カウチソファとローテーブルを並べて適宜ミーティングなどを行うスタイルも多い。
このソファのスペースは、作業にも使われる。開発者がノートPCを使ってソファで座ってコードを書くのである。机はあるのだが、デスクトップ型PCで作業している人は少ない。デスクトップ型に大きいディスプレイを必要とするのは、デザイナーやグラフィックスを扱うスタッフやエンジニアだ。
開発言語にPython、Ruby、PHPなどが多いので、開発に使うPCはノートタイプで充分のようだが、Windowsマシンを使っている人はほとんどいない。こういったベンチャー企業で見かける「PC」は圧倒的にMacBookだ。もはや西海岸で開発用のPCはWindowsではなくMacといっても過言ではない。
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