【インタビュー】船出から1年、作家エージェント会社「コルク」が感じた手応え(後編)
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
■作家が物を作ることだけに価値を持つことで新たな展開もスピーディーに決まる
――「コルク」は、コンテンツのデジタル化についても積極的に進められています。安野モヨコさんの「オチビサン」が電子化され、英語版の発売もありました。こちらの経緯、反響を教えてください
まず、なぜ電子化したかというと、僕は基本的に作家の持っているものは全て電子化しようと思っています。よほど作家が嫌だと言うもの以外は。英語版については、英語の勉強になればいいなと思って日本で売っていますが、そんな本がほかには無いし、中々気づいてもらえないので、反響はまだ無いです(笑)。ただ、「Yahoo!占い」というスマホアプリで「オチビサン」をモチーフにしたタロットカード占いを提供していたり、コンテンツの認知を上げる作業は色々とやっています。こういう風にして色んな形で作家の才能を出していくというのがすごく重要です。こういったことも、出版だけを基準に考えていた場合、凄く高い製作費をもらわないとやらない世界だったりします。僕が出版社にいたら実現は難しかったでしょう。
――ネット上と紙において、収益を生み易いコンテンツは異なるのでしょうか?
全くタイプが違うと思います。ネット上はやはり読み捨て感が強いものが向いています。例えば「水戸黄門」とか「渡る世間は鬼ばかり」みたいなドラマって、ドラマはみてもDVDは中々買わない。でも1つ1つのDVDは売れないかもしれないけど、サブスクリプションモデルみたいなものに組み込めばきっと高い視聴率を稼いでくれる。今まではそれぞれの業界に1つの土俵しかなく、その中で視聴率をどうやって稼ぐか、単行本をどう売るか、その業界の持っている指標をもとに何かコンテンツを作っていました。それが、ネット上には色んな指標と場があるので、その業界やそれぞれのコンテンツにぴったりの場所で露出しないと見つけてもらえなくて、売れないということになります。作るとともに、どこに出すかを考えるエージェントが、より価値を増すだろうし、重要だと思っています。
――デジタルコンテンツということでは、「N'sあおい」のこしのりょうさんを起用して企業のHP上でWeb漫画を展開されていますね
抗体医薬の研究開発に取り組んでいる協和発酵キリンさんのHPで、「新抗体物語」という漫画を連載しています。HP上で免疫・抗体について伝える漫画を書いてもらえないかと。広告漫画を書いてくれ、ではなくて、抗体について伝えることだけを希望されていました。であれば、面白い漫画にできるなと純粋に思いました。抗体というのは元々みんなが興味を持っているテーマでもあるので。そこで、じゃあ作家は誰がいいだろうなと考えた時に、「N's<ナース>あおい」「町医者ジャンボ!!」で活躍していたこしのりょうさんがいいと思ったわけです。今の時代は単行本が売れる作家が尊重されます。こしのさんはそういうタイプの作家ではありませんが、読みやすくて親しみやすい漫画を書くことはすごくうまい。「N'sあおい」は週刊モーニングで連載中、アンケートでいつも1位でした。モーニングを買ったほとんどの人が「N'sあおい」を読んで、面白かったと思うからアンケート1位になる。「水戸黄門」とか、「渡る世間は鬼ばかり」みたいな強さを持っている漫画家なんです。「新抗体物語」というのもWeb上で無料で見せていくものだから、だとしたらこしのさんがベストだなと思いました。そもそも医療系のことに興味を持っている方でもありますし、初めに話を持って行った時も「よし、やろう!」と即決していただきました。
《白石 雄太》
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