中田ヤスタカの「CAPSULE」、移籍第1弾は意外な佇まい
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CAPSULEの中田ヤスタカはPerfumeときゃりーぱみゅぱみゅの全作品を手がけ、また他アーティストからも引っ張りだことなっていた中で、この新作をアルバムとしては1年ぶりに完成させたわけだが、前作『STEREO WORXXX』でのダンス・ミュージックとしての機能性を追求した内容とは打って変わって、ダンス・フロアではなく室内でのリスニングに適した作風となっている。クラウドが手を上げて絶頂に達する光景を思い描いてのものではなく、とてもパーソナルで聴き手の心象風景を共に描いていくような穏やかな楽曲が並んでいて、恐らく多くの人が肩透かしを食らったことだろうと思う。つまり世の中が求める中田ヤスタカの音楽=Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのようなエレクトリック・ポップ・ミュージックはここではほとんど姿を見せないのだ。
しかし、個人的にはこの変化はごくごく自然なことだと感じられる。ここ1年間に求め続けられたアッパーなサウンドへの反動と言えばわかりやすいだろうか。たとえば4曲目の「12345678」なんかはプログレやジャーマン・ロックに近い佇まいを持っており、6曲目の「ESC」も現代音楽に通じるところがある。続く7曲目の「SPACE」は曲名通り、広がりのある音作りで、映画のサウンドトラックの1曲というような雰囲気を漂わせていたり。CAPSULEのもうひとりのメンバーであるこしじまとしこのヴォコーダー・ヴォイスをフィーチャーした楽曲もあるにはあるが、むしろこのアルバムにあっては異端とも言えるほど浮き上がっている。
プロデューサー、DJとしての中田ヤスタカではなく、音楽家中田ヤスタカとしてのアルバム。これまでその境界線があいまい、もしくは混在していたように思えるが、ここに来てはっきりと認識することができるようになったように感じられる。第二の小室哲哉だと思っていたら、よく見てみると坂本龍一になっていた。下世話な言い方かもしれないが、そのドラスティックな変化にはふさわしい例えだと思う。プロデューサーとして求められていることに対応すればするほど、反動は強くなっていく。時代と寝れば寝るほど、音楽家としての中田ヤスタカはおもしろくなっていく。世界110か国で配信されたのも大いにうなずけるし、各国のカッティング・エッジなリスナーはもちろん、ファッションとの関わりを密にしていた中田ヤスタカだけに海外のファッショニスタたちの反応も気になるところだ。今後の彼の仕事量を注視していきたい。
CAPSULEは作詞、作曲、編曲、プロデュースを担当する中田ヤスタカと、ヴォーカルのこしじまとしこによって97年に結成されたユニット。2001年にシングル「さくら」でデビューした。現在までに14枚のアルバムをリリース。中田ヤスタカはデザイナー、モデルの酒井景都とのユニット、COLTEMONIKHAとしても活動している。
《油納将志》
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