自衛隊が「ソフトウェア無線機」を公開---NECが開発し、3.11でも活躍
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いままでは無線の種類によって異なる機器を用いて通信を行なっていたが、新しいソフトウェア無線機ならばソフトウェアをインストールすることにより、さまざまな種類の無線機に対応できる。例えば普段は陸上自衛隊の無線機として使用し、災害時は各自治体が使用している防災無線に対応させられる。地域と自衛隊員が直接コミュニケーションを取れるようにできるため、東日本大震災では大いに活躍したそうだ。さらに今後は陸海空自衛隊で統合運用させたり、米軍との通信も可能になる計画もある。
記者会見に登壇したNEC パブリック ビジネスユニット 理事・伊藤康弘氏と、 防衛ネットワークシステム事業部長・受川裕氏は、「ソフトウェア無線機は低コスト化と小型化に効果があった」と語る。
いままでの無線機では、通信網ごとに機器を用意する必要があったが、ソフトウェア無線機ならば1台で何通りの通信網にも対応可能。そのため、いままでは無線機を自衛隊車両に搭載する際にシートをひとつ外す必要があったが、新型のソフトウェア無線機はコンパクトなので、シートを取り外すことなく搭載が可能になったそうだ。会見場には従来の無線機と新型のソフトウェア無線機が展示されてあり、体積比は約半分だった。
操作面でもっとも大きな変化は、無線機に新たに追加された「タブレット端末」だ。このタブレット端末はAndroidで動作しており、ほぼすべての操作を行なえる。音声通信だけでなくメールの送受信や地図を使った位置情報、データ通信などにも対応。いままでの無線機で現在地を知らせる場合は音声に頼っていたが、新型無線機ではタブレットを使って地図と絵で位置を知らせることができる。会見で行なわれたデモンストレーションでは、地図上にマークをつけた情報を無線で飛ばし、他の端末に表示させていた。
受川氏は、「自衛隊員が普段使ってるスマートフォンと同じ感覚で無線機を使えるため、操作性に優れている。また、液晶画面で操作するため、無線機本体からボタンやスイッチを減らせ、コスト削減につながった」とコメントした。
会見では自律分散型ネットワーク(アドホック)技術の概要も紹介された。自律分散型ネットワークとは、通信網の中枢を担うアクセスノードから通信が遮断された際に、通信可能な端末同士が自動的にネットワークを構築する仕組み。この技術により、部隊が基地から遠く離れたときも、部隊内で相互通信が可能になる。
これらの通信は防衛用途で使用されるため、通常のIPネットワークで発生しがちな遅延がおこらない仕組みになっているのも特徴だ。これは兵器を運用する際にはもっとも重要で、通信経路を最適に選択する技術や優先処理を行なう技術によって、ネットワーク状況が変化しても遅延時間と伝送容量の保証が行なわれている。
このように防衛事業として開発されたソフトウェア無線システムだが、実はすでに民間にも展開されている。現在運用されているのは列車無線で、小田急電鉄に導入されているシステムがそれだ。また、今後は地方自治体の防災無線や、海外への展開も計画中。受川氏は、「ソフトウェア無線は海外でも需要があるという調査結果が出ている。今後は国内だけでなく、海外での展開も考えている」と語った。
《佐藤隆博》
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