【インタビュー】キャリアメールの提供は使命のひとつ……ドコモメール提供の背景
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NTTドコモは、i-modeメールからspモードメールへとスマートフォンを意識した機能拡張を行っており、この10月にはクラウドに対応した「ドコモメール」のサービスを正式に開始した。今回はドコモメールの意図やメリット、サービスインまでの経緯について、開発担当者に聞いた。インタビューに応じてくれたのは、NTTドコモ スマートライフ推進部 コミュニケーションサービス担当部長 太口努氏、同担当課長 山口朋郎氏の2名。
――まず、ドコモメール導入までの経緯を簡単に教えてください
太口氏:ドコモはかつて、インターネットの世界とメールをやり取りできるようにと、「docomo.ne.jp」というドメイン名を割り当てたiモードメールのサービスを開始しました。このサービスは現在も続けていますが、次第にスマートフォン向けのアプリによるメールサービスも必要ということになってきて、2012年の秋にspモードメールサービスを開始しました。
このspモードメールは、iモードメールをスマートフォンアプリで使えるようにしたもので、iモード上のUI・UXに準じたものでした。その後スマートフォンの高機能化・大画面化が進む中、よりスマホに適したUI・UXが提供できないか、中身についても一新させたい、と考えました。それがユーザーにとっても分かり易いメリットになるのではないかと。そして、“spモードメールのクラウド化”、“UI・UXの大幅な刷新”を大きな狙いとして、キャリアメールの進化というプロジェクトがスタートしました。それがドコモメールの始まりです。
――ドコモメールは当初2013年の1月ごろにはサービスインするとアナウンスされていました。それが10月までずれ込んだのはなぜですか?
太口氏:サービス開始の遅れについては、パフォーマンスや品質を第一に考えたため、拙速にサービスインさせるより、遅らせても万全なものを提供するという判断をしたためです。通常でお使いいただく場合には問題ないが、メールの容量がかなり多くなってきたり、メモリへ高い負荷がかかったりといった状態において、お客様に満足いただけるようなパフォーマンスが出にくくなっているということが、開発を進めるにあたって見えてきました。
原因を調べていくと、端末側のデータベースの実装に問題があることがわかり、この部分を中心に、アプリの設計を根本的に見直すことを決めました。そこからプロジェクト体制も強化し、関係ベンダーさんとも一丸となって、正式ローンチにたどり着いたというところです。リリースまで時間をかけてしまいお客様にはご迷惑をかけてしまいましたが、その甲斐あって、パフォーマンスはかなりのところまで出せていると思います。
――クラウド化するなら端末側のデータベースにこだわる必要はなかったということはありませんでしたか?
太口氏:機内モード、圏外などオフラインの状態でも使えるようにしたかったので、ローカルのデータベースは外せませんでした。この部分は重要な価値だと思っています。
山口氏:機種変更された方など、spモードからドコモメールに変わる人がメールを引き継げるようにするためにもデータベース管理は重要です。
――キャリアメール離れという声もあります。既存のWebメールサービスとの違いはどこにあるのでしょうか?
太口氏:我々がこれまでも大事にしていて、ドコモメールでも引き続き重要と考えている価値に、“メールの表現性”があります。豊富な絵文字やデコメなど、表現力豊かなものをストレスなくお使いいただく。これはまず大きな優位点と考えています。それとメールアドレス(@docomo.ne.jp)が引き継げるので、古くはiモード時代からお使いいただいているアドレスをクラウド化して使い続けられることも特徴のひとつです。
山口氏:サービスをスタートさせて、実際ご利用いただいた方からもUIやパフォーマンスについて好意的な声をいただいて、キャリアメールそのものの手応えも改めて感じています。ドメインが変わっては困るとか、キャリアメールがなくなると困るという声もいただいています。もちろん、利用者のコミュニケーションスタイルも多様化してきているので、キャリアメール、Webメール、LINEのようなサービスのいずれかを必ずしも選んでもらうのではなく、かデバイスや目的に応じて使い分けてもらえればいいと思います。ドコモメールもWebブラウザやIMAPに対応し、様々なデバイス、環境でご利用いただけます。
太口氏:完全に割り切るのであればキャリアメールをやめてしまって、コミュニケ―ションの部分を他のOTTなどに全て任せてしまう、そういった考え方もあるでしょう。そこはコミュニケーションに対するスタンス次第だと思います。ドコモは、“新しいコミュニケーション文化を創造する”というコンセプトを変えずにここまで来ています。音声通信から始まって、ショートメッセージやiモード、今回のドコモメールまで、コミュニケーションを豊かにする手段として必要なものを提供する立場にあり、それが使命です。その使命の中にキャリアメールも含まれます。今さまざまなサービスが登場し、適材適所で使われ始めていますが、もっと幅広く使えるように、またWebメールの機能や使い勝手に負けないように、ドコモメールも機能拡張していきます。
――iモードメールなどは今後終了させるということになるのでしょうか
太口氏:将来のことはわかりませんが、当然ドコモメールになるべく集約していくとは考えています。しかし、フィーチャーフォンのお客様も全てクラウド化していいものか、そこは大きな検討課題になっています。どのような形にしろ、キャリアとして多様なコミュニケーションニーズに応え、サービスを提供するのは使命でもあります。そこが他のサービスと違うところだと思います。
――本日はありがとうございました。
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