【カンヌ国際映画祭 第67回】“足し算・引き算”テク…ファッションチェック
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以前、普段はカジュアル志向だという寺島しのぶさんに話を伺ったとき、「日本は芸能界ですら、映画祭などオフィシャルの場でフォーマルを着てばっちり決めると、“どうしたの? はりきっちゃって”というような雰囲気になる。それでも、わたしはイベントに映画に敬意を払うために、ドレスを着るんです」と言っていたことを思い出しました。この意見に大賛成。
そして、今年もやって来ました、カンヌ国際映画祭のシーズンが。今年は日本から、ジョン・ウー監督の最新作『太平輪』(原題)に出演した長澤まさみが、すでにカンヌ入り。フォーマルドレスを着こなし、メイクもヘアもばっちりきめて、笑顔で堂々とレッドカーペットを闊歩する姿を見て、誇らしく感じました。フォーマルは露出が決めてですが、あくまでも上品に、がポイント。
その点、彼女が着用した、バストの下部に切り込みを入れたブラックドレスはほどよく大胆。普段、ここまで大胆に露出しない人が、こんなドレスを選ぶと、どきりとしますよね。フォーマルには、変身して“WOW”と思わせる、そんなギャップも大切ですから、この上品な露出と変身ぶりは大成功だったのではないでしょうか。
今年のレッドカーペットの傾向としては、プリント柄、レースなど、足し算のドレスが多かったよう。長澤さん、チョン・ドヨン、ブレイク・ライブリー、アデル・エグザルコプロスら引き算組に対し、ビーズやスパンコールびっしりの「アルマーニ(Armani)」のドレスを選んだニコール・キッドマン、パス・ヴェガ、ISSEI MIYAKEのBAOBAOバッグを思わせるドレスを選んだチャン・ツィイー、シフォンに柄がプリントされたロングギャザーワンピースを選んだオドレイ・トトゥ、ひらひらモチーフが無数についた白いドレス姿のレティシア・カスタ、花柄のベアトップフレアドレスのナジャ・アウマン、全身シースルーレースで身を包んだカーリー・クロスらが足し算組といえるでしょう。
ミニマルに勝負するには、スタイルや肌の輝きなどが必須。だから手強いですし、自身にしっかりとしたキャラクターがないと、いくら裾が長くても、単に地味な服装になってしまう危険性あり。それに比べて、足し算のドレスは着るだけで華やかになります。ゴージャスにする、という意味においては決して失敗することはないでしょう。馬子にも衣装というアレです。だた、ゴージャスにすると下品とか悪趣味とか、そんなマイナスすれすれのところで勝負する可能性も高くなります。どうでしょう、今回のカンヌの足し算組に、そんな危ないところを歩いている人もいないわけではないですよね…。
盛れば盛るほどゴージャスになるわけではないのが、ファッションの難しさ。とはいえ、ハイブランドのデザイナーたちにしてみれば、“盛り”によってブランドの個性を強調できたり、高価さを声高に叫んだりすることができるという利点があるはず。足すか引くかは、生き方にも関わる価値観の土台。今年は、例年以上にそんなセレブ達の価値観や趣味が顕著となったような気がします。
あくまでも個人の見解ですが、私には、ミニマルなチョイスをした女優たちのほうが、粋でかっこよく洗練されて見えました。足すとしても、ゾーイ・サルダナが着たフリルとチェーンを効かせたドレスあたりがちょうど良し。そんな風に考えるのも、引き算の美学を土台にした日本文化の中で育ったせいかもしれません。今年のレッドカーペット模様、あなたはどう見ますか?
【カンヌ国際映画祭】長澤まさみら女優陣の“足し算・引き算”テク…ファッションチェック
《text:June Makiguchi》
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