「日本らしいサッカー」はやっぱりガラパゴス | RBB TODAY

「日本らしいサッカー」はやっぱりガラパゴス

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日本対コロンビア戦(6月24日)
日本対コロンビア戦(6月24日) 全 6 枚
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 日本代表のW杯一次リーグ敗退が決まった。敗因は「日本らしいサッカーが出せなかった」ことにあるとされる。しかし、何度もはね返されるパターン化された攻撃と、同じ形で失点を重ねる守備を見ていると、「日本らしいサッカー」は随所に見られていたと言えるのではないか。「メイドインジャパン」のブランドと「クオリティの高い製品は絶対に売れる」というこだわりのため、国際市場でシェアを失っていった日本の家電メーカーとイメージが重なるのだ。

 日本と対照的だったのはオランダである。2010年大会の決勝戦と同じカードとなったスペイン戦において、オランダは5対1と圧勝、雪辱を果たした。2ゴールを決めたファン・ペルシーは、「監督のおかげ。試合は監督とスタッフが予想したとおりに展開し、そして我々が勝った」と語っている。攻撃型サッカーを志向し続けてきたオランダが「プライドを捨てて」「スペインに勝つためだけに」5バックスの守備的な布陣を敷いたのである。

 オランダのファン・ハール監督はこの変更について、「我々は4-3-3でスペインに勝利するだけのクオリティはない」と述べている。スペインを「格上」と認めた上で「弱者の兵法」を編み出し、王者にひと泡吹かせたかっこうだ。2010年に世界の頂点に立ったスペインは、世界中のチームから研究される対象となり、そして敗れた。W杯連覇が難しいとされる理由はここにある。スペインですら相手の研究にはまると一気に押し倒されるというのに、日本は「日本らしいサッカー」に執着した。

 志向の偏重はメディアを見ても明らかだ。日本でテレビ中継されるサッカーは、イングランドやイタリア、スペインのリーグ戦である。たしかにヨーロッパの「攻撃的なサッカー」は観ていて楽しい。いっぽう、南米型の「相手の得意を封殺するサッカー」はよほどのサッカー通でもないかぎりすぐに飽きる。だから中継されない。

 イングランド、イタリア、スペインの3カ国が揃って一次リーグで姿を消したのは偶然だろうか。1966年に優勝して以来決勝戦にすら進出していないイングランドでは、自国出身選手が32%しかいない現在の国内リーグ戦を見直す必要性が叫ばれている。「このままではワールドカップで通用する代表チームは作れない」ということだ。日本の目指すサッカーが「興行的に成功できるサッカー」であるかぎり、「華々しく散る」シーンはこれから何度も繰り返されそうだ。

筆者紹介:高木耕(たかぎ・こう)……神田外語大学ブラジル・ポルトガル語専攻教員(准教授)。1994年筑波大学大学院修士課程修了。外務省専門調査員、国連平和維持活動選挙監視員、国際協力機構長期派遣専門家を経て2001年より現職。「ポルトガル語」、「ラテンアメリカ政治論」、「国際開発論」などの科目を担当。ブラジルのリオデジャネイロとレシフェに5年ずつとコロンビアのボゴタに3年間住んだ経験があり、それぞれの国ではスタジアム、対戦カードを問わずサッカー観戦を繰り返す。昨年、テレビ朝日系「世界なるほど!CM学院」に出演している。

《高木耕》

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