【国際女性ビジネス会議】残業しない会社は業績が伸びます……小室淑恵氏
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小室氏は、自社および自身のコンサルティング経験から「残業時間を減らすと業績はアップします」と断言し、短時間で結果をだすワークスタイルの効果をアピールした。このように言うと、多くの経営者から必ず懐疑的な反応がくるが、これからの時代は長時間労働、転勤などを強いるスタイルは通用しないという。
なぜ、長時間労働や高度成長期のような会社・サラリーマンの考え方ではダメなのか。それはハーバード大学のデービット・ブルーム教授が提唱する「人口ボーナス期」と「人口オーナス期」から説明可能だと小室氏はいう。一般的な国の経済発展を人口およびその構成比の推移で特徴づけると、社会や経済が発展し、多産多死の状態から少産少子に移行する段階がある。これを人口ボーナス期といい、この期間は、多産の影響から子どもが増え始め労働力が豊富となる。相対的に高齢者が少ないため、社会保障コストがかからない。つまり人口ボーナス期は経済が発展しやすい。
中国、韓国、シンガポールなどが当てはまり、アジアの奇跡や日本の高度成長期などもこれで説明することができる。
しかし、少産少子の影響は長期的に労働人口の減少につながり、人口構成における高齢者の比率を押し上げる。いわゆる少子高齢化問題である。GDPは横ばいとなり、社会保障では収入の少ない若者が高齢者をより多く養わなければならなくなる。人口ボーナス期を経験した社会は多くの場合、この人口オーナス期へと移行していく。中国も間もなく人口オーナス期に突入すると言われている。
人口オーナス期の問題は多くの先進国が経験しているが、日本の場合はボーナス期からオーナス期への移行が急激であることが問題だと小室氏は指摘する。その理由は、高度成長期から景気後退局面に入るときに長時間労働や労働環境の改善を怠ったため、子育て支援や待機児童問題にも本気で取り組まなかったため、多くの女性が子どもを生もうとか二人目を生もうととか考えなくなったためだと分析する。人口オーナス期に入ったとき、人口問題に着目せず労働環境を整備したり、スタイルを変えるなど子どもを育てやすくする政策ではなく、直接的な経済政策や高度成長期の考え方のまま景気問題に取り組んだため、つまり少子化対策に失敗したため、現在の動労力をこの時失っていたのだという。
では、人口オーナス期にはどのような対策が有効なのだろうか。小室氏は人口ボーナス期、オーナス期、それぞれにあった労働環境や条件があるという。人口ボーナス期は、重工業が発達し、大量生産によって経済が支えられる。その結果、力のある男性が労働力として重宝され、生産量と経済はほぼ比例関係となり、長時間労働は経済的にも正しい戦略となり得る。また、労働力も多様性より均一であることが重要だ。企業は、残業、転勤、人事制度によって労働力をふるいにかけていた。
しかし、人口オーナス期では、頭脳労働の比率が高く動労人口が足りないので、使える労働力はフル稼働させたほうがいい。男女ともに働く必要がある。成熟社会では人件費が高くなるので、長時間労働より短時間で結果を出す働き方が重要となる。商品やサービスは量より質・多様性が求められるので、労働力も多様な人材で付加価値を生み出していく必要がある。
小室氏は、まさにルールは変わったとして、介護や育児をされると困るという企業は、良質な労働力の確保ができなくなるとする。3年後の2017年には団塊世代の介護がピークを迎えると言われ、そのジュニア世代に親の介護問題のしかかってくる。介護や子育てを支援する労働環境というのは、女性の権利といった問題だけで語るのではない。これからの日本のための新しいルールだと強調した。
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