町工場のものづくり精神から生まれたヒット商品「伸助さん」
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ワンタッチで伸縮する電動伸縮杖の「伸助さん(しんすけさん)」。日刊工業新聞社が主催する「読者が選ぶネーミング大賞」にも入選したユニークな名前の、ユニークなアイデア商品は「精密部品」を製造する会社から生まれた。
電動伸縮杖「伸助さん」を開発したのは、岐阜県羽島市の株式会社岩田鉄工所(販売は同社子会社の株式会社アイ・ティー・ケー)。同社は航空機や人工衛星の複雑形状部品や「電子部品表面実装機」を構成する精密部品を製造する会社だが、その高い“ものづくり力”により「伸助さん」ほかユニークなアイデアの商品を多数打ち出している。
1954年の創業後、町工場として地元の羽島市で親しまれている岩田鉄工所。60年以上の歴史を持ち、1996年に現在の代表取締役社長である岩田勝美氏が社長に就任した同社だが、本業と異なる分野で自社製品の開発を行うに至った転機は「世界的不況」にあった。2008年9月、リーマン・ショックにより岩田鉄工所の境遇が一変する。
「それまでは、下請けで東京スカイツリーの制振装置に用いる精密部品などを加工していたのですが、リーマン・ショックで売上が25%まで落ちました。このままでは社員を食わせていくことが出来ない。一体どうすればいいか、夜も眠れず、毎日必死に考えていました」と岩田社長は述懐する。
■リーマン・ショックから「自社製品」の道に
リーマン・ショック以降、自社製品の開発に取り掛かった同社。「ちょうどその頃、東京大学の准教授から『電動伸縮立ち上がり補助器』について相談がありました。結局『立ち上がり補助器』は実現しなかったのですが、同じメカニズムで何か新製品を作れないか考えました。そこで階段の昇り降りで困っているお年寄りが利用できる『電動伸縮杖』のアイデアが思いついたのです。」
2009年、電動伸縮杖の開発に取り掛かった同社。岩田社長は「あの頃、仕事が無くてヒマだったから一日で図面が出来上がったよ」と当時を語る。そして2010年に発売した「伸助さん」は、しばらくして一躍ヒット商品となった。「売れ出してからの半年間は受注をストップするぐらいよく売れた」という。主な購買層は、お年寄り自身よりも、お年寄りに杖をプレゼントする家族だという。
ヒット商品発想のきっかけについて「アイデアっていうのは、困ってる人のニーズを察知して生まれるものなんですよ」と語る岩田社長。「でも良い物だからといって放っておいて売れるわけじゃない。適切な宣伝が必要なんです。『伸助さん』の場合、最初は『かんぽの宿』で宣伝したのですが、これがさっぱり売れない。考えてみたら、日帰り1000円ぐらいで利用できる『かんぽの宿』の利用者は“杖としては”高額な『伸助さん』の購買層じゃなかったんです。失敗してようやく気づきましたね。」
その後、同社は「伸助さん」の廉価版で、販売価格を10000円以下に抑えた電池で動く電動伸縮杖「のび太くん」を開発。「のび太くん」のネーミングにあたっては、4か月間、著作権を持つ出版社等と交渉の上、使用許諾を得た。
■ネーミングのこだわり
商品のネーミングにも強いこだわりを見せる同社。電動伸縮杖「伸助さん」「のび太くん」「こづえちゃん」の他、充電式リモコンマイクスタンド 「マイクジョーダン」、携帯正座イス「らくちん楽座」などユニークな名前の商品を開発し、いずれも「読者が選ぶネーミング大賞」で5年連続受賞している。
今回の取材中、新商品のネーミングについて同社専務取締役である長男の岩田真太郎氏と話し合う姿を見せた岩田社長。「濁点と『ん』が入っている三文字の言葉っていうのは強いよね」と細かなネーミング観を呟いたのが印象的だった。
■ものづくりと郷土
日本のものづくりについて「ものづくりは国の基本。日本人の精神がなければ外国の会社に同じ物を作ろうと真似をされても同じ物は作られてしまいます」と国内企業の技術力と倫理性について語る。現在、地元の岐阜工業高専(岐阜県本巣市)と共同で「電動義手」を開発している同社。岩田社長は「地元で先代が始めた鉄工所を、この地で発展していきたい」と郷土・岐阜への思いを話してくれた。
2011年からはロンドンで行われている世界最大規模のクール・ジャパンイベント「HYPER JAPAN」に“五指可動型ロボットハンド”である「ハンドロイド」を毎年出展し“日本のものづくり企業”として世界で存在感を高めている同社。
ユニークなアイデア商品「電動伸縮杖」誕生の背景には、岐阜県羽島市の鉄工所が長年培った確かな技術力があった。
【地方発ヒット商品の裏側】「電動伸縮杖」を生んだ「精密部品」技術――岐阜・岩田鉄工所
《オフィス本折/H14》
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