電力自由化が消費者にもたらす選べる“自由”と“怖さ”……消費生活アドバイザー辰巳菊子氏
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一般家庭への小売りが全面自由化されると、事業者間に健全な競争原理が生まれることで「電気代が安くなる」ことを、私たちは一番に期待しがちではないだろうか。現在の電気料金について内容の是非はまた別の機会に紐解くとして、自由化後に適正な価格で電気が使えるようになることも確かに大事だ。しかしながら、一方で私たちが購入した電気がどのような「電源」で発電されたもので、その電源を選ぶことが長期的な視野で私たちの暮らしにどのように影響を与えるのか、広い視野で見渡す視点も養いたい。「安価である」ということだけが電気を選ぶ時の基準になってはいけないと辰巳氏は指摘する。
「これまで原子力は“発電効率が良い”ということで採用されてきましたが、その分リスクも大きい電源であるということをいま私たちは知っています。自由化後には、購入する電気がどのようなプロセスで発電されているのか、その電源を私たちが未来まで長く使うことが正しい選択なのかを考えて欲しいと思います。日本には太陽光や水力、風力など自然資源も豊富にあります。消費者が電気を選べるようになれば、このような再生可能エネルギーを応援することもできるし、または出身地の電気を買うという選択もできるようになります。私たちの選択が、未来の産業構造を変えることにつながっているのです」
それぞれの「電源」のメリットやデメリットを知り、比較しながら電気を選ぶことが未来に持続可能な社会を実現するための第一歩になる。個々の消費者が電気を選ぶ責任を果たし、権利を上手に行使しようとするマインドを育てていくことが大切なのだと辰巳氏は強調する。
しかしながら、一般家庭の消費者は電気を購入する際に、電源をはじめ商品の詳細をきちんと知ることができるようになるのだろうか。現在、制度設計ワーキンググループでは、改正電気事業法の中に小売事業者が消費者に対して開示しなければならない商品説明の「内容」について、何をどこまで盛り込むかについて議論を重ねている段階だと辰巳氏は語る。
「やはり電源の開示については議論の争点になっています。エコの視点から見れば、二酸化炭素の排出量を記載することは重要です。でも、一方で二酸化炭素の排出量だけ開示すれば良いのかといえばそうではなく、例に挙げると原子力発電は二酸化炭素の排出量『0』となるので、イコール“とてもクリーンな電源”ということになってしまいます。つまり、放射性廃棄物の排出量についても併記するようにしなければ、本当の意味で電源のメリットとデメリットが比較できなくなるというわけです。事業者が顧客に対して、電源のデメリットも伝えなければならないよう、厳しい情報開示のルール作りが必要だと考えています」
《山本 敦》
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