【視点】島根のユニーク企業が開発したヒット商品「シートシャッター」
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
■工場・倉庫の問題から生まれたシートシャッター
シートシャッター(商品名:happygate門番)は、小松電機産業の創業社長である小松昭夫氏(同社代表取締役)が1980年に開発した製品が原型となる。工場など企業向けの製品ながらこれまで15万台の販売実績があり、シートシャッターの中で一番の納入台数となっている。1991年には中小企業研究センター賞、2012年にはものづくり日本大賞優秀賞を受賞するなど、その技術にも評価が集まっている。
小松社長がシートシャッターを開発した背景には、それまで多くの工場が抱えていた問題がある。工場などの出入り口は、資材や製品の搬入、搬出を考えて間口が大きくなる。通常のシャッターや扉では開け閉めが大変だが、開けっ放しにすると夏場、冬場はエアコンが効きにくくなり作業環境が悪化する。そのため、大きなシートをのれん状にぶら下げたりするのだが、これが巻き込み事故を誘発したりする。開閉動作がないため出入りが反対側から見えないため、フォークリフトなど車両の出入りで事故が起きることがある。透明にしたとしても、巻き込み事故の元なのは変わらない。
また、工場内の冷蔵倉庫、管理区画などの出入り口も、通常のドアは荷物を抱えたり台車では出入りがしにくく、前記と同様な問題が発生する。
小松社長は高速で開閉ができるシートシャッターで、この問題に取り組んだ。糸入り塩ビシートを高速で上下開閉させるという扉だ。1980年にプロトタイプが完成し、注文生産がスタートしている。1985年には「門番」として全国発売を開始した。発売後3年で1000台を突破するなど、工場の扉について同じ悩みを持つ企業が多かったことをうかがわせる。
その後、シャッター部分をロール式にして耐久性を高め、より安全かつ高速に開閉できる現在のタイプになっている。
■早くから制御システムにクラウドを採用
同社のもうひとつのヒット商品は水管理システムである「やくも水神(すいしん)」だ。もともと電気設備や制御盤などを手掛けていた小松電機産業は、ポンプの制御や給水管理システムを創業当初から事業展開していた。やくも水神のモデルとなった水道監視システムは、門番の全国展開の5か月前、1985年3月に、島根県佐田町(現・出雲市)に納入されている。
一般的な水道管理システムや給水システムの監視にテレメータを利用するが、大規模自治体では水源地や配水池と、役場にある中央制御室を、かつては回線事業者の専用線を使うことが多かった。メインフレームを使った大きなシステムとなる場合もあるが、コストや設備投資、維持管理費が大きな問題となる。しかし、上下水道の管理・監視、あるいは道路の融雪システムなど、地域の生活に欠かせないものだ。
■モバイル網とクラウドで可用性アップ
現在、やくも水神は、360もの自治体に納入実績がある。これは全国の自治体の約20%に相当する。多くの自治体で採用されるのは、低いコストでありながらシステムの信頼性、可用性が高いことだ。
まず、処理をデータセンターで行う方式(今でいうクラウド方式)を2000年のころから導入。このため、役場は中央制御室を持つ必要がなく、維持管理や当直を置かなくとも、24時間365日の遠隔管理操作を可能にした。
遠隔操作に使うネットワークは携帯電話(DoPa網からFoMA網へと進化している)の回線を利用する。無線ネットワークは断線などのおそれがなく、巨大災害でも比較的復旧が早い。通信キャリアのパケット通信網の利用によって、手元のスマートフォン、タブレット端末、パソコンで、複数の職員やコンサルと同じ管理画面を見ながら、時間・場所を問わずシステムの管理ができる。
水害や豪雨災害は場所を選ばない。管理者の退庁後や休日、出張先など、役場に集まらなくても初期対応や遠隔操作、連携作業ができる。広域合併や効率化で管理エリアや業務が増えた職員にとって、負担軽減と、部署を超えた技術継承、自治体間の広域連携にもつながるのだ。
■問題を解決し、みんなが喜ぶ社会に
水管理システムとシートシャッター、一見あまり関連がないように見えるが、これら小松電機産業のヒット商品には共通点がある。同社の社是にも通じるものだが、どれも社会問題が開発のきっかけであり、対応、解決のレベルを超え、社会に変革をもたらす点だ。
シートシャッターは、工場での事故や作業効率の問題、冷暖房などの光熱費の問題が開発、ヒットの背景だった。事故は直接人命にかかわる問題であり、冷暖房の問題は環境問題でもある。水管理システムは、上下水道は重要な社会インフラであり、融雪システムは雪国の生活には欠かせない。水道料金は全国で最大6.5倍もの開きがあるという。料金が異なる理由はさまざまだが、クラウドで導入が簡単で効率的な管理ができるやくも水神は、新たな変化の一助になることも期待されている。
小松社長のビジネスや発想の根底には常に「みなが困っている社会問題をどう生かし、対立、統合、発展に導くか」である。それによって人々が笑顔になるビジネスが可能になるという。
■日本の地方ではなく世界の中の地方と考える
最後に小松社長に、これからの地方の企業はどうあるべきかを聞いてみた。
「まず、中小企業や大企業という定義を考え直す必要があると思います。事業規模の大小より先進技術などいかに採り入れられるか。それによって持続的な発展が可能かが問われている時代です。」
先進技術、持続可能という点は、長年にわたり改良と進化を続ける門番、Ruby、モバイルネットワーク、クラウドをいち早く取り入れ、水管理システムの効率化と標準化を進めるやくも水神でも実践されている。
そして、地方という考え方の新しい視点を示してくれた。
「日本国内の地方ではなく、世界の中での地方という考え方が必要です。インターネットにより集団や企業の枠が目に見えるものだけではなくなりました。グローバルでは国際分業が当たり前です。その中で自社の役割を考え、自立する企業を目指すとよいのではないでしょうか。」
【地方発ヒット商品の裏側】水管理システムとシートシャッター、その共通点とは? ……小松電機産業
《中尾真二@HANJO HANJO》
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